金星の生命を研究するグループに資金提供、ブレイクスルー・イニシアチブが発表

金星探査機「あかつき」の観測データをもとに作成された金星の画像(疑似カラー。Credit: PLANET-C Project Team)

ロシア生まれの資産家Yuri Milner(ユーリ・ミルナー)氏が創設した「ブレイクスルー・イニシアチブ」は9月15日、金星の雲に存在するかもしれない生命を研究するグループに対する資金提供を発表しました。

今回の資金提供はカーディフ大学のJane Greaves氏らの研究グループが発表した金星大気からのホスフィン(リン化水素、PH)検出を受けての動きで、提供を受けるのはGreaves氏らの研究にも参加したマサチューセッツ工科大学(MIT)のSara Seager氏が率いる研究グループです。Seager氏は金星の大気に生息する微生物を想定したライフサイクル(生活環)や、地球とは異なる環境を持つ太陽系外惑星における生命繁栄の可能性に関する研究などを行ってきました。

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ホスフィンは木星や土星のようなガス惑星にも存在しており、高温高圧な大気の奥深くで非生物的な過程で生成された後に大気循環によって上層に運ばれたとみられるものが検出されています。ただ、岩石質の惑星において非生物的な作用でホスフィンが生成される過程は知られておらず、地球の自然界では酸素を必要としない嫌気性の微生物によって生成されています。

ブレイクスルー・イニシアチブはホスフィンについて、研究の結果として金星における非生物的な生成過程が判明する可能性もあるものの、地球では湿地や沼地のように酸素が乏しい環境や動物の腸内で見つかる、生物に関連した化学物質であると言及。創設者のMilner氏は「地球外で生命を探す取り組みは真に重要なものであり、地球のすぐ隣にある金星に無視できない可能性があるのなら、それを探ることは人類の文明にとって喫緊の優先課題です」とコメントしています。

ブレイクスルー・イニシアチブはこれまでにも地球外知的生命体を探すプロジェクト「ブレイクスルー・リッスン」を進めており、知的生命体の存在を示す証拠を求めて集められた電波望遠鏡による膨大な観測データが公開されています。また、小さな探査機で約4.3光年先にある恒星アルファ・ケンタウリの観測を目指すプロジェクト「ブレイクスルー・スターショット」も立ち上げられており、探査機をレーザー光で加速させるための帆の研究などが進められています。

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Image Credit: PLANET-C Project Team
Source: ブレイクスルー・イニシアチブ
文/松村武宏

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