アベノミクス検証、求人1位も賃金は 福井県、非正規の割合増加

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所定内給与の推移と有効求人倍率、最低賃金の推移

 安倍政権が打ち出したアベノミクスの下、福井県の有効求人倍率は2倍超まで跳ね上がるなど高水準で推移してきた。一方、最低賃金は、2002年度に時給で示す方式となって以降、14~19年度は6年連続で過去最高の引き上げ額を更新したものの、県内企業の所定内給与は7年間ほぼ横ばいと伸び悩んだ。

 リーマンショック(2008年)の後、福井県の有効求人倍率(季節調整値)は09年度の0.60倍を底に急回復してきた。全国を大幅に上回る水準で推移し、直近の20年7月までは4カ月連続で全国一となった。

 福井の求人倍率の高さについて、福井労働局の担当者は「地場産業の眼鏡、繊維が分業化で人手が掛かり、もともと求人が多い地域」と指摘する。それに加え、建設業では北陸新幹線、中部縦貫自動車道の建設工事が進み、嶺南では原発の定期検査が求人をけん引。小売業ではドラッグストアやホームセンターの出店が相次いだ。女性や高齢者の就業率が全国に比べ高いことも、求人倍率を押し上げているとした。

 ただ、米中貿易摩擦を背景に、製造業の新規求人数は、今年7月まで17カ月連続で対前年同月比マイナスが続く。これに加え新型コロナウイルス感染拡大により、新規求人数は大幅に減少し、雇用環境にブレーキが掛かっている。

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 アベノミクスの成果を暮らしに波及させる狙いで安倍首相は、経済界に賃金引き上げを求め続けた。最低賃金では顕著にその“成果”が現れている。20年度の福井県の最低賃金は830円で、第2次安倍政権発足時の12年度に比べ20%アップした。全国平均も2割増で902円だった。

 一方で賃上げを見ると、従業員5人以上の県内事業所では、19年の所定内給与の月額平均は、12年に比べ5%増にとどまる。全国ではわずか0.3%のプラスだ。

 県経営者協会の峠岡伸行専務理事は「高い付加価値を持つ商品やサービスを生み出せば企業はもうかり、従業員の収入も増える。しかし実際には多くの中小企業が価格競争にさらされ、賃金を上げられる状況になかった」と分析する。

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 安倍首相は退任表明の会見で「雇用創出」を誇った。連合福井の横山龍寛会長は「非正規雇用が増えた一方で、企業は経常利益の上昇に対して賃金に回す労働分配率は低くなっている。結果として、個人消費が支えるGDPも伸びなかった」と手厳しい。

 福井県は正規雇用の割合が全国上位。しかし非正規雇用の割合は12年の32.7%に対し17年は34.6%と、じわりと上昇している(総務省就業構造基本調査)。横山会長は「安心できる社会保障と安定した雇用に向け、大企業でなく生活者目線の政策が必要」と訴える。

 一方で、少子高齢化を背景に人手不足も深刻さを増している。峠岡専務理事は「地方の人手不足感は根本的に変わらない。人が集まる魅力的な仕事、会社をつくるためにも、イノベーションを起こす人材の育成や、起業家を応援する仕組みが求められる」と語った。