避難、対策「命守れた」 台風10号通過、熊本豪雨の教訓生かす

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台風10号の暴風域を抜けた後、店玄関のガラス窓に貼っていた段ボールを剥がす女性=7日午後1時45分ごろ、人吉市(小野宏明)

 「命を守ることができた」。気象庁などが「最大級の警戒」を繰り返し呼び掛けた台風10号は7日、熊本県内から遠ざかった。危機感に加えて7月の豪雨で防災意識が高まったためか、多くの人が避難や対策を実践。大きな被害がなかったことに胸をなで下ろした。

 豪雨被害の大きかった人吉市は今回、避難に伴う新型コロナウイルス感染を避けたい住民らを対象に、熊本市中央区の県立劇場への避難を呼び掛けた。参加した人吉市中青井町の会社役員、屋森正光さん(80)は「風がものすごく強いというので、娘の勧めもあって避難を決めた」と同劇場を後にした。

 豪雨で被災した人吉市上青井町の芳野旅館では、窓に戸板を打ち付け、ガラスの飛散を防ぐテープを貼るなどして準備。専務の田口善浩さん(46)は「建物の被害はほとんどなかった」と強風を耐えた旅館を見上げた。

 「強い風雨の音を聞くと、豪雨を思い出して怖かった」と話すのは、近くの鍵店を夫婦で営む田原二美さん(58)。浸水の経験から、仕事道具は安全な場所へ移していた。台風の被害はほとんどなく、「ほっとした」と表情を緩めた。

 台風の進路に近かった天草市では、風雨が弱まる頃合いを見て住民が続々と避難所から帰宅。同市東町の天草市民センターに避難した近くの平本重夫さん(94)は「家が心配で眠れなかった」としつつ、「また台風が来たら避難するしかない」と家路を急いだ。

 天草では高潮の危険性も指摘され、天草市港町の土佐谷タエ子さん(72)は河口付近の自宅から家族と避難。「今回ばかりは被害が大きいと覚悟し、命だけは守ろうと初めて避難した」と語った。

 天草市河浦町の世界文化遺産「崎津集落」では満潮時、海面が岸壁の高さすれすれに達したが、被害はなかった。集落の宮下謙紀さん(77)は「中潮でよかった。大潮だったらと思うと恐ろしい」。

 阿蘇谷では、収穫期の稲が風雨で倒伏。阿蘇市山田の中西洋介さん(46)は、収穫前の12ヘクタールのうち8~9割が被害に遭った。乾燥などを経て1週間以内に刈り取れば品質低下は防げるといい、「今後の収穫が順調に進めば大きな損失にはつながらない」と作業を進めた。(鬼束実里、田中慎太朗、堀江利雅、谷川剛、東誉晃)