長崎大が浮沈式装置開発 奈留瀬戸で潮流発電 成功 低流速に対応 実用化目指す

奈留瀬戸に係留された浮沈式潮流発電装置(経塚教授提供)

 長崎大が、低速の潮流でも発電できる「浮沈式潮流発電装置」を開発し、五島市の奈留瀬戸で、1カ月間の発電実験に成功した。ロープで海中に係留するため低コストで設置できるのが特徴。実験装置は小型で最大発電量は663ワット。今後、大型化を図り、離島などでの実用化を目指す。
 長崎大海洋未来イノベーション機構によると、発電装置は海底からの4本のロープで係留し、上げ潮、下げ潮による潮流の変化に応じて浮き沈みし、方向を変えて発電する。設置や保守の工事費が大幅に抑えられ、低コスト化が期待できるという。
 実験装置のタービンは直径64センチ。潮流を増速させる「ディフューザー」を周囲に装着し、秒速1.5メートルの低速の潮流でも発電できる。
 実験は昨年3月にスタート。装置の改善を加えながら計9回実施し、今年7月29日から1カ月間で安定した発電性能を確認した。装置は8月31日に回収。今後、発電性能パラメーターや装置の深度、姿勢などを詳しく解析する。
 潮の流れを利用する潮流発電は、風力や太陽光など再生可能エネルギーの中では予測可能で信頼性が高いとされる。欧州では2016年から商業発電が始まっているが、国内では1980年代に日本大学が海底設置型の装置で実験した程度で、近年は海域での実験まで至っていないという。
 同機構の経塚雄策教授は取材に対し、「今回の発電量は大きなものではないが、装置を大型化して発電量としてそれなりの結果を出したい」と述べた。

 


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