大分・宮崎県境 宗太郎駅での不思議なできごと【50代から始めた鉄道趣味】386

※2019年03月撮影

※鉄道チャンネル編集部注:本記事は2014年乗車時の記録をもとに再構成したものです。写真は状況に応じて異なる日付で撮影したものも使用しています。

トップ画像は、佐伯のフェリー乗り場。既に2018年(平成30年)10月に運航休止になった後、セメント船が繋がれています。

佐伯駅17時14分に出た南延岡行は、大分県最後の宗太郎駅で列車交換しました。次の市棚駅は宮崎県です。18時前、県境の山中は既に真っ暗です。ホームで一服していたら一人の女性(たぶん30台くらい)が降りて跨線橋を越えていきました。

※2014年12月撮影

運転手さんがハッキリと聞こえる溜め息をついているので「どうしたんですか?」と声をかけました。

以下、暗いので写真は撮っていません。代わりに2019年3月に宗太郎駅を撮った写真を貼ります。

※2019年03月撮影

運転士さん曰く、この駅の周囲には人家がとても少なく、数人の老人が住んでいるだけとのこと。1年ほど前までは病院に通う老人が週に1~2度乗降したそうですが、この1年はその老人すら見かけなくなり、以降殆ど乗降客は皆無。夜間は誰も乗り降りしない駅なのです。

※2019年03月撮影

しかし先刻降りた女性は横浜から「宗太郎」までの切符を持っていたのです。その切符も見せてもらいました。最初から目的地が宗太郎駅だったのです。

運転士さんは南延岡駅まで運転した後、今夜も同じ列車を運転して大分に戻るそうです。

何でも、少し前、同じこの列車で宗太郎駅に降りた人がいて「真っ暗な山道を何処へ行くんだろう?」と不思議に思っていたら、帰りの大分行列車で鉄道自殺をされたそうです。思い出したくない、と辛そうでした。

※2019年03月撮影

そういう経験があったので、運転士さんは本気で帰路(南延岡から大分に戻る)の運転が嫌だと嘆いてたのです。そうでなくても、夜間は線路上に出て来た鹿ををはねる事故が多発するのだそうです。真っ暗な山の中、一人で(ワンマン運転です)鹿の死体を確認して動かしたり、列車の損傷を調べるのは嫌なモンですよ・・・と、そりゃそうでしょう。

その後、どうなったのか、少なくとも翌日の新聞には何も報道されていませんでした。

宗太郎駅ホームの暗がりで3人の高校生が煙草をすっていました。もしかすると高校生でないかもしれませんが、年齢的には17歳くらいでした。

※2019年03月撮影

ちゃんと「こんばんわ」と挨拶されたので少し話をしました。彼らが(こちらの風体から妙な爺さんだと思ったのでしょう)筆者はどこから来たのですか?と尋ねるので「今朝、佐世保を出て来たんだよ」と応えました。

驚いた事にその大分の高校生たちは「佐世保って何処ですか? 九州?」と訊き返したのです。

一瞬、彼等が何を言っているのか理解に苦しみました。

長崎は知っていると言います。しかし、佐世保を知らないのです。地名としてニュースにだって出てくるでしょう? 駅のポスターにも佐世保は出ています。エンタープライズの入港は歴史上の出来事かも知れませんが、村上龍さんが聞いたら嘆きますよ。

※2019年03月撮影

彼らはスマホのゲームやラインばかりで、外界に興味を持たない、視線も向けないのかもしれません。しかし「大分の若者が佐世保を知らない」とは、にわかには信じられないことでした。

延岡に18:39着。18:47発の南宮崎行に乗り換えて宮崎に20時36分に到着。早朝から11時間50分普通列車に乗って、533.2kmを走ると流石に少々草臥れました。

今回は、大分・宮崎県境の宗太郎駅で筆者が経験した不思議なエピソードを二つ紹介しました。

※筆者は既にコラムなどで青春18きっぷ鉄道旅の写真を度々使用しています。重複していますが、御容赦ください。

※価格などは2014年当時のものです。

(写真・文/住田至朗)

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