リカレント教育を支援する教育訓練給付金制度とは? 学費の他に生活費支援があるケースも

教育訓練給付金は、雇用保険に加入している在職者・加入していた離職者が資格取得講座などの教育訓練を受ける際に、費用の一部が支給される制度です。教育訓練の内容によって、給付金額が決められており、「一般教育訓練」は最大10万円、「特定一般教育訓練」は最大20万円、「専門実践教育訓練」では年間最大40万円(または56万円)の給付が受けられます。さらに、専門実践教育訓練を受ける人が失業状態にある場合には、一定の条件を満たすと受講中の生活費を支援する「教育訓練支援給付金」も併せて支給されます。専門実践教育訓練には、多数の大学・大学院の課程が指定されています。詳しい内容を確認していきましょう。

幅広い分野の講座が対象になる一般教育訓練

一般教育訓練は、雇用の安定と再就職の促進を図ることを目的とする教育訓練です。

対象者は、受講開始日までの間に引き続いて雇用保険に加入していた期間(支給要件期間)が3年以上ある人です。初めて支給を受ける場合は、当分の間、1年以上あれば対象となります。過去に転職しても雇用保険に加入していなかった空白期間が1年未満であれば、転職前の期間も合算することができます。

離職後でも1年未満であれば対象です。さらに、妊娠・出産・育児・負傷・疾病などの理由がある場合には、この期間の延長(適用対象期間の延長)が認められると、離職の日から最大20年間のうちに受講を開始すれば対象になります。

支給額は、教育訓練施設に支払った入学料・受講料(※1)の20%で、最大10万円です。算出した金額が4千円以下の場合や、3年以内に教育訓練給付金を受給した場合は支給の対象外です。所要のカリキュラムを修了し、ハローワークで手続きをすることで支給されます。

(※1受講開始日前1年以内にキャリアコンサルティングを受けた場合は、上限2万円までの金額を加えることができます。)

対象講座は厚生労働大臣の指定する施設・講座に限られ、厚生労働省のホームページから検索できるようになっています。介護福祉士、ケアマネージャー、医療事務、インテリアコーディネーター、簿記、WEBデザイナー、ファイナンシャルプランナー、日本語教師など幅広い分野の講座が指定されています。

「教育訓練給付制度 厚生労働大臣指定教育訓練講座 検索システム」

https://www.kyufu.mhlw.go.jp/kensaku/

[(https://univ-journal.jp/daigakuinlist/)

資格取得などを目標とする特定一般教育訓練

特定一般教育訓練は、雇用の安定と再就職の促進を図ることを目的とする教育訓練のうち、速やかな再就職および早期のキャリア形成に資するものです。

対象者は、一般教育訓練と同じで、受講開始日までの間に引き続いて雇用保険に加入していた期間が3年以上ある人(当分の間、初めての場合は1年以上)などです。

講座の受講開始1ヶ月前までに、訓練前キャリアコンサルティングを受け、ジョブ・カードを作成し、ハローワークで受給資格の確認をする必要があります。

支給額は、教育訓練施設に支払った入学料・受講料の40%で、最大20万円です。算出した金額が4千円以下の場合や、3年以内に教育訓練給付金を受給した場合は支給の対象外です。

対象講座は下記の内容で、厚生労働大臣の指定する施設の講座です。

(1)業務独占資格、名称独占資格もしくは必置資格に関する養成課程またはこれらの資格取得を訓練目標とする課程など

(2)情報通信技術に関する資格のうちITSSレベル2以上の情報通信技術に関する資格取得を目標とする課程

(3)新たなITパスポート試験合格目標講座

(4)短時間のキャリア形成促進プログラムおよび職業実践力育成プログラム

税理士、保育士、社会福祉士、宅建建物取引士、介護福祉士、中型自動車第一種免許、情報処理技術者試験などの講座が指定されています。2020年7月1日現在の特定一般教育訓練指定講座に登録されている大学院は、社会情報大学院大学(東京都) 実務家教員養成課程があります。

「特定一般教育訓練指定講座一覧【令和2年(2020年)10月時点】」

https://www.mhlw.go.jp/content/000654413.pdf

[(https://univ-journal.jp/daigakuinlist/)

