やりたい仕事より「できる仕事」を選ぶべき理由。水城せとなインタビュー

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リモート取材・文:高橋千里(たかはし)/マイナビウーマン編集部

『失恋ショコラティエ』や『脳内ポイズンベリー』など、20~30代の女性の心をわしづかみにする恋愛作品を数多く生み出してきたマンガ家・水城せとな先生。

マンガ家歴26年目になる今年、水城先生の代表作の一つである『窮鼠はチーズの夢を見る』シリーズが実写映画として全国で上映決定。

常に恋愛マンガ界の第一線を歩み続け、まさに“好きなことを仕事にしている”ように見える水城先生だが、実は「好きなことばかりやっているわけではない」のだとか。

そこには、一般企業の会社員として働く私たちが学ぶべき「仕事への信念」が隠されていました。

映画『窮鼠』は、原作通りのフラットな世界観

マイナビウーマン編集部のたかはしです。今日はよろしくお願いします!

映画『窮鼠はチーズの夢を見る』の試写を鑑賞しましたが、水城先生が描く原作の世界観がそのまま実写に映し出されていて感動しました!映画館で上映されたら何度も観に行ってしまいそうです。

https://youtu.be/vGQRUcQzAlQ

ありがとうございます。

特定の層のみに向けて美化するような作品テイストが多かったんですよね。

今回の映画では同性愛のリアルや、人間の生々しさが鮮明に描かれていました。

そうですよね。男性の監督さんというのもあるのかもしれないですけど、企画書を拝見した時点で、フラットな目線で『窮鼠』を描いてくれるだろうなというのを感じて。「企画を進めていただいてOKです」とお返事しました。

キャスティングに関してはいかがでしたか?

キャスティングはほぼお任せしていましたが、

というのはお伝えしていました。俳優さんって年齢を重ねても若々しい方が多いので、もう少しリアルな男性っぽさを出してほしくて。

作中では恭一さんは29~30歳ですが、恭一さんを演じる大倉忠義さんは撮影当時、33歳ですね。

それでも「きれいすぎるんじゃない?」とは思いましたけど(笑)。だけど実際に撮影されているところを見たら、良い感じに枯れているというか、現実にいるような男性の姿だったので、すごく安心しました。

https://youtu.be/zwM2VSxGG_8

マンガ家は「イタコのようなお仕事です」

水城先生はマンガ家のお仕事を続けられて26年目になると思いますが、今までのキャリアで一番うれしかったことを教えてください。

「この作品はこういうもの」というあるべき姿が、何の制限もされず、ごく自然に形にできた時はうれしかったですね。

マンガの世界でも、ビジネスとなると、何かしら制限がかかることもあるんですね……。

そうですね。出版社の方針とか、編集者さんの意向とかで、作品を変えなきゃいけなかったこともあります。私一人で描いているわけではなく、仕事で描いているので。

たまに理不尽なこともあったりするんですか?

たまにっていうか、しょっちゅうありますね(笑)。私がマンガ家の仕事を説明する時には

とよく言います。

イタコとは、死者の霊を呼び寄せる巫女のことなんですけど。

感じなので。イタコさんも、もしも誰かからの指示で霊の言葉を捻じ曲げて伝えなければならなくなったら、つらいと思うんですよ。

なるほど……。お話を聞いていると、私たち一般企業で会社員として働く女性と似ているところがあるなと思いました。

そうですね。「マンガ家は好きな仕事ができていいね」と思われがちですけど、実際は好きなことばっかりやっているわけじゃないですから。

でも会社員の方と違うのは、会社員は言われたことをやっても自分の名前が世に出ることはあまりないですけど、私は言われたことをやると「水城せとながやった」というふうに名前が出てしまうんです。

確かに。名前が出る分、背負うものが大きそう……。そういう時は、どうやって自分の中で折り合いをつけるんですか?

