快適すぎて住みたくなる? 三菱ekクロススペースは移動できる「もうひとつの家」

日本の軽自動車市場で圧倒的な存在感と販売台数を誇る「スーパーハイトワゴン」。その中の1台である三菱ekクロススペースに試乗してみました。もはや登録車を超えるのでは思わせる装備の充実度には驚くばかりです。


人気のSUVテイストを付加

eKスペースは日産のルークスと兄弟車の関係にあります。都会的な雰囲気を持つルークスにはスポーティな「ハイウェイスター」を設定しますが、ekスペースにはあえて同じ路線は設定せずに同社の強みであるSUVテイストを取り込んだ「クロス」という車種を開発、ハイトワゴンのeKクロスに続き設定されたのが今回紹介する「eKクロススペース」です。

ライバルがひしめき合うこのマーケットでの差別化は、見方によっては高級車以上にシビアです。特に軽自動車の場合、ボディサイズに上限がありますのでその制約の中で個性を主張する必要があります。

その点では同社のデザインコンセプトである「ダイナミックシールド」を採用、垂直なメッキバーと水平方向のグリルを組み合わせた存在感あるデザイン。実際、パッと見ると軽自動車には見えないくらいインパクトは十分で、押し出しの強さも申し分ありません。

重要なリアドアの開口寸法

この手のクルマは前述した限られた寸法の中でどれだけ空間を確保できるかが重要なポイントです。その点ではライバルに勝つためのいくつかの機能を搭載しています。

まずあえて後席に目を向けるとスライドドアの開口部が広いことがわかります。その寸法は650mm。旧型が555mmだったことから考えても一気に拡大しました。当然乗降性には優れ、ちょっとした荷物をドア側から積む際にも便利です。また後席に設置したチャイルドシートへ子供をだっこした状態で載せ、シートベルトを装着する場合にもこの広さは重要です。さらにGとT、2つのグレードには両手が塞がった状態でもスライドドアの下に足元を入れるだけで自動でドアが開く「助手席ハンズフリーオートスライドドア」も標準装備します(運転席側も5万5,000円のメーカーオプションで設定)。

ちなみに最大のライバルと言えるホンダN-BOXも640mmなのでわずかながらそれを超えた格好ですが、要は現在の軽自動車のスライドドアにはこの位のサイズが必要だということです。

圧倒的な室内空間が最大の魅力

後席に乗り込むと驚くのがその空間の広さです。ekシリーズは旧型よりホイールベースを65mmも拡大しました。これが圧倒的な空間の実現に寄与しているわけですが、室内高はライバルと同等でも足元の空間がとにかく広く、足が余裕で組めるほど。その秘密はこのクラスではNo.1となるシートスライド量にあります。

開放感も含め、リアの居住空間は圧倒的な広さを持ちます

320mmのスライド量、さらに左右独立してスライドしますので、乗車人数や荷物の種類に応じてシートアレンジが多彩に行えます。たまに「そんなアレンジ機構などは自分で工夫すれば良いので考えすぎだ!」という意見も聞かれますが、何度も言うとおり、軽自動車は寸法の制約があります。税金や整備などの維持費の安さと同時に少子化により軽自動車のニーズが高いことはいまさら説明の必要はありませんが、だからこそ登録車と同じ安全性能や使い勝手を実現する必要があります。まさに軽自動車は世界に誇れる「日本の技術の塊」とも言えるわけです。

快適すぎて住みたくなる

収納類もとにかく豊富です。ちょっとした小物類を置く場所に困ることは日々の生活で良くあることですが、カップホルダーや携帯電話を置くスペース、さらに充電用のUSB端子は助手席シートの背面に標準装備。この辺は時代のニーズをしっかり掴んでいます。

一番良いと感じたのが旧型から継続採用されている後席用のサーキュレーターです。スーパーハイトワゴンの場合、特に室内空間が広いことでエアコンから出る空気を満遍なく循環させる必要があります。また夏場の場合、炎天下に駐車した室内の温度を短時間で下げる効果もあります。

ekクロススペースの場合、GとTにオプションとなりますが、空気清浄機能を持つシャープの「プラズマクラスター」の搭載や後席側から操作ができるようになった点が進化ポイントです。

少し長い距離を乗ってみて感じたことは、昨今のコロナ禍における在宅勤務ではありませんが、クルマの中で「在車勤務」が行えるのではないかとひらめいてしまいました。一定間隔の空気循環等は十分に行うという絶対条件付きですが、ノートパソコンが1台あれば仕事はできますし、スマホの充電も可能、さらに疲れたらシートを倒せば簡易ベッド的に使うこともできます。

家族のドライブやレジャーにも十分使えるわけですが、1人になりたい時というものもあります。まさに移動できるもうひとつの家的な使い方も楽しめるのではないでしょうか。

先進技術が運転をサポート

クルマの基本性能に関しても昨今の先進運転支援システムも含め充実した内容を持ちます。

衝突被害軽減ブレーキや踏み間違い衝突防止アシスト、標識検知機能など合計8つの安全装備は「e-Assist」として全グレードに標準装備。

後方の視認性を高めてくれるデジタルルームミラーもオプションです

また冒頭に述べたように日産ルークスに設定される「プロパイロット」もekクロススペースでは「マイパイロット」として設定されます。

マイパイロットには高速道路走行時に一定速度をキープするACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)のほか、車線維持支援機能であるLKAもセットでメーカーオプション装着できます。

実際試乗して感じたのは他社のACCに比べ、加減速のフィーリングが非常に自然という点です。その秘密は単眼カメラにプラスしてミリ波レーダーも併用することで2台先のクルマの動きも検知できる最新技術を搭載しているからです。

またマイパイロットはノンターボのGにもオプションで装着できますが、高速道路を使うのであればやはりターボ付きのTがオススメです。

エンジン回転数も抑えられることで燃費はもちろん、さらに室内の静粛性にもプラスに働きます。

オプション選びはしっかり行いたい

これ1台で満足できる万能軽自動車とも言えるekクロススペースですが、実は基本的な安全装備以外は比較的後付けのできないメーカーオプションで設定されています。

実際今回試乗したテスト車両には2トーンボディカラーを筆頭に9インチカーナビやドラレコ、デジタルルームミラーを含む「先進安全パッケージ」などこれ以上付けようが無いほどの内容でした。

ゆえに車両価格は270万円を超える結果に。さすがに軽自動車にこれだけの出費を行うのは現実的ではありません。前述したように街中メインであればノンターボのG、高速に乗る機会があればTをまず選び、そこから必要なメーカーオプションを選んでいくことをおすすめします。特に安全系装備を優先させることが重要ですのでその部分を含めディーラーで相談することをオススメします。

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