プロ14年目の38歳がチームに欠かせないワケ 鷹・高谷が貫く献身のための準備

3ランを含む4打点と活躍したソフトバンク・高谷裕亮【写真:藤浦一都】

恒例の「鷹の祭典」が「高谷の祭典」に、指揮官も「欲しいところでしっかり打ってくれた」

■ソフトバンク 8-4 西武(12日・PayPayドーム)

ソフトバンクの高谷裕亮捕手が12日、本拠地PayPayドームでの西武戦で2安打4打点の活躍を見せ、チームの5連勝に貢献した。プロ14年目にして初の1試合4打点。この日から始まった恒例のイベント「鷹の祭典」は、38歳のベテラン捕手の躍動によって「高谷の祭典」と化した。

最初の打席は2回。2死走者なしから、4試合ぶりにスタメンに復帰した松田が二塁打でチャンスメーク。続く高谷は追い込まれながらもセンター前に弾き返して、貴重な先制点。「何とか前に飛ばそうと思っていましたが、タイムリーになって良かったです。とにかく次に繋ぐことだけを考えて、それに集中してやっているんで」と振り返った。

3回には、川島の四球をきっかけにグラシアルの2点打などで3点を追加し、2死二、三塁の好機で再び高谷に打席が回ってきた。ここでも簡単に追い込まれながら、4球目の高めの変化球を振り抜くと打球は右翼のテラス席へ着弾。序盤で試合を決定づける2号3ランに、一塁ベースを回ったところで大きく拳を突き上げた。

プロ14年目で節目の通算10本塁打目。相手はチームにとって“初もの”となる左腕のノリン。「暖簾に腕押し」は手応えがないことを意味する言葉だが、「ノリンにダメ押し」は手応え十分の千金弾だった。

「うまく畳んで打てた。狙ったというよりも反応です。自分の中でも自信になります。4打点は出来過ぎです。いい追加点にはなったと思います」と高谷。力強いガッツポーズとは裏腹に少し控えめに語った。

工藤公康監督も高谷の3ランを「欲しいところでしっかり打ってくれたし、あそこで引き離せたのは良かった」と絶賛。さらに、8月26日のオリックス戦(PayPayドーム)で高谷が放った今季1号同点2ランも引き合いに出し「投手を助ける一本を打ってくれる。狙い球を理解して打っているのも捕手らしいなと思います」と称えた。

先発・武田を好リードも「5回、6回に点を与えたのは反省点」

今シーズンは1学年上の和田とベテランバッテリーを組んできたが、この日の武田とのバッテリーについて、工藤監督は「バッテリーコーチとヘッドコーチが話をして決めた。以前からの相性とかもあるのでね」と話した。

武田は4回まで無失点に抑えていたが5回に1本、6回には2者連続弾を浴びて3点を献上。リードした高谷も「5回、6回に点を与えたのは反省点」と、守りの面では決して納得はしていないようだ。

スタメン機会は限られているとはいえ、甲斐がスタメンマスクの試合でも“抑え捕手”として途中出場することも少なくない。ベテランならではの高い経験値を持つ高谷は、どんな時でも捕手としての準備を欠かすことはない。

「(試合に)出ようが出まいが、やることは欠かさずに。体調面で若い時のようにいかないこともありますけど、最低限やることだけは怠らずに準備しているつもりです。そこは変わらずに続けていこうと思います」

これまで指の骨折や膝の故障など幾多の困難に直面してきたが、高谷は「とにかくチームの力になりたい」という意欲を薬に代えることで、予想を超える早さで1軍に復帰してきた。その気持ちの強さを含めて、3年ぶりのリーグ優勝を目指すチームにとっては不可欠な存在と言えるだろう。

これまでのシーズンの最多本塁打は2008年と2016年の2本。今後、自己最多となるシーズン3本目が出たならば、きっと価値ある1発になることだろう。(藤浦一都 / Kazuto Fujiura)

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