今や世界にファンが多いアイスクリーム!長沼町のあいすの家の物語

香港、台湾、シンガポールと、海外にもお店を構える「あいすの家」。本店は、のどかな田園風景が広がる長沼町。店内にも行列ができるほどの人気店で、10年以上札幌市内から通っているお客さんもいるほどです。

「コストがかかってもおいしいものを」生乳100%ソフトクリームの走りを作った創業者

現在社長を任されているのが、2代目の山口幸太郎さん。酪農機器の販売をしていた父・山口真巧さんが長沼町の高品質な牛乳にほれ込んで1994年に創業した「あいすの家」を、息子の幸太郎さんが引き継ぎました。

その後、メディアで取り上げられたことがきっかけとなり、現在では1日3500人が訪れる人気店となり、当時は北海道で一番売れているソフトクリーム店に。
これだけ話題になった理由は、当時はめずらしかった「生乳をそのまま使う」という製法。

父・真巧さんはいろいろなことに挑戦したいタイプで、当時生乳からソフトクリームを作っていたお店がほかになかったわけではないが、脱脂粉乳を使ったものが一般的で、生乳100%のソフトクリームは珍しかったんだそう。

牛乳の風味を引き立てた「ソフトクリーム(バニラ)レギュラー」は、道産生乳100%ソフトクリームブームの火付け役となり、現在北海道で主流となっている牛乳ソフトを広めるきっかけになりました。
創業当初から「安心」「安全」なおいしいものを提供していくということは変わっていません。

幸太郎さんは他の食品メーカーで開発室での勤務を担当していたことがあり、その開発の中身は、コストダウンに関することでした。
しかし父の真巧さんは、コストは考えず、ひたすらおいしいものを提供してきたのだといいます。
父が真逆のやりかたをしていたこともあり、幸太郎さんにとって真巧さんは非常に魅力的に映っていたようです。

コストよりも良質な食材に重きを置く創業者の真巧さんがまず取り組んだのは、ソフトクリームに合う高品質な生乳を近隣の牧場から毎日直送してもらうこと。
広大な大地で育てられた牛の牛乳は、高脂肪で天然の甘みがあり、ソフトクリーム作りに適していているんです。
現在は千歳産の牛乳を使用し、牛乳は工房内のタンクで貯蔵し、1日最大11トンまで受け入れが可能なんですって。

「喉が渇かない、飲み物のような口当たりのソフトクリームを目指している」と話す幸太郎さん。
飲み物のような口当たりにするため工夫していることは、加える生クリームの量を少なめに調整し、甘さ控えめにすること。
そうすることで、なめらかさが引き立ち、あきのこない味になるんですって!

また、通常は120℃で3秒殺菌する高温殺菌が主流のところ、熱で牛乳の質が変わらないよう、あえて68℃で30分殺菌し、じっくり過熱をすることで風味を損なわせないよう工夫しています。

ハネものフルーツを使用して…農家さんとWin&Win;の関係で作るフレーバーソフト

余市の砂川農園の「紅国見」という桃を使った「プレミアム 白桃」。桃本来の甘さと素材の滑らかさがしっかりと感じられますよ!
風味を生かすことを第一に考えるあいすの家の製法は、旬のフルーツを使ったフレーバーソフトにも表れています。

果肉は完熟のものを使用していますが、素材のフルーツは市場には出ないハネモノを仕入れてソフトクリームにしています。
あいすの家のソフトクリームは、25年以上、農家さんと助け合い、お互いを高めあってきたからこそ作り得た食材の結晶なのです。

選べる楽しみいっぱい♪ラインナップは100種類!素材の味を生かしたジェラート

ソフトクリームと並ぶ店のもう1つの名物が「ジェラート」。こちらもまた、素材の味がしっかりと生かされた、意外性があって魅力たっぷりなものばかり。
常に20種類、期間限定を含めると100種類以上のフレーバーを展開しています。

バレンタインの時期には、チョコレートの産地や味の種類の違いだけで10種類のジェラートをラインナップしたことも。
良い素材があればチャレンジしてみて、いつ来ても違うものがあって足を運んでもらえるものを目指しています。

「素材の味がわからないジェラートは作ってはいけないので、目をつぶって食べても素材の味がわかるジェラートを作るよう心掛けている」。そう話すのは、専務で幸太郎さんの弟の貴巨さん。

ジェラートは、生のフルーツでも食感や風味を損なうことがなく表現できるという利点を生かして作っています。

ヨーロッパ産のはちみつと、小麦粉、卵など道産の素材を使った「ながぬまロール」。実はこのロールケーキ、ジェラートの材料にもなっているんです。

クッキークリームのアイスクリームからヒントを得て、イチゴのソースを加えてショートケーキ風にアレンジした「苺ショートジェラート」。
自社工場で作った製品同士を掛け合わせたユニークなフレーバーです。

北海道食材を広めるために♪道内外のレストランやシェフとのコラボ商品を販売

北海道の食材を使った商品を作ろうと、仲間のパティシエとともに、スイーツ会社「キャンディス」を設立した貴巨さん。

キャンディスで販売している「キャンディスアイスキャンディー」。1つのテーマを決め、皆で知恵を出し合って商品開発を進めています。
ものづくりをする上で固定観念が一番よくないので、いろいろな知識が入り、すごく新鮮な気持ちでやっているそう。

そんな中、貴巨さんが取り組んだのは、問題となっている食品ロス解消のために、有名ホテルグループとコラボした「TSURUGA いちごバター」も開発。
東京の一流シェフとタッグを組みました。

「北海道を盛り上げたい!というのが1つの思いなので、日本全国、海外にも、あいすの家の商品を持って行きたい」と話す貴巨さん。
その思いが形になったのが、海外への店舗出店でした。現在は、台湾、香港、上海、韓国、ベトナム、シンガポールに、道産食材や商品を輸出しています。

こうした取り組みが評価され、2019年に国から「食料産業局長賞」を受賞。しかし、
貴巨さんの挑戦はまだまだ続きます。
「ただおいしいものを作ってうるのではなく、そのストーリーはどのようなもので、どういう思いで作っているのか。農家に行くと、こだわりも思いもすごく強いので、その思いに応えられる主賓を作りたい」と、貴巨さんは話していました。

【あいすの家】
住所:夕張郡長沼町西11線南6
電話番号:0123-88-0170
営業時間:午前9時30分~午後6時(11月~2月は午後5時まで)
定休日:11月~2月は水曜日(予定)

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