拡大するゲノム市場。“ヒト”を知る~進歩するゲノム解析の今とこれから

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 “我思う、故に我あり”

自己への探究は、私たち人類にとって永遠の課題のひとつだろう。

 2003年、実はこの課題に対する生物学的な答えは既に導き出されている。「ヒトゲノム計画」という歴史的な偉業をご存知だろうか。今回はそんなゲノム解析技術について紹介したい。

ヒトゲノム計画とは

 ゲノム(genome)とは、遺伝子(gene)と染色体(chromosome)から成る合成語であり、生物が持つDNA全体のことを指している。人体の全染色体を構成する約30億塩基対のDNAがヒトゲノムと呼ばれるものである。

 1990年、この約30億塩基対のヒトゲノムの完全解析を目指して始動した国際的プロジェクトがヒトゲノム計画だ。このプロジェクトには、米国を中心に世界中の科学者が参加し、30億ドルもの巨額の予算が投じられた。プログラム開始から13年後の2003年、遂にこのプロジェクトは完了し、世界で初めて人間の全遺伝情報が解析されたのである。

 ゲノム解析のその後

 ヒトゲノム計画完了以後、解析技術は更に進歩した。2007年、短い塩基配列を高速に読み取ることができる次世代シーケンサーが生まれたことで、解析コストは数千分の一まで大幅に低下した。2010年には1分子シーケンサーと呼ばれる、従来のシーケンサーでは困難だった領域まで解析できるようになり、2013年、その解析コストはなんと5,000ドルにまで低下した。

 今となっては、ゲノム解析装置最大手のイルミナでは、1,000ドルでヒトゲノムの解析が可能である。そして来年には、たった100ドルで解析できるようになると言われている。

 解析必要日数も同時に短縮され、ヒトゲノム計画では約13年かかっていたものが、今では約1日で解析できてしまうというから驚きである。

 これはムーアの法則をしのぐスピードでコストが低下しており、ゲノム市場は、2000年以降ハイテク市場を大きく牽引してきた半導体以上の速さで成長しているとも言えるだろう。

(natureウェブサイトより)

 ゲノム解析の市場規模

 この勢いは今後も止まらず、ゲノム解析の次世代シーケンサーの市場規模は、2018年45億ドルだったものが、2026年には186億ドルまで成長すると言われている。経済開発協力機構(OECD)によると、AI・IT技術とゲノム編集を組み合わせたゲノムスマートセル等のバイオエコノミーに関連する市場規模は、2030年1.6兆ドルまで拡大するとのことだ。

 ヒトゲノムはいわば人間の設計図であり、健康管理や病気の診断・治療において、より重要な役割が期待されている。解析コストの低下に伴い、ゲノム解析はこれまで以上に身近なものとなり、現在注目されるヘルスケア市場の柱のひとつとなるだろう。いずれゲノム解析・編集により、病気がなくなる時代も訪れるのだろうか。