熾烈な巨人の正捕手争い 専門家が語る起用法と“強打の捕手”の成長曲線

巨人・大城卓三【写真:荒川祐史】

大城は打率3割キープと勝負強い打撃、ヤクルトなどでプレーした野口寿浩氏が評価

首位を走る巨人において、大城卓三捕手の存在が色濃くなっている。12日の本拠・ヤクルト戦では6回に貴重な同点となる8号ソロ。13日の同カードでは4打数2安打、マスクでは投手陣を巧みにリードし、攻守でチームを勝利へと導いた。ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜で計21年間活躍し、18年まで2年間、ヤクルトでバッテリーコーチを務めた野球評論家の野口寿浩氏は「打者をしっかり見て配球ができている」とリード面での成長を評価。打てる捕手として「将来的に阿部の域までいくかもしれない」と語った。

打てる捕手がバットでも魅せている。9日の中日戦(ナゴヤドーム)では原監督が川上哲治氏と並ぶ通算1066勝を導いた決勝の7号ソロ。2試合はベンチとなったが12日の試合では3ー4で迎えた6回。ヤクルト中澤の外角へのスライダーをセンター右に運ぶ8号ソロ。原監督がバットでも期待を寄せる男が、試合を振り出しに戻した。この一打について、野口氏はこう解説する。

「ドンピシャのタイミングだった。スライダーを完全に狙い撃ちした。大城は長打力のある打者。ヤクルトも代打で出てきた中山が打ったが、彼はまだ打撃が粗い。でも、大城には中山のような粗さはない。そんなに無理をしなくても球が飛んでいく。巨人の捕手の中ではバッティングはダントツ。まだ阿部の領域にはいっていないが、将来的にはそうなるかもしれない」

この日、巨人がヤクルト打線から奪った三振は13。終盤は1点のリードを守り切り、チームを勝利へと導いた。そして野口氏は、相手打線が配球の傾向を分析してくる中で、前回今村が投げた5日の阪神戦と攻め方を変えたことを評価。リード面でも大城の成長を認めた。

2軍では小林誠司が復帰へ向けて調整中、炭谷含めた今後の起用は

「リードに、これでいい、というのはない。同じことをやるのも手だし、相手の出方を予測してそれを利用するのも手。今村は前回登板で左右どちらの打者に対しても、内角を攻めていた。当然ヤクルトベンチには、先乗りスコアラーから、内角を攻めてくるという情報も入っている。それを踏まえ、打者の反応をしっかり見ながら組み立てていた。打者が踏み込んできた時は内にいくし、要所では内角を使っていたが、無理していかない場面もあったし、常に内角攻めという訳ではなかった。打者をよく見ているなと思った」

巨人では今季、昨年までレギュラーだった小林が序盤にケガで離脱。原監督はここまで、実績のある炭谷よりも、長打力のある大城を、よりスタメンで起用してきた。大城にとっては正捕手の座を掴む大きなチャンス。では、今後大城が定位置を確固たるものにしていくためには何が必要になるのだろうか。野口氏は言う。

「守備は悪いとは言わないが、ワンバウンドを止める技術、スローイング、キャッチングなど、まだまだ良くなっていける要素はたくさんある。今年は菅野と組んでリードを覚えたことで、ほかの投手の時もやっていけている。投手の投げる球が悪くても、何とか引っ張っていこうとしているのが見て取れる。このまま続けていけば、いい捕手になる」

すでに小林は8月下旬に2軍戦で復帰。1軍昇格のチャンスを待っているが、野口氏は、今季はこのまま大城に正捕手を任せるべきだと考えているという。

「今年は小林は2試合しか出ていない。このぶっちぎりの状況を作っているのは、大城と炭谷の2人だし、このままメーン捕手は大城でいくと思う。今後、日本シリーズを考えたら、小林を3番手捕手としてベンチに入れ、終盤、俊足の代走が出た時に(強肩捕手として)使ってくる場面はあるかもしれない。ただ、先発投手が投げていたら、バッテリーのコンビを崩してまでそれをやる必要はあるのかな? とも思う。今年は大城と炭谷でここまでやってきているし、代える必要はないのではないか」

今季、ここまで57試合に出場し、打率.313、8本塁打、27打点と結果を残している大城。後半戦も攻守で結果を残し続ければ、打てる正捕手としての地位も強固なものになっていくはずだ。(Full-Count編集部)

© 株式会社Creative2