「若者は忙しい。でも私たちならインスタで投票につなげられる」NO YOUTH NO JAPAN能條桃子氏インタビュー

“若者のキラキラメディア”と捉えられがちなInstagramで、4.6万人(2020年8月29日現在)のフォロワーを誇る政治系アカウントがある。著名な政治家?オピニオンを発信しているモデル?答えは、大学生がインフォグラフィックで社会問題について発信している「NO YOUTH NO JAPAN」というメディアだ。2019年の参議院議員選挙を前に活動を開始し、もう1年が経った。政治×ネットの世界は最先端の業界より10年遅れているだのなんだのと言われているが、彼女らはInstagramの最新の機能を総動員し、ターゲットであるU-30世代の若者に行動を起こすことを訴え続けている。U-30世代の間にどんな変化を起こしているのか?NO YOUTH NO JAPAN代表の能條桃子氏にインタビューを行った。

投票率もっと上がると思ってた。ナメてました(笑)

-選挙ドットコム編集部 横尾(以下、横尾):活動開始1周年おめでとうございます。1年間Instagramでの発信を続けてきて、どのような変化を感じていますか。

-NO YOUTH NO JAPAN 能條桃子氏(以下、能條氏):ありがとうございます。組織化を進めたり、扱う題材の改善を進めたりして、様々な可能性は感じているんですが……選挙ナメてました(笑)。これだけ活動を続けていれば、もっと投票率も上がると思っていました。自分が見ているSNSの世界がどれだけ狭いのか思い知らされましたね。NO YOUTH NO JAPANとしては、まだ1年前と同じフェーズにいると思います。

-横尾:現在はどのような題材を扱っているのですか?

-能條氏:みんなで月ごとの投稿テーマを考えていて、最近は環境問題やジェンダー問題を取り上げました。自分でSNSに書くほどじゃないけどちょっと気になっているような、日常生活を過ごしているときに感じる社会問題がメインです。社会問題って政治につながっていて、それは自分の力で変えられるんだって気付いてないだけの人が多いんですよね。そう考えると、本当に政治に無関心な人なんていないはずなんです。

通常のフィード投稿以外でもストーリー機能やハイライト機能を活用していて、例えばストーリー機能を使って質問や意見を募集したり等、双方向コミュニケーションを大事にしています。

SNSに忙しい若者の行動を変えるのが投稿のゴール

-横尾:NO YOUTH NO JAPANは既存メディアとは随分違ったアプローチをしているメディアだと思います。能條さんが既存メディアに足りないと思っていることは何でしょうか。

-能條氏:新聞等のマスメディアって何かと叩かれがちですけど、私、マスメディアはちゃんと仕事してるって思うんですよね。視聴する側が内容をしっかり見たり読んだりできていないだけで。ただ、そこにたどり着くまでの「あらすじ」のようなものは用意されていないと思います。NO YOUTH NO JAPANがマスメディアに到達するまでのあらすじになれればなと。日頃のニュースだってすごく面白いのに、その裏にあるトピックスや社会問題が分かっていないと面白さも分かりませんから。

-横尾:「あらすじ」というと、分かりやすさを強く意識しているということでしょうか。

-能條氏:分かりやすく、ということを掲げるメディアは多いですが、NO YOUTH NO JAPANは「分かりやすい」で終わらせないで、「予備知識ゼロで刺さる」「同世代のモヤモヤを代弁する」「1投稿で行動を起こす」「おもしろポイントを紹介する」ということを意識しています。ただ難しいことをシンプルにすれば分かりやすいわけではないと思うんです。U-30の若者はSNSに忙しくて、政治の話なんかよく分からなかったら飛ばしちゃう。なので、1回のインプレッションで最終的には投票という最大の行動につながるように投稿内容を作り上げています。

投票に行き、政治の話をすることをU-30世代の当たり前にしたい

-横尾:能條さんは、10年後の世の中がどうなっていてほしいと考えていますか?

-能條氏:一番は、U-30世代の人が当たり前のように投票に行くようになってほしいです!そして、普段の生活でも政治の話をするのは変ではないし、むしろクールだし、自分たちは問題を解決できる、変えられるという意識を持ってもらえたらいいですね。

あと、横尾さんだったら分かると思うんですけど、政治の世界っていまだに男女比率の偏り方ヤバくないですか?20代でもここまで男性に偏っている業界って、政治くらいだと思います。

-横尾:その通りですね……。でも、NO YOUTH NO JAPANのメンバーは女性がとても多いですよね。

-能條氏:はい、女性が多くて、それがすごく嬉しいんです!女性の政治参加、増やしたいです。これは根深すぎる問題なので、10年で国会議員を男女同数にしようとまでは言わないです。NO YOUTH NO JAPANを若者の政治参加の入り口にしていただいて、そうですね……選挙に立候補する20代の男女比率が同じくらいになったら良いですね!NO YOUTH NO JAPANは特に女性用メディアというわけではないですが、女性が多数参加して運用しているメディアなので、男性が多い他メディアとは違った切り口からのアプローチはできているんじゃないかなと思います。まずは次の目標、10万フォロワー目指してこれからも頑張ります!

-横尾:本日はありがとうございました。

能條桃子氏プロフィール
一般社団法人NO YOUTH NO JAPAN代表理事。慶應義塾大学経済学部4年。デンマーク留学で若者の政治参加を学び、留学中にあった2019年参議院選挙で、Instagramを中心としたSNSメディアのNO YOUTH NO JAPANを創設。

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(構成・執筆協力 ひがしみすず @misuzu_higashi)

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