合法化からまもなく2年、カナダの大麻文化について

 2018年にカナダで嗜好用大麻が合法化され、まもなく2年が経過しようとしている。カナダの人たちは大麻とどのように向き合っているのか。また、当時日本でも報道されていたこの合法化は、その後人々や消費傾向にどのような影響を及ぼしたのだろうか。

日常の中の大麻

 カナダの南西に位置するバンクーバーでは、多数のマリファナ販売店が見られる。特に、市内一番の観光スポットとしても知られる、歴史的建造物が立ち並ぶエリア「ガスタウン」でも、一歩足を延ばせば、路地裏から大麻の独特の匂いが漂ってくる。すると「ああそうか、ここは大麻吸引が合法の土地なんだっけ」と、自分が日本とは違う国にいることを思い出す。

 私が初めてバンクーバーを訪れてから5年、もうこういう光景には慣れてしまったが、来た当初は驚いたものだった。日本で大麻は違法なので、普段の話題に出ることもほとんどないし、もちろん販売店など見たこともなかった。

 しかしカナダの友人たちは日常的に吸う。それはもう、1日の仕事が終わったから、今日はオフだから、ビールでも一杯飲むかというような感覚である。パーティーでも寝る前でも、吸う人は毎日吸う。(もちろん吸わない人もたくさんいる。)彼らにとって大げさな物でも危険なものでもない、まさに嗜好品なのだ。大麻を嗜む知人達に尋ねたところ、日常的に吸う一番の理由は『リラックスできるから』。特に1日の終わり、もう難しいことは考えたくない、もうすぐ寝るかというひとときに一服するのである。自然体でいること、精神の安定、個人選択の自由を愛する、まさにカナダ人らしい生活とも言えようか。

大麻の合法化によって変わったもの、変わらないもの

 2018年10月17日より嗜好用大麻が合法化されたことにともない、カナダでは様々な変化が起きた。まず全体の傾向として、街の違法販売店は摘発され、その数はかなり少なくなった(ただし完全になくなってはいないようだが)。一方で政府公認の販売店は増え、ウェブサイトでも気軽に購入できるようになった。これは、以前医療用大麻購入には必須であった、医師による診断書が必要ではなくなったためでもある。大麻を買うために必要な条件は、年齢制限を満たしていることのみ。実際国内のどの州においても、人口一人当たりの小売店の数は横ばいか増加傾向にあり、特にアルバータ州の増加率は顕著である。

(Statistics Canada より)

 大麻を嗜む人達に話を聞くと、個人的にはみんな、合法化の前後であまり大きな変化は感じないと言う。強いて言えば政府のサイトで売られている商品が少し高くなった、以前より吸っている人が増えたかな、というところである。中には「飲酒より健康的だし、手持ち無沙汰の時に気軽に吸えるし、コミュニケーションツールとしてますます便利」と言う人もいた。

日本人と大麻

 日本でも太古から大麻の歴史はあり、人々の生活と深く関わってきた。綿花が普及するまで、衣服は基本的に麻で作られていたし、医学書や薬学所にも頻繁に大麻は紹介されている。そのため多くの日本人の中に、わずかにでも大麻への興味があるかもしれないことは想像に難くない。しかし現在日本での大麻使用は違法行為なので、当然、前述のカナダ人達のような知人はいない。日本でも他国と同じように医療用大麻を合法化させようという考えもあるが、実現には至っていない。そのため大麻は、日本から初めてカナダを訪れた人達にとって興味の対象となることが多い。ただし外務省によれば『大麻取締法』は海外在住者にも適用される場合がある、と注意喚起されている。そのため残念な気持ちはわかるが、決して好奇心で吸わないように。大麻が入ったお菓子(クッキーやブラウニーなど)を食べること、またそれらをお土産として日本に持って帰ることも当然違法となるので気を付けたい。

 カナダでは非常に身近で、私達にも興味深い存在の大麻。今後この文化がどのように発展、変化していくか、日本人としての視点でチェックしていきたい。

© 株式会社メディアシーク