選挙期間って必要ですか?~都知事選を期に「選挙」の在り方を考える~

ここがおかしい!日本の選挙制度

現職の小池百合子都知事の任期満了に伴う東京都知事選挙は、17日間の選挙戦を経て、本日投開票日を迎えました。選挙戦序盤に寄稿した筆者の記事(東京都知事選の見方(小野・山本編)自由主義 VS 社会主義(By Ryuga))では、日本の首都のである東京のリーダーを、小池圧勝の一言で終わらせてはいけないという思いから、主要な報道とは違う視点から選挙分析を行わせて頂きました。その点、SNS等を通じ、一定程度は様々な候補者にフォーカスが当てられ、多様な議論も巻き起こりもしたが、やはり、終始現職の小池氏圧勝のムードが漂っていた選挙戦であったのは否めません。

このような選挙戦は、何も今回の都知事選挙に限ったものではありません。市区町村議会選挙から、衆議院選挙まで、日本のあるゆる選挙は、現職や与党圧勝の一言で片付けられてしまうことが多いのはご案内の通りで、それらの要因は、規制ばかりの日本の「選挙制度」にあると筆者は考えます。そこで、今回は、選挙戦の中身から離れて、選挙制度そのものについて問題提起をしていきます。

形骸化している選挙活動と政治活動の線引き

現在、今回の都知事選も含む日本の全ての選挙において、選挙期間中以外の選挙活動(事前活動を含む)は公職選挙法によって禁止されています。一方、政治活動は自由に行えます。しかし、下記の通り公職選挙法における政治活動と選挙活動の定義は非常に曖昧で、政治活動の名の下、選挙期間以外の選挙活動(事前活動)は行われているに等しい状態です。

例えば、ビラを頒布する場合においては、選挙名や候補者名、選挙公約の有無が主な判断要素となりますが、明確な判断基準は無く、政治活動として頒布するビラと、選挙活動として頒布するビラには大差は無いのが現状です。また、Twitterにおいて投票を呼びかけるツイートに対するリツイートは黒で、いいねはグレーゾーンという現状もありまう更には、街頭演説においても、候補者の氏名が記載されたのぼりや、たすき等の使用の有無で線引きされる等、まさに、選挙活動と政治活動の線引きは、道路交通法におけるスピード違反のように形骸化してしまっているのです。

公職選挙法における政治活動と選挙活動の定義

選挙活動..特定の選挙に、特定の候補者の当選をはかることを目的に投票行為を勧めること。

政治活動…政治上の目的をもって行われるいっさいの活動から、選挙運動にわたる行為を除いたもの。

引用:選挙Q&A(選挙運動と政治活動)

時代錯誤の不可解なルールの数々

選挙活動と政治活動の線引き以外にも、公職選挙法に基づく日本の選挙制度には時代錯誤の不可解なルール・規制があまたとあるのです。例えば、選挙ポスターやビラ等に張らなければならない証紙(切手サイズの大きさのシール)です。これは、候補者の公平性を保つことを目的に、頒布に制限をかける為のものですが、ビラの部数制限は、7万枚なので、最大限に頒布しようと思えば、7万毎の証紙を張らなければならいので、かえって負担が増加してしまいかねません。

他にも、

・ウグイス嬢への日当額を、1日15000円以内に制限した結果、形を変えて別名目での支給が横行。
・選挙事務所においてお茶請けを提供する場合には、おせんべいはセーフで羊羹はアウト。
・戸別訪問の禁止をしているにも関わらず、文書図画の頒布部数を制限した結果、候補者の理念や政策が伝わらない。

等、日本の選挙制度が規制で雁字搦めになっている結果、明らかに国民の政治参画が阻害されてしまっているのです。

政治家の「政治参画を促したい!」は口先だけ

そんな欠陥だらけの公職選挙法ですが、規制が緩まる兆しは一向にありません。例えば、日本は他国と比べて、立候補における多額の供託金が必要となることが度々問題視されていますが、公職選挙法を改正出来る権限を持つ現職国会議員の多くは、政党から公認料が支給されるため、問題意識を共有できないのだと筆者は考えます。

