障害者の文化芸術フェスティバルin九州 長崎で開催 県美術館県民ギャラリーなどで17日から

「日本博を契機とした障害者の文化芸術フェスティバルin九州」のポスター(提供)

 障害者の芸術表現を紹介する「日本博を契機とした障害者の文化芸術フェスティバルin九州」(実行委、文化庁など主催、長崎新聞社など共催)が17~26日、長崎市出島町の県美術館県民ギャラリーなどで開かれる。来年にかけ全国7ブロックで展開予定。九州ブロックは本県で開催し▽展覧会▽和太鼓演奏の映像配信▽食のイベント-で構成。同実行委員長補佐の松村真美さん(57)=社会福祉法人南高愛隣会理事=に、開催の意義や障害者の芸術活動などについて聞いた。
 メインの展覧会は、全国の障害者34人(うち本県4人)の絵画など計約260点を紹介する「アール・ブリュット展」。アール・ブリュットとは芸術教育を受けていない人々が独自の発想で作ったアートのこと。近年、障害者の感性、世界観で表現されたアートは国際的に芸術作品としての評価が高まっているが、国内については「まだまだ種まきの段階」と松村さん。
 同展の本県作家の1人で、同会の施設に入所する犬塚弘さん(52)は知的障害者。思っていることをうまく言葉で伝えることが困難だが、一度見た記憶を頼りに酒瓶を忠実に描くことができる。絵は施設で保管され、昨年12月に初個展が開かれた。「個展前後で犬塚さんの様子は好転。作品を通し社会とのつながりができたことが大きい。自分の絵が認められたという意識を持つようになり、制作意欲が湧いたようだった」
 2016年に相模原市の知的障害者施設で入所者19人が殺害された事件では、「障害者は不幸をつくる」「障害者なんていらない」などの犯人の主張や賛同するような声がインターネット上で流れた。「勝手な思い込みで、できない人と決めつけている」と松村さんは強く批判。「障害者が何もできないわけではない。ひそかに温めている特技や強みみたいなものもある。支援員や家族、周囲がそれを引き出し、育んでいけば生きがいにつながる」と指摘する。
 では、どう引き出すのか。例えば家族や支援員らは、障害者が描く絵に対する評価をどこまでできるのか。「福祉事業所だけで取り組むことは難しい。文化芸術面で支援員らを育成する研修会を行政などと連携し実施するなど、社会全体で障害者の可能性を広げていく機運や環境をつくっていくことが必要」
 そのきっかけとして同フェスに松村さんは期待を寄せる。「展覧会は障害者と社会がつながる機会。障害の有無に芸術の境はない。私たちの想像を超えるすばらしい表現や作品を通じて、まずは障害者芸術について広く知ってもらえる場にしたい」

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