ヨット寄港で地域振興を 新上五島・奈良尾漁港 長崎県や町、観光拠点化構想

新上五島町に寄港したヨット=有川港

 新上五島町南部にある奈良尾漁港をヨットの寄港地としてPRしようと長崎県や町が構想している。町外から訪れたヨット愛好家に観光などを楽しんでもらい地域活性化につなげる狙い。周知の方法などを今後探っていく。

 同漁港は県の管理で、上五島地区と五島市や長崎市を結ぶ海の玄関口。近海は五島灘や東シナ海の好漁場に恵まれ、漁船団の基地として栄えた。
 しかし、町によると、同漁港を利用していた漁船は1985年に約700隻あったが、2018年には114隻まで減少。漁船数減に伴い空いた係留スペースを活用し、ヨット誘致の検討を進める。

新上五島町・奈良尾漁港

 県によると、同漁港へのヨット寄港は年間数隻程度だが、県内では平戸市や壱岐市に年間100隻超の実績がある港もあるという。
 昨年11月、同町でヨット・ボートの係留場としての活性化を協議する会合があり、長崎、鹿児島、沖縄各県の漁港担当者が意見交換した。県は会合で課題として挙がったヨット係留可能な場所の情報周知と、地元受け入れ態勢の構築を本年度中を目途に進める方針だ。
 係留場所の情報に関しては愛好家同士の口コミが多いのが現状。県はヨット利用者にとって船を係留する場所が分かりづらいことが課題とみており、ホームページなど情報発信の方法を模索する。
 県から権限委譲され、係船料徴収に当たっている町の担当者は「無届けで係留し、出港するケースもある。事前の入港届け制度をどう周知するかも大切」と指摘する。
 ヨット利用者は寄港の際、食料や燃料の補給だけでなく、入浴する場も必要としている。奈良尾地区にはリゾートホテル「マルゲリータ」に併設された温浴施設があり寄港地の条件を備えている。同地区にはレンタカー業者もあり、県五島振興局上五島支所の担当者は「島内観光の拠点となり得る」と期待する。
 元町観光課長で、「マルゲリータ」の中島紀昌総支配人は、これまでもヨット利用者のニーズがあったとして、「上五島は九州各地から来るには、程よい距離。おいしい食材を楽しんで帰った後、島をPRしてもらえれば」と話す。
 大阪府守口市の会社経営者、大東洋さん(77)は30年以上のヨット愛好家。6月下旬、有川港から友人たちと上五島入りし、船内で3泊した。「海水浴場など再訪したくなる観光スポットが多かった。入浴施設や近くで食事できる店に加え、嵐が来ても船が守れるよう浮桟橋があればいい」と要望した。

新上五島町南部にある奈良尾漁港(県提供)

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