ロッテ澤村の快投、元メジャー藪氏が勧める積極トレード「選手の将来を思ったら…」

移籍後初登板となったロッテ・澤村拓一【画像:パーソル パ・リーグTV】

巨人からロッテへ移籍したその日、いきなり3者連続三振デビュー

巨人からロッテへトレード移籍した澤村拓一投手が8日、本拠地での日本ハム戦で6回から登板し、1イニングを3者連続三振に斬る“デビュー”を飾った。移籍した当日に1軍登録され、即登板で結果を残した32歳右腕。新しい背番号「57」がついたユニホームが間に合わず、急遽「106」番を背負って上がった登板だったが、試合後はヒーローインタビューで満面の笑みを浮かべるなど、新天地で最高のスタートを切った。

逆転に成功した直後の6回。マウンドに上がった澤村は、先頭の渡邉を空振り三振に斬ると、巨人でチームメートだった大田、ビヤヌエバも空振り三振。11球の力投で試合の流れを引き寄せた。その姿を「いいピッチングをしていましたね」と称えるのが、元阪神でメジャーの藪恵壹氏だ。

中央大から2010年ドラフト1位で巨人入りした澤村は、将来のエース候補として期待されたが、2015年から抑えに転向。2016年には37セーブで最多セーブに輝いた。だが、翌年に右肩を故障してから調子が安定せず。今季は序盤に不振が続いて2軍に落ちると、そこでも制球の悪さが目立ち、3軍での調整が命じられた。藪氏は「大学の先輩でもある阿部慎之助2軍監督は、ちょっと突き放してどう変わるか見ていたんだと思います」と話すが、その最中にトレードが成立した。

藪氏は、今回のトレードは「とにかくプラスに考えるべき」だと話す。

「日本だとトレードに『出された』というイメージが強いけれど、逆に言えば、自分のことを欲しいチームがあるということ。そこは前向きに考えていった方がいいと思います。メジャーでは戦力補強のためのトレードは日常茶飯事。1つのチームで上手くいかなくても、それは水が合わなかったと割り切って、次に進んでいった方がいい。環境が変わるだけで、変わる選手はたくさんいます。球団も選手の将来を思ったら『他のチームで活躍されたら困る』と飼い殺しにするのではなく、どんどんトレードに出して成功例を作っていった方がいいですよ」

まだ1試合しか投げていないが、澤村は環境の変化がもたらす効果、リセットすることの大切さを身を持って感じ、結果として示せたと言えそうだ。

ロッテ井口監督は重要な局面で即起用「ちゃんと調査しているから」

移籍当日に1軍登録し、逆転した直後という試合の流れを決める重要な局面で澤村を起用した、井口資仁監督の采配も大胆だった。藪氏は「(起用が)早かったですね」と話すが、それもロッテから本当に戦力として必要とされていることを意味する。

「下(2軍・3軍)できっちり投げているのを見ていたんでしょう。ちゃんと調査しているから、すぐに1軍で投げさせても大丈夫だという判断だった。澤村投手は本当にいいスタートを切りました」

環境が変われば、何かが変わるのではないか。そう期待される選手の1人が阪神の藤浪晋太郎だが、藪氏は「阪神は実力があって、以前活躍した経験を持つ選手の場合、トレードには出さない傾向がある」と話す。「力があることを認めているからこそ」だとは分かっているが、「選手のためになっているかは分かりません……」と首をひねる。

幸先のいいスタートを切った今回の電撃トレードだが、ただ一つ、藪氏には気になる点があるという。それがトレードのタイミングだ。巨人の1軍は現在、名古屋へ遠征中。澤村はジャイアンツ球場で2軍メンバーには挨拶をしたが、1軍とは挨拶をしないままに巨人を離れた。

「1軍で挨拶ができるような配慮をしてあげてほしかったですね。長く1軍で活躍した選手だし、今年も開幕は1軍だったわけだから、少し寂しい感じがします。もちろんん、ロッテも早く戦力として欲しかったのだろうし、トレード成立のタイミングは計れないものがある。ただ、寂しい感じはありますね」

10年ぶりの日本一に向けて快進撃を続けるロッテ。澤村は、悲願達成というパズルを完成させる最後のピースとなり得るのか、注目だ。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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