個人を重んじ、自然と共存する。カナダの幼児教育

協調性重視か個人主義か

 日本と同じく。カナダの幼児教育でもレッジョ・エミリア、シュタイナー、モンテッソーリなど、園の方針によって様々な教育方法が取り入れられていますが、ここでは日本と違う点をいくつかご紹介していきたいと思います。

  まず、日本では協調性を重視した集団保育が一般的であるのに対し、カナダの園では子供たちの個人のペースを重視したスタイルが一般的です。

  例えば、日本と同じくアートや制作の時間もありますが、椅子に座ってみんなでいっせいに同じ制作物を作りましょう、という感じではなく、他の遊びをしたい子は遊び続け、制作に興味のある子は椅子に座って取り組む、といった具合に、それぞれのペースを重視して進められることが多いです。特に強制されることもなく、興味のあるときだけ参加する、というスタイルが一般的です。

 子供の遊びに介入しない海外保育士 

 日本では、外遊びの際、保育士は子供と一緒に遊ぶのが一般的だと思います。できるだけ声がけして、子供の遊びを広げるように工夫します。「こう遊んで欲しい」という保育士の理想像に近づけるために、遊びを誘導するように声かけをしています。

  一方、カナダでは、基本的に遊び方を手取り足取り教える事はなく、保育士は子供たちを見守る事に徹するのが一般的です。子供たちが元気に遊びまわる中、保育士は立ったままだったり、園庭をウロウロしたり、保育士同士で話し合っていたり、一見サボっているようにすら見える関わり方ですが、それは2つの考え方に基づいています。

  1点目は、子供の安全を十分に確保するため。子供同士のケンカが発生したときや危険な行動をしているときなどに、すぐに対応できるように子供の様子を全体的に見守る事に徹します。

  2点目は、大人がアイデアを出して遊び方を教えてしまうと、子供たちが自分の頭で考えなくなってしまうと考えられているからです。大人が子供と一定の距離をとる事で、子供同士のコミュニケーションを生み出す事ができます。どういう風に遊んだら楽しいか、子供たちが自分自身で工夫しながら考えて遊ぶ事で、想像力が養われると考えます。

  また、提供されるおもちゃも、遊び方が決まった製品化されたおもちゃではなく、どんな風にも創意工夫で遊べるような自然の素材や廃材などを利用したものが多く使われています。

自然との関わり方

  カナダでは多くの人がキャンプ、カヤック、ハイキング、といったアウトドアアクティビティを趣味としています。それもそのはず、子供の頃からかなりワイルドに自然と関わっているからです。特に秋以降、雨の多いバンクーバーでは、ほとんどの子供が持っているのがこの「マディバディ」と呼ばれる完全防備のレインジャケットです。ツバ付きのフードで頭の先から足元まですっぽり覆われ、これに長靴を履けば土砂降りの雨もなんのその。雨の日でも長時間、泥んこになって遊ぶ子供が多く見られます。小さな頃から、あるがままの自然に触れ、受け入れていくことで、心身ともにタフさが身につくのかもしれません。

© 株式会社メディアシーク