センバツ、ダブル出場へ 長崎県勢の挑戦<中> 乏しい対策 全県的な制度確立を

大崎と創成館の昨秋の県大会決勝。両校は続く九州大会で“ダブル出場”を感じさせる力を示した=長崎市、県営ビッグNスタジアム

 昨秋、県勢は初のセンバツ2校同時出場に迫る力を示した。県を制したのは、かつて清峰や佐世保実を甲子園に導いた清水央彦監督が率いる大崎。決勝は稙田龍生監督の下、2013~18年の6年間で春夏計5度の甲子園を経験している創成館を破った。前評判も高かった両校が挑んだ九州大会は「いけるのでは」という期待があった。
 結果は創成館が4強入りして全国切符を手にした。大崎は初戦敗退で悲願達成はならなかったが、好投手から15安打を放つなど攻守両面で互角以上の内容だった。相手はそのまま準優勝した。
 この九州大会で1、2位を独占して、春の甲子園に2年連続で2校が選出されたのが大分県勢。18年まで6年連続出場を逃すなど低迷していたが、それを打開しようと3年前から、一つの強化策が始まった。
 長崎は現在、秋と春の県1位校に県の強化費が補助されるが、大分は県高野連が秋の県優勝と準優勝校が関東もしくは関西、3位が四国、4位が九州に遠征できる制度を構築。公立校や、つてのない若手指導者のために高野連側が相手や日程を手配する。
 このように「遠征」という目標で秋の県大会の位置付けを高めたり、自県に他県の強豪を招く「招待試合」を企画したりする他県に比べ、長崎は対策が乏しい。指導者講習会を年1回開いているが、全県的で十分な対策とは言い難い。有望な中学生に、県外ではなく県内の高校に進んでもらうという“強化の基本中の基本”も不可欠だ。
 「招待試合をやって、小中学生にも見学させてほしい」「他県がやっているんだから、できないことはない」「小中学校の指導者や審判協会との意見交換会を」-。こうした声がさまざまな立場から上がり、指導法などについても「昔は年上の監督から“聞きに来い”と叱られていたが、今はそういうことも時代的に難しいのかな」と漏らす中堅指導者もいる。
 少子化の中、加盟校を減らさず、県内が一丸となって強化も進めることは簡単ではない。必ずしも結果に結び付くとも限らないが、検討の余地はあるだろう。
 かじ取り役の県高野連は対策への予算積み立てを始めたが、コロナ禍の無観客開催などに伴う収入減で、今すぐの実施は難しいという。「状況が落ち着けば他県の事例を参考に強化へ動く。中学生の部活引退から高校入学までの期間などを活用した、各地区ごとの中高合同練習会の開催も目指したい」としている。

 


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