そうなってしまうのであれば、それが運命なんだろうって思うようにします。

受け入れるんですね。

一応は頑張ってみるけど、頑張っても動かせないものは諦める。自分の力が及ばないことをどうにかしようともがいても、つらいだけなので。

と考えますね。

そこまで割り切れるのがすごいです。

逆に言うと、自分にとって良いことがあった時も、どこかの誰かが我慢してくれているはず。だから、

と思っています。

「やりたい」を突き詰めると、執着を生むことも

さっきのお話と少しつながるんですが、前に水城先生が別のメディアのインタビューで「やりたい仕事より、できる仕事を選んだ方がいい」と話されていたのが印象的でした。

そうですね。私も、恋愛マンガ家の仕事は

ところがあります。

「やりたい仕事」と「できる仕事」が重なっているのが一番理想ですが、そうじゃない場合も多いですよね。それで悩む人に向けて、「やりたい仕事」より「できる仕事」を優先させるメリットを教えてほしいです!

そもそも「やりたい仕事」をどうしてやりたいと感じるのか、その理由は2つあると思っていて。1つは

。もう1つは

後者の意味の「やりたい」は、“憧れ”に近いような感じなんでしょうか。

その通りです。

うっ……、分かり過ぎます。

私はよく、「ペンギンは海へ行けばいい」という話をします。ペンギンがハヤブサに憧れて、原っぱで一生懸命に空を飛ぶ練習をしても、なかなか飛べない。そのうち3cm、5cm、頑張って10cm飛べるようになったとしても、

ペンギンの努力を思うと、泣きたくなってきました……。

だけどペンギンほど、海の中を自由に泳ぎ回れる鳥はいないわけで。本来の目的は「自由に飛び回りたい」ってことのはずなのに、

最初に立てた目標に縛られて、がんじがらめになってしまうんですね。

目標を立てるのは良いことだけど、

を考える必要があって、「こうじゃなきゃダメ」にこだわると永遠に達成できないんですよね。

「ハヤブサになりたい」のように、そもそもの目標が現実的じゃなかったり、自分にとって適切ではなかったりするケースもあると思います。それに気付くにはどうしたらいいんでしょう?

そもそも自分がペンギンなのか、ハヤブサなのか。何が得意で、何が苦手なのか。世の中や会社から何を求められていて、何を与えることができるのか。じっくりと考えてみるといいと思います。

すごく腑に落ちました。自分の特性や能力を客観視することが大事なんですね。

早く成功する人は、若い頃から自分のことを見極め、分析している気がします。

先ほど、水城先生も「マンガ家は『できる仕事』だからやっている」とおっしゃっていましたが、自分の得意分野に気付き始めたのはいつ頃だったんでしょうか?

私は昔から得意なことがあまりなくて。だけど唯一、

ので、幼稚園の頃には紙芝居を作っていたりしたんですよね。だから、作家のような職業に就くだろうなと、子どもの頃から漠然と思っていました。

見極めが早い!達観しているというか……。

一人っ子で、自分だけで過ごす時間が多かったので、得意・不得意に気付きやすかったのもあると思います。逆に、周りに人が多いと合わせることが多すぎて、本当の自分の姿を見つめる時間があまりないかもしれませんね。

なるほど。そういう意味では、一人の時間ってすごく大事ですね。

ところで、水城先生が今「やりたいこと」って何かあるんでしょうか?

かっこよくないですか?クレー射撃。それに私、ここ数年すごく目が悪いんですよ。でも遠くはよく見える。老眼なので。だからこそ、遠くが見えるこの特性を生かしたいなと思って。

まさにご自身の特性を分析して、

を見つけたんですね。

ご年配の方もたくさんやっていらっしゃるし、面白そうだなって。講習や試験を受けたりしなきゃいけないので、習得するまでの道のりは長いですが、挑戦してみたいですね。

水城先生のクレー射撃でのご活躍も楽しみです!私も今日の取材を通して、自分の「できること」を改めて考えてみようと思います。ありがとうございました!

INFORMATION

映画『窮鼠はチーズの夢を見る』

学生時代から「自分を好きになってくれる女性」ばかりと受け身の恋愛を繰り返してきた、大伴恭一。ある日、大学の後輩・今ヶ瀬渉と7年ぶりに再会。「昔からずっと好きだった」と突然想いを告げられて……。多くの女性の支持を得た水城せとなの傑作コミックを、行定勲監督が実写映画化。

2020年9月11日、全国ロードショー!

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