鉄道と東京の未来が見えた!? 高輪ゲートウェイフェストのラストを飾る「5 Days CITY」に行ってきました E231系や成田エクスプレス 鉄道ファンには別の楽しみも

会場全景。JR東日本の新サービスを体験できるブースもありましたが、予約が取れず残念ながら見学できませんでした。

今年の鉄道界でビッグニュースの一つが3月14日、山手線・京浜東北線に開業した新駅「高輪ゲートウェイ」でしょう。駅周辺では大規模開発が進行中で、名称通りのゲートウェイ(出入り口)機能を受け持つ新駅です。街開きはまだ3~4年先ですが、JR東日本は新しい街を一足早く体感してもらおうと7月14日~9月6日、駅前の特設会場で「Takanawa Gateway Fest(高輪ゲートウェイフェスト)」を開催しました。催しのラストを飾るイベント「5 Days CITY」(9月2~6日)が開かれたのを機に会場を訪れ、鉄道が創造する未来都市を体感してみました。

車両基地を集約して街づくり

最初に基本を確認しましょう。ちょっと前まで山手線や京浜東北線の電車に乗ると、田町と品川の間に大きな鉄道車両基地が見えました。開設は1930年、当時の名前は「田町電車区」でした。国鉄からJR東日本に移り、名前は「田町車両センター」などに変わりました。面積は約13haで、東京ドーム2個分以上あります。

車両基地は鉄道会社に必要な施設ですが、別に都心の一等地に置く必要はない。都心の土地は有効活用した方が都市の競争力強化につながるわけですから、車両基地を集約して跡地を再開発する。それがJR東日本の「品川開発プロジェクト」です。

東京の方はご存知でしょうが、現在は駅が先行開業した状態で、周囲に何にもない。JR東日本は駅開業を東京オリンピック・パラリンピックに間に合わせて世界にアピールしようと考えたのですが、残念ながら大会は1年延期。そこで一般の人たちに新しい街づくりをPRしようと、フェストを企画しました。

JR東日本は電車(鉄道)だけじゃない

JR東日本はフェスト会場に千客万来を期待しましたが、新型コロナウィルス感染症の影響は大きく私の場合、インターネットの入場予約は当日でも間に合いました。5 Days CITYの目的は資料によると、「品川開発プロジェクトの街づくりを情報発信すると共に、街の雰囲気をいち早く体感してもらう」。会場内は、プロジェクトの概要を紹介するシアターゾーン、共創コンテンツが展示された体験ゾーンなどに分かれていました。

シアターゾーンでは、プロジェクトに携わる若手社員中心のトークショー(毎日開催。午前中の初回はライブ、2回目からは録画放映)があったのですが、担当社員は「鉄道会社のJR東日本がなぜ街づくりに取り組むのか」を力説していました。

確かに一般常識では、「JR東日本は電車を走らせる会社」でしょう。でも東京も人口減少が本格化する今後の時代、住んでみたくなる、働きたくなる、行ってみたくなる沿線街づくりは鉄道会社にとって実は最需要な経営課題なんですね。

品川開発プロジェクトは日本を代表する国際拠点に成長する可能性十分。注目したいのがアクセスの良さで、東京駅(新幹線)へも、品川駅(リニア中央新幹線)へも、羽田空港へも移動が便利。国内各地と世界の結節機能を担います。

展示を見る来場者。実物、パネル、デジタルサイネージなどが分かりやすく配されています。

5 Days CITY会場の様子、そして催しのいくつかを報告しましょう。JR東日本はパートナー企業と共創で生み出す新しい価値を、「TokyoYard PROJECT」(東京ヤードプロジェクト)と総称します。ヤードは車両基地からの発想でしょう。イベント自体のキーワードは「Playable」。「実体験(Play)できる(able)メニュー」を揃えたそうです。うーん、それにしても英語ばっかりですね。

会場には博覧会のようなブースが並び、来場者は移動しながら見学・体験します。最初は品川開発プロジェクトのイメージビデオと模型で、ここだけ撮影禁止でしたが後は写真も自由でした。

メニューの一つが「食」。案内板には、「人々が生きるための根本にある食は重要なテーマの一つ。新しい街ではPlayableな食が持続可能なビジネス・文化を創り上げたり、多様な来街者の交流を生んだり、新たな価値を創造したりするきっかけになるでしょう(大意)」とあります。要するに、「食も品川開発プロジェクトの重要な構成要素」なのでしょう。

会場北エリアには、「日本の食文化・伝統工芸の〝いま〟」をテーマにフード&クラフトマーケットがあり、B級グルメなどが味わえました。

さらに、一角にはアップライトピアノが置かれます。説明板のフレーズは、「100年先の豊かさとは何でしょう。私たちは変わらない豊かさの一つに音楽があると考え、ピアノを作ろうと思いました(同)」。最近話題の「駅ピアノ、ストリートピアノ」を先取りしているのかもしれません。

アップライトピアノはシールで装飾。最終日にはコンサートも開かれたそうです。

ブース入り口では来場者にシールが手渡され、「新しい街でやりたいこと」を書いてもらいボードに張り出します。これもPlayable。そういえば、こんなシールもありました。「新しい街で特大の鉄道フェスティバルを開きたい」!!

ガラス張りの駅から鉄道車両を眺めよう

高輪ゲートウェイ駅に隣接した車両基地には215系電車が留置されていました。かつての通勤ライナーのエースも最近は待機する日々が続きます。

鉄道フェスの発想は、あながち妄想ではありません。高輪ゲートウェイ駅東側には車両基地というか留置線があり、運用を待つ電車が眺められます。橋上の駅はガラス張りなので眺望は良好。品川インターシティの高層ビル群を背景に、E231系やE259系「成田エクスプレス」を見るのも一興かもしれません。

駅開業前も山手線や京浜東北線の車内からは田町センターの車両群が見えたのですが、あくまで一瞬のこと。最近の鉄道車両基地は駅間か駅から離れたところにあるのが普通なので、その点でも高輪ゲートウェイ駅は鉄道ファンに貴重な存在なのかもしれません。

文/写真:上里夏生

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