台風10号 ド・ロ神父ゆかり「大平作業場跡」 8メートルの素屋根が倒壊 長崎

保存修理工事の完了を目前に台風10号の被害に遭った大平作業場跡=長崎市西出津町

 台風10号は、長崎市西出津町で整備が進んでいた市指定史跡「ド・ロ神父 大平作業場跡」にも被害を与えた。石積みの保存修理工事のため設置していた高さ約8メートルの素屋根が倒壊し、石積みも一部崩落。完了間近だっただけに、関係者からは落胆の声が漏れた。
 作業場跡は明治期に同市外海地区に赴任したフランス人宣教師、ド・ロ神父が1884年から17年かけ耕作地として開墾した土地の一角にある。市によると、作業場は1901年ごろの建築とされ、神父が考案した石積みの技法「ド・ロ壁」が使われている。世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を構成する「外海の出津集落」などの重要な構成要素という。
 整備事業は所有者の「お告げのマリア修道会」(同市)が施工主となり国、県、市の補助金を得て実施。保存修理工事は10月中旬に完了の予定だった。その後の工事で本式に屋根を設置し、隣接する茶畑の茶葉で緑茶や紅茶を炒(い)る体験の場として利活用を計画している。
 同修道会出津修道院の赤窄須美子シスターは「次のステップに進む段階だったが肝心の石積みが崩れ言葉がない。工事をした方々も気の毒」と肩を落とした。市世界遺産室は「今後については所有者、文化庁とも協議が必要」としている。

整備に入る以前の大平作業場跡。左奥は茶畑=2019年3月

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