デスク日誌(9/9):遠野物語

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 今年は「遠野物語」の発刊110年に当たる。かっぱ、座敷わらし、てんぐ…。現実にはあり得ないような不思議な伝説や伝承が好きで、学生時代は民俗学のゼミに所属した。遠野市は何度となく往来していたのだが、ここしばらく縁遠かった。

 夏休み中、ホップ畑の間にある道路を抜けて「かっぱ淵」を歩いた。釣りざおから垂らされた糸の先に、キュウリがぶら下がっていた。せせらぎを眺めていると、本当にかっぱに会えそうな気分になってくる。

 遠野市立博物館で開かれていた特別展「遠野物語と怪異」にも足を延ばした。遠野を管内とする釜石支局が書いた紹介記事に、興味をそそられたのだった。

 てんぐの牙、牛になった人間の頭に生えた角、長さ54センチのかっぱの全身ミイラ。物語の世界を堪能した後、館内で漫画「水木しげるの遠野物語」を購入した。独特のタッチで描かれた絵を眺めながら水木ワールドに浸った。

 「今度は遠野盆地を覆う雲海を見たい」と思いながら帰った数日後、支局が撮影した風景が紙面を飾った。自分の願望は伝えていないのに、何だか不思議で。 (盛岡総局長 今野忠憲)