【レースフォーカス】ポールスタートのビニャーレス、失意の6位/クアルタラロがピットインした理由:MotoGP第7戦

 レコードブレイクタイムでのポールポジション獲得。MotoGP第7戦サンマリノGPで、マーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)は優勝争いを展開するだろうと思われた。しかし、ビニャーレスは序盤からポジションを落とし、6位でチェッカーを受けた。

 フリー走行や予選で上位につけても、安定したペースを刻んでいても、決勝レースでポジションを落としてしまう。ビニャーレスは特にここ数戦、そんなレースに苦しんでいる。要因は異なるようだが、第7戦サンマリノGPでも同様だった。金曜日のフリー走行1回目から最速タイムを叩き出し、予選ではオールタイムラップ・レコードを更新するタイムでポールポジションを獲得した。

 今年、再舗装されたミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリの路面はグリップが向上した反面、バンプの多さを訴えるライダーもいた。しかしビニャーレスは「バンプでも、バイクはうまく機能している」と語り、レースシミュレーションを行うフリー走行4回目では2番手タイムをマークしていた。

 しかし、いざレースが始まると、ビニャーレスはポジションを下げ、レース中盤には7番手付近を走行した。その2ポジションほど後方を走っていた中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)は、優勝争いをしているはずのビニャーレスの青いバイクが前方に見えて驚いたという。中上は「レース中盤は苦戦していたようですが、終盤にはペースを取り戻したようです」と、そのときのビニャーレスの様子について語った。

 中上が語るように、ビニャーレスはレース終盤になってペースを回復している。ベストラップの1分32秒741は、25周目という27周のレースも終わりに近い周回で記録されたものだった。なぜビニャーレスは序盤に順位を落としたのか。レース後に自身が語ったところによれば、リヤからのフィーリングが十分ではなかったことがその理由だったようだ。

「説明が難しい」とビニャーレスは苦しいレースを振り返る。

「他のライダーと同じようにモチベーションを維持することがとても難しいよ。週末の間に、70回もライディングスタイルを変更しないといけない。レースでは、同じ問題が起こる」

「フリー走行1回目と予選Q2で考えるなら、僕たちはトップ3にいた。たぶん、リズムもベストだった。でも、どうしてこういう結果になったのか説明がつかない。プラクティスではうまくいっていた。それなのに、レースではバイクが機能しなかった」

 ビニャーレスは全ライダー中ただひとり、決勝レースでリヤにハードタイヤを履いていた。しかし、そのタイヤ選択について、ビニャーレスは問題なかったと考えている。決勝レースのコンディションを見てみると、気温が29度、路面温度が42度。この週末午後の時間帯の気温、路面温度と比べても、大きな変化はない。

 Moto2クラスのダンロップタイヤでのレース後は路面のグリップが変わると言われており、第2戦と第3戦のヘレスでは、そのグリップの変化に対する声が挙がってはいた。しかし、ビニャーレスはそうした要因を問われても、少なくともレース後の取材の段階ではそれを理由に挙げることはなかった。

「レース終盤では、32秒7を記録した。24周走ったタイヤでね。(レースの)ファステストラップに近いタイムだったんだ。だから、問題はバイクの方にあるんだと思う」

「本当にわからない。今朝は路面温度が19度で、僕は33秒1を記録した。とても使い込んだハードタイヤでね。タイヤは正しい選択だったと思う」

 ビニャーレスは、オーストリアでの2連戦となった第5戦ではクラッチのトラブルが発生し、第6戦ではブレーキにトラブルが生じて、ストレートでの加速状態からノーブレーキでマシンから飛び降りた。確かに、発生しているトラブルはひとつではないが、15日に行われるテストで、少なくとも今回のレースの不振に対する改善策を見つけることができるか、注目したいところである。

2020年MotoGP第7戦サンマリノGP マーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)

■レース終盤にクアルタラロがピットインをした理由

 そして、フロントロウに並びながらリタイアという結果に終わったファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)にも触れておきたい。第7戦サンマリノGPを迎えて、チャンピオンシップのランキングトップだったクアルタラロ。しかしここ数戦は表彰台を逃している。

 そして、サンマリノGPの決勝レースでは3番グリッドからスタートし、8周目に転倒。これは自身のミスだったと、クアルタラロは認めている。

「スタートはよくなかったけれど、マーベリックをオーバーテイクしたとき『よし、ジャック(・ミラー)をつかまえるためにプッシュしよう』と思ったんだ。でも、最終ラップみたいに攻めてしまった。まだ19周も残っているのにね。僕のミスだ」

 クアルタラロは転倒後にマシンを起こしてレースに復帰し、20番手付近を走っていたが、18周目にピットイン。その後再びレースに戻り、2回目の転倒を喫してリタイアとなった。不可解にも思えるピットインの理由は、エンジンの不調を感じたからだった。

 このピットインの理由は気になるところだ。クアルタラロはシーズンで5基使えるエンジンのなかでもサンマリノGPまでに4基を使用しており、さらに同じヤマハのエンジンで戦うビニャーレスやフランコ・モルビデリ(ペトロナス・ヤマハSRT)のエンジンはすでに5基中1基がアロケーションから外れている。ただ、クアルタラロによればエンジンには問題なかった、という。

「エンジンに変な感じがあったからなんだ。ギアとエンジンを入れただけで、パフォーマンスが少し落ちた。でも、問題はエンジンにはなかったよ」

 クアルタラロはこのリタイアにより、チャンピオンシップのランキングトップから2番手に後退。アンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)が代わってトップに浮上した。

 乱世さながらの混戦を見せる2020年シーズンのMotoGPのなかで、ふたりのヤマハライダー、ビニャーレスとクアルタラロはシーズンをけん引することができるだろうか。

2020年MotoGP第7戦サンマリノGP ファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)
2020年MotoGP第7戦サンマリノGPでランキングトップに浮上したアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)

© 株式会社三栄