台風10号襲来

 先週のうちにスーパーの棚から水もカップ麺もほぼ消えていた。台風を前に買い出しが集中し、ある店長さんは「ここまでの状況は初めて」と語ったと、6日の本紙にある▲窓用のシャッターがない家や店で、窓に縦、横、斜めの「米」の形にテープが貼られているのを多く目にした。筆者も自宅の窓に、不格好な米の字をテープで書いた▲買い出し、ご自宅の中の備え、それに早めの避難と、これまでになく身構えた方は数多いだろう。「経験したことのない記録的な暴風や大雨、高波、高潮」があり得るとして、台風10号には「最大級の警戒」が呼び掛けられた▲北上中、台風はいくらか勢力が弱まったという。それでも最接近した7日未明、風はごうごうと恐怖心をあおるように鳴った。長崎市野母崎では観測史上で最大の風速59.4メートルを観測している▲1時間雨量は五島市で88ミリに達し、県内はまれな暴風、または大雨に襲われた。停電は広域に及ぶ。台風9号から息つく間もなく再びご自宅をやられ、途方に暮れる方もいる▲「何十年に一度」「記録的な」と、めったに見聞きするはずのない言葉がここ数年、慣用句のように用いられる。経験したことのない災害があるのを念頭に、私たちもこれまでにない、これまで以上の備え、用心を重ねることを忘れまい。(徹)

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