これが「美しい時代へ号」……! 阪急×阪神×東急 協働 「SDGs トレイン2020」出発進行

東急のSDGsトレイン「美しい時代へ号」外観

2020年9月8日(火)、東急のSDGsトレイン「美しい時代へ号」出発記念セレモニーならびに車両報道公開が行われました。

東急・阪急・阪神三社の駅長が並ぶ
車内の掲示物は全てSDGsに関するものに
SDGsを紹介する掲示物がずらりと並ぶ
電車のドアには三社協働を示すステッカーが貼られている
運行期間中、TOQビジョンでは啓発動画を放映

東急のグループスローガン「美しい時代へ」を体現するこの電車は、既存の東急電車にラッピングを施したいわゆる「ラッピング車両」と呼ばれるものです。同社はこのSDGsトレインを3編成用意しており、写真の5050系は東横線で明日9日以降、田園都市線の2020系ラッピング車両と世田谷線の300系ラッピング車両は本日夕方より運行を開始します。

本事業は阪急・阪神・東急の三社協働で行われるもので、阪急・阪神のSDGsトレイン「未来のゆめ・まち号」も本日から運行を開始。全身で「SDGs」をアピールする列車が西と東で同時に走り始めます。

<運行区間>
阪急電鉄 神戸線・宝塚線・京都線および相互直通区間
阪神電車 本線・阪神なんば線および相互直通区間
東急電鉄 東横線・田園都市線・世田谷線および相互直通区間

<運行期間>
2020年9月8日(火)~2021年9月上旬(予定)

東急線内では実質的に再生可能エネルギー由来の電力で走る

世田谷線は2019年3月から再生可能エネルギー100%で走る イメージ写真:PIXTA

「美しい時代へ号」の特徴は「東横線内では実質的に再生可能エネルギー由来の電力で走る」こと。東急のリリースには次のように記されています。

「東横線、田園都市線については東急パワーサプライによるJクレジットを利用した『カーボン・オフセット』、世田谷線については東北電力および同社グループ企業の東北自然エネルギー株式会社が保有する水力発電所および地熱発電所の電気に当該発電所由来の非化石価値を付加したCO2フリー電力を活用します」

分かりづらいところなのでざっくりと解説を。まず世田谷線では2019年3月25日から全線でCO2フリーの電力(水力・地熱)を使って電車の運行が行われています。再生可能エネルギー100%の電力による通年・全列車の運行は都市型鉄軌道線においては日本初であったこともあり、様々なメディアで取り上げられました。

とはいえ世田谷線は東急の路線全体で見れば小さな路線であり、使用電力も微々たるもの。だからこそ水力発電や地熱発電で全エネルギーを賄えているわけで、田園都市線や東横線までCO2フリーの電力で動かすのは現実的ではありません。

そこで、「美しい時代へ号」が東急管内の路線を運行するための電力に関しては、東北電力が持つ排出権を東急パワーサプライを通じて入手し、実質的に再生可能エネルギー由来の電力で電車を運行するという形を取ります。

「阪急×阪神×東急」三社協働が実現した理由

同日渋谷スクランブルスクエアで行われた出発記念セレモニー テープカットの様子

そもそもの始まりは東急ではなく、関西の大手私鉄である阪急と阪神でした。

両社は阪急・阪神HDの社会貢献活動「阪急阪神 未来のゆめ・まちプロジェクト」の一環として、2019年度5月からSDGsトレイン「未来のゆめ・まち号」を運行していました。この装飾列車は阪急電車と阪神電車に同じデザインのラッピングを施したこともあり、大変人気があったといいます。

阪急電鉄SDGsトレイン外装 ©阪急阪神HD

とはいえ、関西の情報発信能力が関東に見劣りしてしまうのは否めません。「西だけでは広がりは出てこない」(阪急阪神ホールディングス株式会社 代表取締役会長 グループCEO 角和夫さん)「プロジェクトの中でいろいろな方と手を携えていくことの重要性を感じた」(阪急阪神ホールディングス株式会社 人事総務室 サスティナビリティ推進部課長 平野里美さん)ことから、かねてより同じ思いから事業を行っている東急に話を持ちかけ、三社協働での実施となりました。

東急の五島慶太氏と阪急の小林一三氏、(事実上の)創業者同士のつながりを考えればさほど不思議なことではありませんが、細かいイベント等では接点があったとはいえ、今回のように「同じコンセプトの電車を同時に走らせる」といった大きな事業で組むのは異例。驚かれた方も多いかもしれません。

ちなみに今後のコラボについては未定――でも、出発記念セレモニーの中では「こうしたご縁も大事にしたい」というお話はたびたび出ていましたので、いずれまた面白い動きが出てくるかもしれませんね。

文/写真:一橋正浩

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