専門職大学院も対象になる専門実践教育訓練

専門実践教育訓練は、雇用の安定と再就職の促進を図ることを目的とする教育訓練のうち、中長期的なキャリア形成を支援する専門的・実践的なものです。

対象者は、一般教育訓練と同様に、受講開始日までの間に引き続いて雇用保険に加入していた期間が3年以上ある人(当分の間、初めての場合は2年以上)などです。

講座の受講開始1ヶ月前までに、訓練前キャリアコンサルティングを受け、ジョブ・カードを作成し、ハローワークで受給資格の確認をする必要があります。

支給額は、教育訓練施設に支払った入学料・受講料について、受講中は50%、年間上限40万円で最大120万円となっており、6ヵ月毎に支給申請をして給付金を受給します。教育訓練の修了後1年以内に資格を取得し、就職をした場合は、20%が支給されます。受講中から資格取得後に就職した場合までの給付金を合計すると、入学料・受講料の70%、最大168万円が支給されることになります。なお、最短で4年の講座(専門職大学等、管理栄養士)を受講する場合には、上限額が上乗せされて224万円になります。算出した金額が4千円以下の場合や、3年以内に教育訓練給付金を受給した場合は支給の対象外です。

対象講座は下記の内容で、厚生労働大臣の指定する施設の講座です。

(1)業務独占資格、名称独占資格の取得を訓練目標とする養成施設の課程

(2)専門学校の職業実践専門課程等

(3)専門職大学院

(4)職業実践力育成プログラム

(5)一定レベル以上の情報通信技術に関する資格取得を目標とする課程

(6)第四次産業革命スキル習得講座

(7)専門職大学・専門職短期大学・専門職学科の課程

専門学校の看護学科・美容学科・保育科・調理師学科・自動車整備科など、短期大学の保育科・幼児教育学科など、大学の食物栄養学科・言語聴覚専攻科など、大学院の戦略経営研究科戦略経営専攻、MBAプログラムなどが指定されています。

「専門実践育訓練指定講座一覧【令和2年(2020年)10月時点】」

https://www.mhlw.go.jp/content/000654412.pdf

[(https://univ-journal.jp/daigakuinlist/)

専門実践教育訓練中の生活費を支援する教育訓練支援給付金制度

専門実践教育訓練中については、初めて受講する人が失業状態にある場合に、受講中の生活費を支援する教育訓練支援給付金制度もあります。雇用保険の基本手当の支給が受けられない期間について、基本手当の日額(※2)相当の80%が支給されます。

受給するには下記の条件を満たす必要があります。

・離職後1年以内に専門実践教育訓練を開始(適用対象期間延長の場合は最大20年以内)

・専門実践教育訓練の講座を修了する見込みがある

・専門実践教育訓練の受講開始時に45歳未満

・受講する専門実践教育訓練が通信制または夜間制でない

・会社などの役員に就任していない

・自治体の長に就任していない

・教育訓練給付金を受けたことがない

・専門実践教育訓練の受講開始日が2022年3月31日以前

など

専門実践教育訓練の教育訓練給付金を受給できる人でなければ給付を受けられないため、専門実践教育訓練の教育訓練給付金の手続きと同時、またはそれより後に手続きをします。2ヶ月毎に失業の認定を受け、認定を受けた日数分の金額を受給します。

(※2基本手当の日額は、離職する直前の6か月間に支払われた賃金の合計金額を、180で割った金額の45%~80%です。)

利用する資格があるかを照会

雇用保険に加入していた期間が不明で、自分には教育訓練給付金を受給する資格があるかを確かめたい場合には、ハローワークに照会することができます。ハローワークでの手続きの他、電子申請、郵送で行う方法もあります。受講を希望する講座が厚生労働大臣の指定を受けているかについてもハローワークで確認することができます。

人生100年時代を迎えて、誰もがいくつになっても新たなチャレンジができる社会の構築を目指して、国もリカレント教育の充実を支援しています。自分への投資を後押ししてくれる制度があるのですから、キャリアアップのためにも計画的に利用するとよいのではないでしょうか。

森田 和子(もりた・かずこ)

FPオフィス・モリタ 代表

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、DCA(確定拠出年金アドバイザー)、進路アドバイザー検定合格認定

大学卒業後、コンピュータソフト会社、生命保険会社勤務を経て、1999年独立。保険や投資信託の販売をしない独立系のファイナンシャル・プランナー事務所としてコンサルティングを行っている。

お金の管理は「楽に、楽しく」、相談される方を「追い詰めない」のがモットー。情報サイト・新聞・雑誌への執筆多数。企業・学校・イベントで行うマネープランセミナー・講演も好評。

FPオフィス・モリタのHP:

http://okane-net.com/

[(https://univ-journal.jp/daigakuinlist/)

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