世界一のチンピラ国家、中国|石平 「自ら放火してから火事場泥棒をやり、自分たちへの責任追及は一切許さない。そしていつでもどこまでも、弱い国や人々をつかまえて思う存分いじめる」――これが私の出身国である某大陸国家の悪しき本性である。

デタラメを言って他国に責任を転嫁

個人にしても国にしても、災難や危機に際した時こそ、その人やその国の本性がよく表れてくる、と私は以前からそう思っているが、今回のコロナ禍に際して図らずとも、私の出身国である某大陸国家の悪しき本性は余すところなく露呈した。

コロナ禍を作り出したのは紛れもなく中国である。武漢でコロナウイルスの感染拡大が発生したあと、中国政府が国際社会に対し情報を隠蔽して真実を隠した結果、ウイルスが世界中に拡散して爆発的な感染拡大を引き起こし、夥しい人命を奪い、人類社会に多大な被害をもたらした。

しかし、世界の人々にそれほどの大災難をもたらして迷惑をかけまくったのに、当の中国政府は今日に至っても、国際社会に対してお詫びの一言もない。自分たちの落ち度や責任を認めようとは一切しない。それどころか彼らは、「ウイルスは米軍が武漢に持ち込んだ」との出鱈目を言って他国に責任を転嫁させている。あるいは、「武漢は最初の発病地ではあるが、必ずしもウイルスの発生源ではない」との詭弁を弄して世界の目を欺こうとしているのである。

放火してから火事場泥棒をやる

コロナ禍が発生した初期段階では、中国は世界各地でマスクなどの医療物資を買い占めて、各国における品不足の原因を作った。中国発のコロナウイルスが世界中で猛威を振るい大混乱を引き起こすと、今度は医療物資が不足する各国に不良品のマスクや正確率30%未満の検査キットなどを送りつけ、世界の「救世主」を気取る。言ってみればそれは、れっきとした放火犯が消防隊員に成りすましてさらなる悪事を働くようなものである。

中国の悪辣さは、この程度に止まることはない。コロナ禍で世界が、特に「世界の警察」のアメリカが大混乱に陥っているなかで、中国政府はまさにこの混乱に乗じて、南シナ海で「行政区」を新設して覇権主義的拡張を加速化させたり、台湾海峡に軍艦を派遣して威嚇的な行動を繰り返したり、日本の尖閣周辺の領海に侵入して不当な領土要求を力尽くで通そうとするなど悪さの限りを尽くした。それは普通でいう火事場泥棒の恥ずるべき所為であるが、中国の場合、自分たちが放火してから火事場泥棒をやるのだから、さらにタチが悪い。

強きに弱く、弱きに強い習性

世界各国がコロナ禍の原因究明を求めると、ウイルスを世界中にばら撒いた中国は今度、必死になって責任逃れを図ろうとしている。そのなかでは、たとえば原因と責任の究明を強く主張するオーストラリアに対しては、中国政府が同国から輸入する大麦に法外な追加関税を発動したり、中国国民にオーストラリア旅行の自粛を呼びかけるなど、全く理不尽な報復措置に打って出るのである。その横暴さは目に余るが、一方、オーストラリア以上に中国に対する責任追及を強く主張するアメリカに対しては、決して同様な報復措置を取らない。強きに弱く弱きに強いというのは、まさに中国政府の一貫した習性である。

そして、コロナ禍の混乱に乗じた形で、中国政府はより一層の弱者いじめを始めた。5月下旬に開かれた全人代で、習近平政権が「国家安全法」という悪法を香港に押し付ける暴挙に出たのである。この悪法が実施された暁には、香港の人権と自由は完全に奪われて、700万人以上の香港市民は中共政権の俎板の鯉となる。国際社会は到底それを許すことなどできない。

世界一の巨悪

このようにして、コロナウイルスの感染拡大以来の半年足らずの間に、すでに中国政府は数え切れないほどの悪行を重ねてきている。これらを一目見ただけで、中国という国はまさに世界一の巨悪であることがよくわかるであろう。彼らは自らに落ち度があっても一向に謝らないし、罪を犯してもそれを絶対認めない。悪いのは他国であって、自分たちはちっとも悪くないと常に思っている。放火も火事場泥棒も平気な顔でやるが、自分たちへの責任追及は一切許さない。そしていつでもどこまでも、弱い国や人々をつかまえて思う存分いじめるのである。

そんな国のことを「ヤクザ国家」と呼びたいところだが、考えてみれば日本のヤクザでさえ、それほど卑怯でもなければそこまで堕落しているわけではないだろう。習近平の中国はもはや、「ヤクザのなかのチンピラ」と化しているのである。図体こそでかいが、心と頭はまさしくチンピラ、実に厄介な存在である。

不幸にも、このように厄介な「チンピラ国家」を隣国に持ったのはわれら日本国である。このような国にどう対処していくのかは常にわれわれにとって頭痛のタネであり、避けては通れない重要な課題であろう。

だからこそ月刊『Hanada』8月号から始まる私の連載は、中国に対処するための参考となる中国論や日本論を柱の一つとして展開していきたい。「彼を知り己を知れば百戦殆からず」である。(初出:月刊『Hanada』8月号)

石平

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