上の子と下の子、平等に愛せない私は母親失格?

きょうだいがいる場合、それぞれの接し方に悩むケースは少なくありません。「上の子(下の子)を愛せない」という声を聞くこともあります。その結果、ママが自分を責めてしまうことにも。どのように対応したらいのでしょうか。

きょうだいの子育ては、大変

私自身、3人の子を育ててきました。一番大変だったのは、3人目が生まれる前。長男5歳、2番目の長女が2歳のころです。長男は、妹をとてもかわいがって面倒も見てくれていました。でも、だんだんと妹のおしゃべりが達者になったことで、口答えをして、連日2人のケンカが続くように。

わが家の場合は、その後に末っ子が生まれたことで、関係が変わり、きょうだいのバランスがよくなりました。上の子たちは下の子の面倒を見てくれたり、その時々で、3人で遊んだり2人の組み合わせになったり。きょうだいの中での組み合わせが、多様になったのもよかったような気がします。

わが家の場合は3歳違いでしたが、年齢が近かったり、双子など多胎児だったりすると、さらに大変だと思います。ただし、きょうだいの関係も、ほとんどが成長とともに変わっていきます。

今は3人とも成人し、上の子2人は別のところで暮らしています。たまに家族が集まると、わちゃわちゃとちょっかいを出し合ってスキンシップしたり、頭を寄せ合ってゲームをしたり。そんな光景を幸せに感じています。

きょうだいでママの取り合い

私が子育ての中で大変だったのは、3人の子どもがいっぺんに話しかけてくること。「私は聖徳太子か!?」と思うこともありました。慣れてくると、同時に言われても、なんとなく理解できるようになりましたが……。

子どもはいつでも「自分に100%愛情を注いでほしい」と思っています。とくに一番上の子は、下の子が生まれるまでは親からの愛情のすべてをもらっていました。親が「平等に」と思っても、きょうだいが生まれることで100%→50%になったと感じてしまいますよね。

子どもが園などに通っていれば、夕方に帰宅すると今日あった出来事を共有したかったり、ママに見てほしかったりしますよね。夕方は、夕食作りや家事などで忙しい時間です。もし可能であれば、週末に作り置きをするなどの工夫で家事を減らして、子どもの話を聞く時間が作れるといいですね。

きょうだいで同時に話しかけられてしまう場合は、やはり順番にするしかありません。「じゃあ、今日はお兄ちゃんから聞くね」とか、「じゃんけんして、勝ったほうから聞くよ」など、親も少し交通整理して聞く体制を作りましょう。

いつも「お兄ちゃんだから、あとでね」などとならないようにすることが大事。ここは、「なるべくバランスよく」を、心がけましょう。

いじめるのは子どものメッセージ

相談で多いのは「上の子が下の子をいじめる」ということ。これには3つの理由があります。

1つ目は、下の子の扱い方がわからないケース。抱っこしたくて乱暴に扱ってしまったり、「かわいいな」と思って目を触ろうとしたり。上の子としてはまったく悪気はないので、赤ちゃんの接し方を教えてあげると、ていねいに対応してくれるようになります。「目は触っちゃだめだよ」「抱っこするときは、ママに教えてね。一緒に抱っこしよう」などという感じです。

2つ目は、興味本位にやってしまう場合。赤ちゃんを触るとやわらかいので、ギューッと押してみたり、つねってしまったりという感じです。これも悪気はありませんが危険ですから、1つ目と同じように、やっていけないこと、危ないことは伝えましょう。

3つ目は、自分を見てほしいというサイン。下の子が泣くとママが来てくれる、たとえ怒られても自分のことを見てくれるから……と思っていることがあります。「赤ちゃんばっかりずるい」とちょっと意地悪したくなることもあるでしょう。このときももちろん、「これは危ないから、ダメ」ときっぱりと伝えましょう。そのうえで、上の子と向き合う時間を作るように心がけましょう。

子どもの接し方は違ってもいい?

「上の子と下の子、同じように接するようにしています」というママも多いと思います。でも、やはり年齢差があれば、下の子のほうがお世話に手がかかりますし、「同じ」とはならないでしょう。親としては平等にと心がけても、上の子としては、弟や妹が抱っこされていればそれだけで「うらやましい」と思うでしょう。親の思いと、子どもの感じ方は違います。

親も「同じにしなくては」と気を張りすぎることなく、そのときそのときで、子どもたちに対応すればいいと思います。そして、子どもの性格によって、遠慮する子もいます。「ママに声をかけようと思ったけど、おっぱいあげていたからガマンした」など。上の子が耐えているケースは多くあります。そして、下の子や真ん中の子も、ガマンしていることがあります。

「上の子とあんまり話す時間がないな」と思ったら、ぜひ週末の数時間でもいいので、下の子をパパに見ていてもらうなどして、2人でデートの時間を取ってみてはいかがでしょう。特別なことをする必要はなく、2人で公園に行くとか、ファーストフード店でアイスを食べるなんていうことでもいいのです。そんなちょっとした時間の中で、子どもが本音を話しやすくなります。

「愛せない」は、疲れのサイン

「上の子を愛せない」と伝えてくださるママがいます。ほとんどの場合、その理由は「ママが疲れている」からです。下の子は、お世話をしないと生きていけない。でも、上の子は自分でできるのに、いろいろ頼ってくる……。となると、上の子が、ママのことを意地悪しているように感じてしまうこともあります。

同じきょうだいでも性格は違うので「下の子を愛せない」と感じる場合も同様です。ママ自身の心のキャパシティがいっぱいいっぱいなのでしょう。

そんなときには、パートナーはもちろん、一時預かりやファミリーサポートなどの手も借りましょう。家事もできるだけ手抜きをして、自分の心と体を整えること。自分の困りごとも、気を許せる人に話してみましょう。園でも話を聞いてくれますし、行政などにも相談窓口があります。

子育ては、想定外の連続で体力も精神力もいります。うまくいかないと感じて自分を責めてしまうときは、責める前に、自分を癒やすことも大切です。

心と体が元気になったら、子どものよいところ、やってくれて助かったことに注目するように心がけてみましょう。少しずつ「かわいいな」「頼りになるなー」という気持ちがわいてくるはずですよ。

著者紹介
高祖常子(こうそ・ときこ)

子育てアドバイザー、キャリアコンサルタント

資格は保育士、幼稚園教諭2種、心理学検定1級ほか。NPO法人ファザーリング・ジャパン理事ほか各NPOの理事や行政の委員も務める。子育て支援を中心とした編集・執筆ほか、全国で講演を行っている。著書は『男の子に厳しいしつけは必要ありません』(KADOKAWA)、『感情的にならない子育て』(かんき出版)ほか。3児の母。

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