エスコバル顔負け⁉ Netflix『麻薬王』はヒロポン密売人のソン・ガンホが70年代韓国で大ハッスルする超問題作!!

Netflixオリジナル映画『麻薬王』独占配信中

ついにソン・ガンホがNetflixオリジナル映画に登場! タイトルはズバリ『麻薬王』!! ウ・ミンホ監督(『インサイダーズ/内部者たち』ほか)が今もっともアツい“麻薬モノ”をテーマに、ペ・ドゥナら豪華キャストで送る実話ベースの物語だ。

70年代の韓国・釜山は麻薬製造のメッカだった!?

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2018年末に韓国内で劇場公開された際には、前売りチケット予約だけで黒字確定の超ヒットを記録したという本作。監督のウ・ミンホは『インサイダーズ/内部者たち』(2015年)の記録的ヒットも記憶に新しいが、今回はガンホとのタッグだけに観客の期待値が爆発したのだろう。

正直、ガンホの脂っこい顔面がインパクト大なメインビジュアルが目に入った時点で鑑賞不可避だと思うので、全Netflixユーザーが観ることを前提にざっくりとだけあらすじを説明しておく。

物語の舞台は1970年代の韓国。ショボい密輸人だった金細工職人のイ・ドゥサム(ガンホ)は麻薬ビジネスの話を聞きつけ、朝鮮→日本の製造・密輸ルートを提案。やがて天性の商才で麻薬王として名を馳せていくドゥサムだったが、身の程を超えた成功と激動の韓国社会に翻弄され、じりじりと自滅していく……。

第二次大戦でも使用されたヒロポンをめぐる日本と韓国の蜜月

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本作で扱われる麻薬はメタンフェタミン、当時で言うところの“ヒロポン”である(ドラマ『ブレイキング・バッド』の“メス”も同様)。喘息治療薬エフェドリンから合成されたヒロポンは当時、肉体労働者や受験生向けに滋養強壮剤として売られていた薬。しかし第二次大戦でも広く用いられ、恐怖心を麻痺させられた若き日本兵たちが“神風特攻隊”として命を散らせていった。そして戦後も多くの中毒者を生み、じわじわと日本を蝕んでいく。

ついに「覚せい剤取締法」によって国内での製造が厳しくなると、その拠点は韓国へ移される。そんな日本との利害関係に乗じ、釜山でヒロポンをせっせと製造し密輸していた一人が本作の主人公ドゥサムというわけだ。しかし、小悪党だった彼が一体どうやって大胆な麻薬ビジネスで成功を収めることができたのだろうか?

身内やロビイストの協力、そしてカネの力で有力者たちを懐柔

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ドゥサムは従弟のドゥファン(キム・デミョン)や妻ソン・スクギョン(キム・ソジン)ら身内を巻き込んで家内制手工業的に密輸事業を起こすが、賄賂で公務員を囲い込むなどの裏工作を徹底した。そのうち大学教授の協力を得て純度の高いヒロポンを自前で製造するようになると、ピンハネしていた仲間と決別し売上を独占。さらには日本のヤクザに恩義を売って独自ルートを開拓すると、ひと財産築いて国内の政治家ら有権者を賄賂で囲い込んでいった。

ここでドゥサムをサポートしたのが、4ヶ国語を操る才女キム・ジョンア(ペ・ドゥナ)だ。彼女はいわゆるロビイストで、幅広い人脈を駆使して麻薬王の勢力拡大に貢献。実際に数カ国語を操るペ・ドゥナは、この怪しく妖艶な役柄にぴったり! 神秘的な魅力によって“男たちの成功のステータス”として崇められる悪女を伸び伸びと演じている。プレーンな役柄が多い彼女には珍しい、70年代の色鮮やかなレトロファッションにも注目だ。

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また、ドゥサムを追い詰めていく若き検事キム・イング役のチョ・ジョンソクの熱血演技も小気味いい。いま流行りの韓国系イケメンと比べて昭和顔というか、どことこなく田中圭と東出昌大をミックスしたようなルックスは日本でも今後ますます人気が出そうなので、今のうちにチェックしておこう。かなり若く見えるジョンソクだが1980年生まれの38歳で、ガンホとは『観相師-かんそうし-』(2013年)に次いでの共演となる。

ミゲル・アンヘル、パブロ・エスコバル、エル・チャポ……麻薬王に共通する人物像

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どんなに金持ちになっても田舎のガハハ親父といった風情が抜けないドゥサムだが、それゆえのハングリー精神と思い切りの良さは成り上がり物語の基本だ。同じくNetflixの『ナルコス』シリーズや『エル・チャポ』など、南米の麻薬王を描いた実録作品との共通点も多い。

犯罪者でありながら巨額の賄賂や多大な地域貢献によって支持基盤を固め、ときにははったりをかまし大胆な作戦で窮地を乗り越えていくのは麻薬カルテルものではお馴染みの展開である。情に厚く憎みきれない人懐っこさに残酷性を秘めた人物像は、彼ら実在の麻薬王たちに倣ったはずだ。

70年代韓国の麻薬王はいかにして頂点を極め、そして没落していったのか。未曾有の経済成長、金大中事件、独裁政権からの民主化……。戦後の日韓関係や当時の韓国に想いを馳せつつ、実力派監督と名優たちの共演を堪能しよう。

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