大内氏の栄華とともに開花した画聖 今年、雪舟生誕600年

▲常栄寺 雪舟像

 2020年は、日本の水墨画の礎を築いた画僧・雪舟の生誕600年の節目にあたる。室町時代、西国一の大名大内氏のもと、多くの作品を描き続けた雪舟。山口市内には、常栄寺「雪舟庭」や「雲谷庵」跡など、その制作活動の名残をとどめた場所が各所に伝えられている。生誕600年記念の今年は、さまざまな展示やイベントが開催され、作品やその生き様に思いを馳せるまたとない機会となっている。

 

 雪舟は室町時代に活動した水墨画家・禅僧。1420年に備中国赤浜(現・岡山県総社市)で生まれ、幼少期に近くの禅寺・宝福寺に預けられた。その後、京都・相国寺で賓客を接待する知客を務めながら画僧・周文に絵を学んだが、当時の京都で好まれていた繊細な画風が自身と合わずなかなか頭角を現すことができなかった。

 30代半ばで山口に移り住み大内氏の庇護を受け、29代大内政弘の時代の1467年には、遣明船で日本人画家として初めて明に渡り、中国で流行していたダイナミックな画風の水墨画を学ぶ。作風に自信を得た雪舟は、帰国後に九州地方など日本各地を転々とした後、再び山口に戻り居所「雲谷庵」を拠点とし、1506年に87歳の生涯を閉じるまで、数多くの傑作を残した。

 作庭にも造詣が深く、常栄寺庭園「雪舟庭」(宮野下)や医光寺、萬福寺(ともに島根県益田市)の庭園なども作ったと伝えられている。

 

「大内菱」がモチーフのロゴ

▲シンボルロゴ

 山口市は「雪舟生誕600年関連記念事業」の周知を図るため、シンボルとなるロゴマークを制作。雪舟を庇護した大内氏の家紋「大内菱」をモチーフとして「雪舟」と「600」という文字を抽出。カラーリングは当時の華やかな大内文化を連想させる金色と、大内塗の特徴である「大内朱(古代朱)」をイメージした赤色が使用されている。

 

生誕600年を祝う会場にも 雪舟ゆかりの地を紹介

 生誕600年を祝うイベントは、雪舟や大内氏の足跡が残る場所や、ゆかりの地などを会場に実施される。主な史跡を紹介する。

常栄寺・雪舟庭(宮野下)

 今から約500年前、大内政弘が別荘として雪舟に築庭させたものと伝えられており、1926年に国の史跡および名勝に指定された。

 北・東・西の三方が山林に囲まれ、中央に池泉、南には枯山水が配置されるなど、雪舟の山水画を連想させる風景が眼前に広がる。

雲谷庵跡(天花)

 雪舟が1506年に没するまで創作活動を行ったと言われるアトリエ。弟子の養成に努めながら、代表作「四季山水図(山水長巻)」などが描かれたとされる。

 現在の建物は、1884年に郷土史研究者らにより再建されたもの。部材の一部には、室町時代の古建築部材も使われている。昨年、19年ぶりにかやぶき屋根の一部の葺き替えが行われた。

 

山口市がプロモーション動画を公開

▲動画「大内のお殿様と雪舟」

 雪舟と山口市の歴史的文化資源である大内氏・大内文化のPRをかねて制作されたシティプロモーション動画「大内のお殿様と雪舟」が、9月から山口市ウェブサイトやユーチューブなどの動画配信サービスの広告内で公開されている。動画は、山口市が3月に発行した情報誌「彩都山口」に登場したキャラクターを用い、雪舟の生涯とその歴史がわかりやすくコミカルに紹介されている。

 山口市観光情報サイト「西の京 やまぐち」(http://yamaguchi-city.jp/)内の特設ページでも動画は見ることができ、同特設ページでは関連する各種催しも案内されている。

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