合流新党始動

 合流して結成される新しい党だから「合流新党」-考えてみれば、身もふたもない呼称なのだが、そうとしか呼びようがなかった。政党の名前は、その党が最重視する価値であることが多いのに。国民に向けて発する最初のメッセージでもあるのに▲その党名は立憲民主党に、新党の代表は枝野幸男氏に決まった。所属議員は衆参149人。元のさやに戻っただけか、一周まわって新しくなれたか。見極めには時間が必要だが、体裁は整った▲代表選で敗れはしたものの、泉健太氏の「政治が『自助』を叫ぶのは責任放棄」は、言われてみればなるほど、と感じさせる主張だ。もちろん、自民党総裁選で「優位」とされる菅義偉官房長官の「自助・公助・共助」をチクリと攻撃したもの▲野党側の合流協議のさなかに、安倍晋三首相の突然の退任表明が重なり、自民党と野党第1党の顔が期せずして同じ時期に変わる。ただ、このたまたまのタイミングは野党への注目度にも追い風に働いた印象だ。政治の新しい局面が始まるのかも-と▲囲碁や将棋のタイトル戦では、挑戦者が先に着座するのが作法とされる。居ずまいを正し、静かに呼吸を整えて相手を待つ。さあ真剣勝負▲図式がどこか似ている気が…という思いつきが錯覚や的外れでないことを切望しておく。(智)

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