「居抜き」の政権移行

 店舗や旅館、飲食店などの不動産取引で、前の使用者の家具や調度品、空調や水回りなどの設備を残したまま、物件を売買したり、賃貸借したりすることを指す「居抜き」という言葉がある▲不動産取引指南のサイトによると、物件の買い手や新たな借り手にとっては、簡単な手直しだけで、すぐに商売を始められるのが居抜きの利点だ。初期投資を抑えられる結果、回収のスピードも上がることになる▲もちろんデメリットも。引き継いだ設備が予想以上に劣化していた場合は、当然、思わぬコストが生じることになる。前のお店が撤退するのは、必ず何かしらの事情があるのだし、そのイメージを引きずってしまうことがあるのも考慮すべき要素-とか▲さて、当地で“長らくご愛顧”いただいた…かどうかは議論がありそうだが、このたび閉店の安倍政権、どうやら「居抜き」の政権移行が確定的▲店主は交代するが、基本政策はそのまま踏襲されそうだし、党運営の要も再任が濃厚のようだ。新規出店を相乗りで支える派閥の思惑は気になる。新しい店主はどんな独自色を出せるか▲肝心の新店主も決まらぬうちから、何だか早手回しな原稿になってしまったが、自民党総裁選はあすが投開票。ハプニングやサプライズの余地はどこかに残っているだろうか。(智)

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