地方で異なる結婚観、親の影響力が強い「3つの地域」は?

未婚化割合の上昇をうけて、筆者のところには多くの取材依頼が舞い込みます。そんな中、数年前、あるメディアに勤務する20代後半の女性からこんな残念なお話を伺いました。


彼女には大学時代からお付き合いしている男性がいました。二人は別々の地方の出身者で、ともに首都圏の大学に進学したことから、別の大学ですが、出会うことになりました。二人とも就職して数年、そろそろ結婚しよう、という話になり、男性の実家に2人であいさつにいくことになりました。しかしその挨拶の後、彼女は男性から破談を言われたそうです。

理由は男性の母親の反対でした。反対の理由は「(その母親と同じ)〇〇県の出身女性ではないから」ということと、別の地方の方ならせめて国立大学出身ぐらいの方じゃないと釣り合わない」ということでした。この話から想像できますが、男性の実家はその県では名の通った「名家」だった、ということで、彼は彼女との結婚をあきらめてしまったというお話でした。

筆者としては、貴族院があった明治時代の話でも聞いているかのような驚きでした。

このように結婚に関する様々な取材や分析のご相談を受けていて強く感じるのは、出身地によって「当然」と感じること「仕方ない」と感じることが大きく違う、ということです。

この男性の決断に関するコメントはここではさておき、今回は「(独身者の)結婚観への親の影響力」について、地方によって差があるのかどうか、あるとしたらどの程度なのか、をデータでご紹介してみたいと思います。

特に親の影響力が大きい3エリア

今回使用するデータは、少々古いといっても2014年から2015年にかけて実施された国の大規模意識調査の結果になります。

内閣府によって実施された「結婚・家庭形成に関する意識調査」は、住民基本台帳を用いた無作為抽出タイプの郵送(依頼)調査で、回答は郵送、インターネットの2経路でおこなわれました。依頼状は全国の20歳から39歳の男女7,000人に郵送され、有効回答数は2,643人です。

この調査の中に、未婚かつ将来結婚したいと回答した男女に「結婚相手に求める条件」を聞いた質問があります。17の選択肢のうち、親との関係を条件とする選択肢が2つありました。

「親が同意してくれること」「自分の親と同居してくれること」の2つです。
この2つの条件が選択された割合の高低が地方によってどのようになっているかを示したものが下図になります。

結婚への親の強い影響力を示す「親が同意してくれること」を結婚相手に求める条件に多く選んだエリアは「中国・四国」と「東北」地方で、ともに3割を超えました。結婚を希望する未婚男女の3人に1人以上が選択しているという結果です。

全国平均は26%で約4人に1人ですので、5ポイントを上回る差の出ているこの2エリアは、特に子どもの結婚への親の決定権が強権傾向であるエリア、といえると思います。

次に、パートナーへの親の影響力が結婚後も比較的強くなることが予想される「自分の親と同居してくれること」については、全国では4%をきる選択状況でした。しかし、こちらも「東北」「北関東」「北陸」は5%を超えており、20人に1人以上と全国比較でみてみると、結婚への親の影響力が強めであることがうかがえます。

上の2条件でともに全国平均を超えたのは「中国・四国」「東北」「北関東」の3エリアになっています。

冒頭にご紹介した女性が破談を言い渡された男性の実家もこの3エリアの中にあったため、何とも言えない気持ちになりました。

2条件の関係性はとても強い

さらに、上でみた2つの条件は強くリンクしていることが相関分析(2つの選択肢の選択割合高低の関連度合いを測定)でわかりました。

つまり、結婚を決める条件に「親が同意してくれること」を選択した男女の多い地方ほど、「自分の親と同居してくれること」を選んだ男女が多い、という結果です(相関係数0.68-強い相関)。

一見、2条件は全国平均でみると26%と4%の選択肢ですので、選択する男女の割合に大きな差がある条件に見えるのですが、背景にある価値観傾向としては同じ線上にある条件同士、ということができます。そこで、この2条件の選択状況から、その地方の結婚観への親の影響力度の高低を一目でわかるように可視化したグラフが次のグラフになります。

ダイバーシティの時代ゆえの人口移動も未婚化の原因の1つ

親の結婚への影響力の大小を含め、2人の結婚の形に正解はありません。結局、価値観が合う男女同士が結婚すればそれでよい話です。

ですので、上記の結果からどのエリアがよく、どのエリアが悪いという話は直接的にはできません。

ただ、コロナの影響で若干、人口移動の流れに変化はあるものの、2019年において全国39道府県で引っ越し(転入-転出)によって減少してしまった人口の9割以上が、首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)での人口増加となっています。

しかも、その引っ越しによって増加した人口のうち、9割の年齢が20代という子世代であることを、人口動態の研究者として指摘しておきたいと思います。

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