社説[菅氏の「自助共助公助」]弱者追い込まぬ社会に

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 自民党の新総裁に決まった菅義偉官房長官が日本の将来像をどう描いているのか。総裁選の論戦からは見えにくかった。

 一方で、菅氏が繰り返し掲げていた言葉がある。「自助・共助・公助」だ。14日の就任演説でも「まず自分でできることは自分でやってみる」と「自助」の必要性を強調した。

 「自助・共助・公助」は、防災や減災を考える際のキーワードとして取り上げられることが多い。災害に備えるため、市民や企業が自分で守る「自助」、互いに助け合う「共助」、国や地方自治体などによる「公助」を適切に分担しながら対策を進める必要性が指摘されている。

 防災・減災にとどまらず、社会においてそれぞれの役割分担はもちろん重要である。ただ、事実上の次の首相となる政治家が「自助」を強調するのには違和感を覚える。

 過度な自己責任や競争を求める新自由主義の考え方が透けて見えるからだ。

 菅氏が継承を明言している安倍政権の経済政策「アベノミクス」は、大企業や富裕層を潤わせたものの、中小企業や中間層、地方に恩恵は行き渡っていない。

 雇用は確かに増えたが、賃金の低い非正規労働者が中心だ。かえって格差の拡大や分断につながる結果となっている。

 その中で、「自分でできることは自分で」とことさら訴えれば、自助に限界を感じた社会的弱者が声を上げにくくなり、追い詰められることになりかねない。

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 全国の子どもの7人に1人が貧困状態にあるとされる。

 無料や低額で利用できる「子ども食堂」は、家庭で栄養のある食事が満足に取れない子にとっての「命綱」だ。社会的に孤立する困窮世帯が少なくない中、地域での接点としての役割も果たしている。

 家庭や企業などで余った食品を困窮世帯に配布するフードバンクの活動も、全国に広がっている。いずれも「共助」として支援に貢献している。

 一方で、公的な支援は依然として脆弱(ぜいじゃく)だ。

 母子家庭が大半のひとり親世帯の貧困率は48%に上る。シングルマザーは非正規が多く、働いても貧困から抜け出すのは難しい。にもかかわらず支給される児童扶養手当は十分ではない。

 困窮しているのは本人の努力が足りないから、とする自己責任論も根強く、生活保護受給者へのバッシングも見られる。ただでさえ困難を抱える人にとって、傷口に塩を塗り込まれるような行為だ。

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 コロナ禍で経済が著しく悪化している中、きょう新政権が発足する。政治が優先すべきなのは「公助」を充実させることだ。

 厚生労働省のまとめでは、コロナ関連の解雇や雇い止めは5万4千人を超えた。母子家庭の18%が食事回数を減らし支出を切り詰めている、とNPOの調査に答えた。

 最終的に公助があるという安心感があってこそ自助や共助は機能する。こうした考え方に立ってセーフティーネットを強化してほしい。