ブレイクダンスはオンラインバトル 自宅から世界大会に! 活躍目立つ日本勢、パリ五輪で採用見通し

 2024年パリ五輪で初採用される見通しのブレイクダンスは、会場で生の熱気を味わうのが醍醐味(だいごみ)だ。だが、新型コロナウイルスの感染拡大でリアルのイベントは軒並み中止になった。そこで、自宅や練習場で踊った映像をリモートで審査する「オンライン・ダンスバトル」の試みが広がっている。世界中から参加でき、新たな定番になる可能性も出てくる中、日本勢の活躍が目立っている。(共同通信=品川絵里)

「ブレイク・フリー・ワールドワイド」の大会決勝で韓国人ダンサー(右上)と対戦した半井重幸(左上)(ユーチューブから)

 ▽75カ国、400人が参加

 ブレイクダンスの普及活動を展開する米国の団体「ブレイク・フリー・ワールドワイド」は4月、6日間にわたって大会を開催し、ユーチューブでライブ配信した。

 欧州、アフリカ、アジア太平洋、アメリカ大陸の地域別4部門で、75カ国から約400人が参加した。ネット接続の不具合で動きが止まってしまう場面もあったが、臨場感は本物さながら。ビデオ会議システムで審査員と対戦者をつなぎ、トーナメントで勝者を決めた。

 18年夏季ユース五輪銅メダリストの半井重幸(なからい・しげゆき)さん(Shigekix)はアジア太平洋部門で優勝。「自宅から世界大会に参加するのは不思議な感覚だったが、優勝は率直にうれしい」と喜ぶ。採点の一要素である音楽性を意識しながら切れ味のあるステップやスピンを披露し、決勝は韓国人ダンサーに競り勝った。「普段海外に出ないような方とも対戦ができて、オンラインだからこそつながれたのは良かった」

「ブレイク・フリー・ワールドワイド」が開催したブレイクダンス大会のアジア太平洋部門で優勝した半井重幸(同団体提供)

 ▽SNS、ユーチューブをフル活用

 世界的に活躍するダンスチーム「FOUND NATION」はユニークな大会を5月に開催した。

 事前に撮影した動画を会員制交流サイト(SNS)で集めた。そして、ダンス動画を見ながら審査員がコメントする様子をユーチューブで公開。カメラの角度や撮影場所の状況が面白いかどうかなど、映像ならではのポイントも審査基準に加えた。

 北海道から沖縄まで全国から参加した161人の中には、昨年9月の第1回世界アーバン大会のブレイクダンスで優勝した湯浅亜実(ゆあさ・あみ)さん(AMI)の姿も。他には牛舎で踊る少年や強風の中ダンスを披露する女性など、それぞれオンラインの強みを生かしたパフォーマンスを披露し、公開から約3カ月で動画の再生回数は1万回を超えた。

「FOUND NATION」の大会でダンスを披露する参加者(ユーチューブから)

 ▽インスタグラムで予選審査

 予選から動画を活用する大会も。日本ダンススポーツ連盟(JDSF)は全国を6ブロックに分けてトーナメント形式で競う「JDSFブレイキンブロック選手権」を開催。約300人が参加した1次予選ではインスタグラムに投稿した動画を審査して順位付けし、男女別ユース(13~18歳)、オープン(18歳以上)部門で上位4人計16人が各ブロックの本戦に進出した。

 9月5日の「関東甲信越ブロック」では、出演者が対面でダンスバトルする様子を別会場で3人の審査員がジャッジ。「技術」「表現」「構成・完成度」「バトル」の4項目100点満点で採点した。各部門の優勝者が11月末に開催予定の全日本選手権に出場できる。

 女子のオープン部門で1位に輝いた湯浅さんは「自分のスタイルで自分を出し切って、自分やチームをレペゼン(代表)する気持ちで全日本に挑みたい」と意気込みを語った。

 JDSFブレイクダンス部の白井健太朗(しらい・けんたろう)副事務局長は感染防止策を講じつつ、いかに盛り上がりを作るかを考えたという。インスタグラムに投稿した上でJDSFに送付する形式を採用したのも工夫の一つだ。「他の選手がどんな演技をしているのか、自分の技術力がカテゴリー内でどのくらいの力量なのか、オンラインの競技会だとしても確認できるようにしたかった」と語る。

ユース部門で優勝したShigekixとAMI(左から)(公益社団法人日本ダンススポーツ連盟提供)

 コロナ禍を契機に広がった動画形式での大会。海外渡航が難しい状況下で遠方の選手と競える利点があるとはいえ、会場で味わえる高揚感やダンサー同士がお互いに与える刺激など、やはり生の現場に勝てないことは確かだ。

 「オンラインイベントは現場主義の人間からすると寂しい」とJDSFブレイクダンス部の石川勝之(いしかわ・かつゆき)部長。それでも、画面越しに技術を競えるのはダンスならでは。石川部長は「(ネット環境次第で)今は動きがカクカクしたり、音がずれたり限界を感じるが、5G(第5世代移動通信システム)が出たら状況が変わるのでは」と期待を寄せる。

「ブレイク・フリー・ワールドワイド」アジア太平洋部門 動画はこちら

https://youtu.be/901xAGQWEjk

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