背番号「13」の宿命? 西武高橋光“ノーノー未遂”も大先輩を彷彿するエースの姿

9回先頭に初安打を許した西武・高橋光成(中央奥)と声をかける西口文也コーチ【写真:宮脇広久】

高橋光は9回無死まで 西口コーチの域はまだ遠い?

■西武 2-0 オリックス(8日・メットライフ)

栄光の背番号「13」。2代にわたる挑戦は、またもやあと1歩及ばなかった。西武の高橋光成投手は8日、本拠地メットライフドームで行われたオリックス戦に先発し、8回まで無安打1四球無失点。9回先頭の代打・西野に中前打を浴び、ノーヒットノーランを逃したが、9回1安打1四球無失点で今季5勝目(6敗)を自身4年ぶりの完封で飾った。

「9回に入る前に、イケるんじゃないかという気持ちが出てしまった」とちょっぴり悔やんだ高橋光は、前回登板の今月1日・ロッテ戦でも、7回1死まで無安打無得点に抑えていたが、安田に中前打を許し、7回1安打2四球無失点で降板していた。

また、「(ノーヒットノーランを)できるものならやってほしかったというのが本音」と語った西口文也投手コーチも、現役時代に高橋光と同じ背番号「13」を付けて西武のエースの座に君臨し、大記録に3度も迫ったが、1度も達成できずに終わった。

西口コーチも現役時代には3度の“ノーノー未遂”を…

最初は2002年8月26日のロッテ戦で、9回2死まで無安打1四球無失点に抑え、あと1人に迫ったものの、小坂に中前打された。得点は許さず、完封勝利を果たした。05年5月13日の巨人戦でも、9回2死まで無安打1死球無失点の快投を演じたが、清水にまさかのソロ本塁打を浴び、1失点完投勝ちにとどまっている。

極め付きは、05年8月27日の楽天戦で、9回を1人の走者も許さずパーフェクトで投げ切った。ところが味方打線も得点できず、延長戦に突入。10回先頭の沖原に右前打を許した。結局10回1安打1四球無失点に抑え、その裏に味方がサヨナラ勝ちを納めた。

3度にわたる“未遂”も、悲劇性を帯びることはなく、まるで笑い話のようにチームに伝わっているのは、現役時代からひょうひょうとしたキャラクターで、若手からの人望が厚かった西口コーチならではだろう。ちなみに、かつて西武で同じ釜の飯を食った楽天・涌井も、今年8月5日のソフトバンク戦で9回1死まで、無安打2四球無失点だったが、川島に中前打され、「西口さんと一緒で、だいたい9回に打たれるだろうなと思ってます」とのコメントを残した。

辻監督も高橋光の好投を評価「何かコツをつかんだような、ちょっと大人になった気がする」

背番号「13」は、西口コーチが1995年から2015年まで、21年間の西武での現役生活中に一貫して背負い、通算182勝をマーク。3年間欠番となった後、それまで「17」を付けていた高橋光が昨年継承した。前橋育英高2年で甲子園大会優勝を成し遂げ、ドラフト1位で入団したスター性に加え、グラブをはめた左手を打者の方へグイッと突き出す投球フォームが、西口コーチの現役時代に似ているとの声もあった。

この日の高橋光は、9回を前に西口コーチから「ツーアウトまでいけ!」と声をかけられ、初ヒットを浴びた直後には、マウンドに駆け寄った西口コーチから「ツーアウトまでいけって!」とツッコミが入った。

9回先頭に夢を打ち砕かれた高橋光も、9回1死までだった涌井も、2度にわたってあと1人まで迫り、1度は走者を1人も許さないまま9回を投げ切った西口コーチの域には、いまだ達していないと言えなくもない。

とはいえ、今季開幕から球数が100前後に達したところで打ち込まれる試合が目立った高橋光が、2試合続けて文句なしの快投。8月25日・日本ハム戦の3回から、20イニング連続無失点の安定ぶりだ。期待が大きいゆえの厳しいコメントを投げかけてきた辻発彦監督も、ついに「この2試合に限っては、素晴らしい」と手放しで褒め「非常に力が抜けていたというか、何かコツをつかんだような、ちょっと大人になった気がする」と評した。

西口コーチとしても、ノーノーを達成して因縁を解除してもらうに越したことはないが、高橋光が着実にエースへの階段を上ってくれる方が、ずっとうれしいに違いない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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