豪州SC第8戦:レッドブルのSVGが今季初勝利からの2連勝。レース後には“舌戦”も勃発

 VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカー第8戦は、第7戦に続いてオーストラリア・クイーンズランド州タウンスヴィルに位置する半市街地コース、リードパーク・ストリート・サーキットでの2週連続開催となった。その土曜レース1では王者スコット・マクラフラン(フォード・マスタング/DJR Team Penske)が先手を獲るも、日曜日の2レースはレッドブル・レーシング・オーストラリアのWエース、“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(ホールデン・コモドアZB/Triple Eight Race Engineering)が制し、今季初優勝からの連勝を飾った。

 9月5〜6日の週末に同一サーキット連戦の“第二幕”を迎えたシリーズは、土曜の予選からトップ10圏内がコンマ3秒差という僅差の勝負を制したマクラフランが、通算71度目の最前列からシリーズ3連覇へ向け幸先よく勝利を収め、先週末のレース3に続いて2戦連続のポール・トゥ・ウインを決めてみせた。

 明けた日曜午前の予選では一転、伏兵とも言える若手が主役を演じ、レース2に向けた予選ではニック・パーカット(ホールデン・コモドアZB/Brad Jones Racing)が、マクラフランを抑えて自身初のポールポジションを獲得。続くレース3向けの予選では、そのチームメイトであるトッド・ヘイゼルウッド(ホールデン・コモドアZB/Brad Jones Racing)も自身初の最前列スタートを決めたばかりか、パーカットが2番手に並んでフロントロウを独占するなど、BJRにとってはチーム創設以来となる快挙を達成し、お祭り騒ぎの予選結果となった。

 しかし39周の決勝ではそう簡単に事は運ばず、やはり地力で上回るシリーズの強豪が覚醒。レース2では4番手グリッドから発進となっていた2016年チャンピオンのSVGがオープニングラップで2番手にまで躍進すると、序盤で首位パーカットを仕留めて2019年のニューキャッスル以来となる今季初優勝を達成。Triple Eight Race Engineeringにとって、シリーズ通算200勝という記念すべき勝利を手にした。

 続いての連戦最終ヒートのレース3もSVGが主役を演じ、予選での失敗から12番手スタートを強いられながら、オープニングラップで7番手にまで進出。8周目にマクラフランが、18周目には5番手スタートから首位まで進出していたシリーズ7冠王者のジェイミー・ウインカップ(ホールデン・コモドアZB/Triple Eight Race Engineering)がピットへと向かうなか、力強いペースでファーストスティントを走破したSVGに好機が。

 おなじくトップ10圏内を走行中だったアントン・デ・パスカーレ(ホールデン・コモドアZB/Erebus Motorsport)のホールデンにサスペンショントラブルが発生し、コース後半でコントロールを失ったマシンはウォールへとクラッシュ。これでセーフティカーが導入される事態となる。

 この瞬間にピットへと飛び込んだSVGは、首位マクラフランを先頭にヘイゼルウッド、ウインカップ、パーカット、チャズ・モスタート(ホールデン・コモドアZB/Walkinshaw Andretti United)、リー・ホールズワース(フォード・マスタング/Tickford Racing)、キャメロン・ウォーターズ(フォード・マスタング/Tickford Racing)、そしてファビアン・クルサード(フォード・マスタング/DJR Team Penske)に続く9番手で隊列へと復帰する。

先週末の最終ヒートに続き、土曜は完璧なライト・トゥ・フラッグを決めたスコット・マクラフランが9勝目をマークした
日曜午前に一躍脚光を浴びたのが伏兵Brad Jones Racingのふたり。レース3に向けてはフロントロウを独占する快挙も
レース2はSVGが制し、意外なことに長らく続いた未勝利を断ち切る今季初優勝となった

■レースはSVGとウインカップが完璧なチームプレーを見せるが、マクラフランは苦言

 残り9周でリスタートを迎え、誰よりもフレッシュなラバーを装着するSVGは猛チャージを開始し、最初のラップでクルサードとウォーターズを仕留め、続く周回でホールズワースもオーバーテイクしてみせる。

 わずか3周で僚友ウインカップに次ぐ3番手まで上がってきたSVGの勢いに対し、トップチームらしく戦略的にポジションを入れ替えたTriple Eightの2台が、シリーズ連覇中の王者マクラフランの背後へ。

 レース序盤の8周目に交換したタイヤがグリップダウンの兆候を見せていたマクラフランに対し、マシンを両サイドのウォールに擦り付けるようにコース幅一杯を使って追随したSVGがテール・トゥ・ノーズに持ち込むと、長い右コーナーからのビッグブレーキとなるターン11でインサイドへ。

 ライバルのダイブに為す術のないマクラフランは、ラインを塞がれるようにアウトへはらむと、SVGの97号車に続いてクリッピングへと入ってきた選手権ライバルのウインカップにも先行を許し3番手へと陥落。そのままTriple Eightが完璧なチームプレーで劇的なワン・ツーフィニッシュをもぎ取った。

 レース後、このバトルについて聞かれたマクラフランは、宿敵に対し「バカげたゲームを始めるには、少し早すぎるんじゃないか」と、敗れた悔しさを抱えつつ苦言を呈した。

「もちろん、序盤にタイヤ交換をした僕にシェーン(SVG)を抑えるペースがないことは理解していた。でも、ジェイミー(ウインカップ)とは話が別だ。彼とはコース上で勝負したかった」と続けるマクラフラン。

「僕の目にもそれは素晴らしい戦略に見えたけど、チームメイトがタイトル争いを助けるのはまだ早すぎるんじゃないかな。もちろん、スポーツマンシップに同意するかどうかに関わらず、それができるのがトップチームだけどね」

 一方、おなじくレース後会見で問われたSVGも、前年度の『バサースト1000』でDJR陣営が採用した戦略を引き合いに出し、現王者を牽制する言葉を残した。

「彼が何を言ったかはよく知らないが、あのときのマスタングに“デブリを踏ませてやる”必要さえないことは明らかだった。僕にとってはフェアなパスだった」

 一方、143点差でマクラフランを追う選手権2位のウインカップも「それこそ、チームが2台のマシンで戦う理由じゃないのか?」と続ける。

「両方のマシンに(おなじ)性能があり、両方のマシンに(おなじ)機会がある。それをどう使うかが戦略であり、レーシングチームの存在理由だろう?」

 これで第8戦までを消化したVASCは、9月19~20日、9月26~27日の“ザ・ベンド”ことベンド・モータースポーツパークでのスーパースプリント2連戦を開催し、10月15~18日にはいよいよシリーズ最大の祭典である『バサースト1000』で2020年のフィナーレを迎える。

レース3の集団バトルでは、SVGにテールを突かれスピンしていたキャメロン・ウォーターズ。レース後に「あれはペナルティもの」と憤慨
レース3では老獪なチーム戦術でワン・ツーを手にし、トップチームたる由縁を披露したTriple Eight Race Engineering
スコット・マクラフランの『不満』は牽制の意味が強いが、残る3戦。タイトルに向けた精神戦が始まっている

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