また、前述のように選挙活動の期間が制限されているのも、選挙ポスターやビラ等に証紙を張らなければならないのも、複数候補による演説会が禁止されているのも、どれも新規参入を拒むものばかりで、それらの規制を緩和することは、現職の政治家が不利になることに繋がるため、改正の議論が中々進まないのではないでしょうか。つまり、結局多くの現職の政治家は既得権益にしがみついていて、「政治参画を促したい、投票率を上げたい!」というのは口先だけなのが現状です。

選挙の規制緩和でより自由で身近な選挙へ

選挙期間をフリーにし、時代にそぐわない規制は全廃を

選挙活動と政治活動の線引きが形骸化しているのは、前述の通りです。よって、選挙期間(選挙活動が可能な期間)はフリーにし、一層のこと選挙活動と政治活動を線引きするという概念自体を無くすべきだと筆者は考えます。そもそも衆院選は12日間、町村議会選に至っては5日間と、日本の選挙期間は非常に短いのです。これでは、規制だらけの選挙制度と相まって、新参者の候補者がいくら良い訴えをしたとしても、有権者に伝わるものも伝わりません。結局、今の選挙制度は「ジバン・カンバン・カバン」を持つ人が、圧倒的に有利なものなのです。これが、フリーになれば、本当の意味で、努力や政策で勝負することが出来るようになります!

また、公職選挙法に基づく日本の選挙制度には時代錯誤の不可解なルール・規制があまたとあり、形骸化してしまっているのも前述の通りです。この現状は、成熟した民主主義国家であるはずの日本にとっては、あまりにも不健全です。時代にそぐわない規制は全廃し、より自由で身近な選挙制度へ変えていくべきだと筆者は考えます。
中見出し:選挙の有名無実化状態からの脱却へ

選挙は、先人達が、流血を伴う戦い(権力闘争)を経て、創り上げた叡智の結集です。選挙があるから、権力者を決めるときも、物事を変えるときも、全て投票や話し合いで決することが出来るのです。しかし、その民主主義の土台である選挙が、有名無実化してしまってるのが、今の日本の現状です。その証拠に、投票率は低下傾向にあり、特に若い世代の投票率低下は顕著です。これは、日本の教育に問題があり、ディベート教育等の主権者教育が不足しているのが大きな要因だと筆者は考えます。(このことは、いずれ詳しく寄稿する予定です。)更には、前述の通り、規制だらけの選挙制度が国民の政治参画を妨げているのは明白です。選挙の規制緩和と、主権者教育の拡充で、国民の選挙への意識を高めていくべきではないでしょうか。

編集後記

3000字を超える長文となってしまいましたが、最後までご一読ありがとうございました!今回は都知事選の中身から離れて、選挙制度そのものについて問題提起をさせて頂きましたが、皆さんはどう思われましたか?少しでも、都知事選や選挙、政治などのことについて考えるきっかけとなれば幸いです。今回は、2回目の寄稿となりました。前回と今回は選挙をテーマにさせて頂きましたが、次回以降は他分野についてもクオリティーの高い記事を提供できるよう全力を尽くしますので、応援の程をよろしくお願い申し上げます!

追記 ~都民の皆さん、投票に行きましょう!~

本日はいよいよ東京都知事選挙投開票日です!また、東京では都議補選も投開票日となります。新型コロナウイルス感染症の感染拡大が気になるところですが、投票所の換気や、アルコール消毒等、様々な感染防止策(東京都知事選挙における新型コロナウイルス感染症対策について:東京都知事選挙特設サイト )が講じられていますので、マスクを着用し、(用紙への記入には持参の鉛筆も使用可とのことです。)是非とも投票にいきましょう。たかが1票されど1票です。皆さんの貴重な1票で東京の未来、日本の未来が大きく変わるに違いありません!(選挙権を得るまで、あと3ヶ月たりない筆者にとっては羨ましい限りです…)

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