シリコンバレーで最も著名な「スタートアップ養成所」Y Combinator - ①シリコンバレー式のエコシステムの情報を世界に発信

日本でも名前の知られるシリコンバレー発の企業を次々と輩出している「スタートアップ養成所」Y Combinatorをご存知だろうか。前編となる今回は、Y Combinatorが様々な媒体を使って発信する情報の一部を紹介しよう。

Airbnb, Stripe, Dropbox...Y Combinator卒業が一つのブランド

 皆さんはY Combinatorをご存知だろうか?エンジニアの方だと数学の関数をイメージされるかもしれないが、今回紹介するのはシリコンバレーで最も著名なシードアクセラレーターである。もう少し噛み砕くと、世界中から集まった起業家の卵たちが、チームメンバーを集め、必要な知識を獲得し、事業を始める最低限の出資を受けるための「スタートアップ養成所」なのだ。

 Y Combinatorはこれまでの実績と影響力から、世界で最もスタートアップを生み出す環境(スタートアップ・エコシステム)が整っているシリコンバレーの中でも先鋒として認識されているが、以下で軽くそのプロフィールを紹介したい。

①これまでに2,000を超えるスタートアップが卒業

2005年に創立されたY Combinatorでは、知識獲得の講義やビジネスアイデアの醸成、プロダクトの作成、そして投資家に向けたデモピッチという確立された3ヶ月間のプログラムを年に2度実施しており、これまでに2,000を超えるスタートアップが卒業している。その際に全スタートアップ一律$125,000の出資を受けることができる。

②Y Combinator卒業チームが世界中に広がるサービスを提供する企業に成長

 Y Combinatorが大きな名声を得ている大きな要因は、卒業したチームから革新的なサービスを提供する数多の企業が生まれていることに他ならない。例えば、自宅の1室を貸し出すプラットフォームであり、シェアリングエコノミーの先駆けとなったAirbnbや、インターネットを通じた料金受納システムを提供し世界でその利用が広がるStripe、そして複数のアカウントでのデータ共有を可能にするストレージサービスDropboxなど、分野も多岐に渡って枚挙にいとまがないことが、Y Combinatorが名声を得ている大きな理由であろう。

③他の投資家やベンチャーキャピタルも卒業生に注目

 上記の輝かしい実績をもつがために、シリコンバレーを中心とした他の投資家やベンチャーキャピタルはY Combinatorの卒業生への投資に積極的であることは事実であろう。シリコンバレーで最も有名なベンチャーキャピタルの一つであるSequoia Capitalは、Y Combinator自体にも出資をしており、Y Combinatorが形成するエコシステム自体に価値を感じているということがいえる。各期のデモピッチには多くの投資家やベンチャーキャピタルが集まっているようだ。

  2013年に出版された書籍、「Yコンビネーター シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール」に、著者がYコンを直接取材をした際の様子がまとめられているので、詳しくはそちらを参照されたい。

現在では各媒体で講義の内容がみられる

 現在ではシリコンバレーを成功モデルとして、世界の各都市でスタートアップを生み出す環境(エコシステム)の構築が進んでいる。若者を中心に世界中でスタートアップ起業の志向が高まりつつある中で、Y Combinatorではシリコンバレーを超えて世界中の起業家に対しても大きなイニシアチブをもっているようだ。まず、近年ではアメリカ以外からのY Combinatorのプログラム受講生が増えてきているようで、2019年に公開されたものでは、ロンドン(イギリス)・バンガロール(インド)・トロント(カナダ)・ラゴス(ナイジェリア)・モスクワ(ロシア)が、他国からのトップ5となっている。また、”Startup School”と題して、ウェブ上ですぐに講義の内容を公開している他、Youtubeの公式チャンネルでは動画で実際の講義を収録してくれている。公式チャンネルには、Facebookのマーク・ザッカーバーグ、テスラのイーロン・マスクによるインタビューもあるので、興味のある方は是非ご覧いただきたい。

 後編となる次回は、そんなY Combinatorがコロナ禍にあるスタートアップに向けたメッセージを紹介する予定である。

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