BC埼玉武蔵・田澤純一が年下監督から受ける刺激 「すごいなと普通に思います」

BC埼玉武蔵・田澤純一【写真:荒川祐史】

同じ横浜出身ながら4学年下の角晃多監督「GMも兼任して…」

田澤純一がルートインBCリーグ埼玉武蔵に入団し、試合に出場し始めて、1か月あまりが過ぎた。5日に本拠地・鴻巣フラワースタジアムで行われた栃木戦に7回から1イニングを投げ、打者3人を無失点に抑えた。これで7試合に投げて4安打4失点(自責3)。この日は「あんまり良くはなかったです」と苦笑いで首をひねったが、何はともあれ、結果は「0」に抑えた。

慣れた米国の硬いマウンドに比べ、柔らかく滑る感覚のする日本のマウンドへの適応に少し苦戦している。加えて、相手打者が「僕に対して、だいぶ早打ちになってきている。真っ直ぐを待っているのは十分感じますし、それでも真っ直ぐで押すべきなのか……」と頭を悩ます。田澤にとって、1試合1試合がアピールの場。マウンドへの適応を除けば「ボール自体は指に掛かっている」と手応えはあるだけに、あともう一歩というところなのだろう。

プレーオフ進出を狙うチームは、この日、サヨナラ勝利を収めるなど雰囲気がいい。田澤もチームメートと積極的にコミュニケーションを取りながら、チームの勝利を目指して戦っている。明るい雰囲気のチームの中でも、34歳右腕が最も大きな刺激を受けている人物が、監督とGMを兼任する角晃多氏だ。

同じ横浜市出身の角監督は、東海大相模の出身で田澤より4学年年下だ。2008年ドラフトでロッテに育成選手として入団すると、2012年に支配下選手登録。だが、その2年後には戦力外となり、2015年からBC埼玉武蔵でプレーし、2018年に監督に就任した。今ではGMを兼任し、スポンサー探しや戦力集めなどに奔走。この日も東京ドームで行われた「プロ志望高校生合同練習会」に出席した後、午後3時の試合開始直前に球場へ戻ってきた。

「あの年でGMも兼任していて、スポンサー巡りから何から全部やっている」

ご存じの通り、角監督は巨人などで活躍した左腕・角盈男氏の次男。だが、普段はそんな経歴を感じさせずに泥臭く、チームのために駆け回っている。田澤に対して熱心に入団のラブコールを送り続けたのも角監督だった。入団以来、そのバイタリティ溢れる姿を間近で見て「あの監督のすごさは感じます」と感心する。

「あの年(29歳)でGMも兼任していて、スポンサー巡りから何から全部やっていて。ああいうのはすごいなと、普通に思います。みんな独立リーグだからって下に見るかもしれないですけど、ああいうことは僕は自分だったらできないと思う。プロを経験して今、そういった(地道な)こともしっかりやっている監督。その点に関しては、ここを選んでよかったと思います」

米レッズ傘下でキャンプインしながらも契約解除、新型コロナウイルス感染拡大など様々な要因が重なり、帰ってきた日本で、縁あって入団した埼玉武蔵。アメリカではマイナーからワールドシリーズ優勝まで様々な経験を積んだが、日本の独立リーグにまだまだ知らない世界が存在した。

「自分の野球人生の中ではいい経験と思って、毎日を過ごしている。みんな、こういったリーグでどんなことをやって苦しんでいるのか、頑張っているのかを感じられるのは、自分にとっていい経験だと思います」

年下監督や独立リーグでNPBを目指す仲間たちに刺激を受けながら、田澤もまた日々、成長を遂げている。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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