西武高橋光、2戦連続ノーノー逃す快投から何を学んだか 辻監督が求める高い期待

先発した西武・高橋光成【写真:宮脇広久】

厳しい言葉を投げかけ続けてきた辻監督も「安定した力を出してくれている」

■西武 4-3 ロッテ(15日・メットライフ)

西武の高橋光成投手が15日、本拠地メットライフドームで行われたロッテ戦に先発した。前々回先発の1日・ロッテ戦で7回1死まで、前回登板の8日・オリックス戦では8回まで無安打無得点に抑え、2試合連続でノーヒットノーランを予感させる投球を見せた後だっただけに注目されたが、7回7安打8奪三振3失点の好投。勝ち負けは付かなかったもののチームの逆転勝ちに貢献した。

この日の相手先発は、7月31日以降6連勝中の石川とあって、ロースコアの投手戦は必至。そんな状況下で、「ノーヒットノーランについては、意識せずに試合に入った」という高橋光は2回、2死走者なしから菅野を四球で歩かせ、続く井上に痛烈なライナーを飛ばされる。強いフックがかかった打球は、中堅手・金子が必死に差し出したグラブの先をすり抜け、この日最初の被安打が先制適時二塁打となった。高橋光にとっては、8月25日・日本ハム戦の2回以来22イニングぶりの失点だった。さらに続く8番・藤岡にも、真ん中外寄りのフォークを右中間適時二塁打とされる。5回にも自らの牽制悪送球などで2死三塁のピンチを背負い、4番・安田をカウント1-2と追い込みながら、外角低めのフォークを拾われ追加点を許すが、結局7回109球を投じて大崩れすることはなかった。

味方打線は6回まで石川の前にゼロ行進を続けたが、7回に高木の2号ソロで反撃ののろしを上げ、8回に金子が適時打。救援したハーマンから、スパンジェンバーグが劇的な逆転11号2ランを放ち、試合をひっくり返したのだった。

辻発彦監督は試合終了後、高橋光について「井上の先制打は、打球がすごく変化したので不運だったが、2点目は余計。5回の3点目も、あそこで踏ん張ってくれればという所」と注文を付けつつ、「まずまずでしょう。ここのところ、しっかり安定した力を出してくれている」と称賛した。一方、本人は「先に点を与えてしまった上、最少失点で抑えられなかったのは悔しかった。自分の牽制ミスももったいなかった」と反省しきり。この両者のコメントに、高橋光の成長のあとがうかがえた。

12試合先発のうち10試合が週アタマに先発、辻監督の期待は大きい

というのは、高橋光はこの日を含め今季12試合に先発したうち、10試合が火曜日。雨天中止によってズレた2試合を除き、常に週のアタマに先発し、チームに勢いがつくかどうかの鍵を握ってきた。

期待が大きいゆえに、辻監督は高橋光には徹底的に厳しい言葉を投げかけてきた。たとえば、今季初先発の6月23日・ソフトバンク戦では、6回途中3失点で勝利投手となったが、味方が4点を先制してくれた直後に2点を返され、5点リードの6回に四球絡みでピンチをつくり降板を命じられる不安定な内容。「全体的にはよく投げられたと思います」と満足気な高橋光自身と対照的に、辻監督は「納得いかない。彼の力からしたら満足できない」とおかんむりだったのだ。

また、8月25日の日本ハム戦では、1回に1点、2回に2点を奪われ、いきなり3点ビハインド。3回以降は立ち直り、6回限りで降板するまでスコアボードに0を並べたが、結局味方打線の追い上げは1点届かず敗れた。この時も、高橋光自身は「3回以降は気持ちを切り替えて、なんとか粘ることができた。先発投手として、試合をつくるという最低限の仕事はできたと思います」と語ったのに対し、辻監督は「クオリティスタート(先発して6回以上投げ、自責点3以下)とか、そういう問題じゃない! 週のアタマに投げている以上、相手もいい投手が来るわけで、1、2回に3失点では、味方打線の攻め方が打つしかなくなり難しくなる。立ち上がりをもっと慎重にいかないと」と怒りをあらわにした。この直後、高橋光の投球内容はにわかに安定感を増し、2試合連続でノーノーを予感させる快投を演じたのだ。

特に、8回までヒットを許さなかったオリックス戦では、いまや球界を代表する速球派右腕となった相手先発・山本との投げ合いを制した。試合前に辻監督からは「山本はすごいが、点を与えなければ負けることはないから」とゲキを飛ばされていたという。

指揮官が求めるレベルの高さを理解し、さらにノーノーを予感させる快投によって、それに見合う潜在能力が自分にあることを自覚することができたのだとすれば、今季残り試合の高橋光はますます楽しみになる。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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