【タイ】【ウィズコロナ】「昼寝」を新たな事業機会に[サービス]

豊田通商、非自動車強化へ新会社

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豊田通商タイランドは、企業従業員の「昼寝」をビジネスにつなげようと、自社グループ内で実証を始めた=8月24日、タイ・バンコク(同社提供)

豊田通商のタイ法人である豊田通商タイランドは、企業従業員の「昼寝」をビジネスにつなげる試みを始めた。新型コロナウイルス感染症の影響で増えているオフィスの空きスペースを活用し、質の高い仮眠の場を提供することで、労働生産性の向上を図る狙い。1年以内に対外向け事業として立ち上げたい意向だ。自動車関連以外の事業強化のための新会社「TOYOTSU L&C(タイランド)」の市原暁ゼネラル・マネジャーに話を聞いた。

——従業員の昼寝をビジネスにつなげる発想はどこから得たのか。

近年、就業中に眠そうにしている社員が増えた。少し睡魔に襲われているといった程度の者から、昼休みに階段や空いている会議室で横になっているケースもある。多くは20~30代の若い社員。推察するに、連日深夜までゲーム機などでのプレイに没頭していることが、睡眠不足や睡眠の質の低下につながっているようだ。

自己管理の問題と言えばそれまでだが、企業としては、従業員の労働生産性が低下することは憂慮すべき事態だ。それならば、昼休み時間に交代で仮眠できる部屋を作ったらどうかというのが、最初の発想だった。短い時間で、良質な仮眠を取れる場所を用意することで、社員の生産性の向上につなげる狙いだ。

——どのように事業化を進めるのか。

TOYOTSU L&C(タイランド)の市原暁ゼネラル・マネジャー(同社提供)

8月下旬にバンコクにある豊田通商タイランドグループの自社ビル内に、広さ30平方メートルほどの仮眠室兼会議室「NAPステーション」を設置した。最大4人が同時に利用できる。ここでグループ社員を対象に、半年程度をかけて事業化に向けた実証を進める。

NAPステーションの設置に当たって参考にしたのが、寝具メーカーの西川が東京で展開している「ちょっと寝ルーム」だ。短い時間で質の高い仮眠の機会を提供できるよう、仮眠用のベッドやいすのほか、照明やアロマ、ヒーリング音楽などにもこだわっている。

マットレスは西川製、部屋の施工は、ちょっと寝ルームの内装、施工を手掛けているアディスミューズのタイ法人にお願いした。アロマについては、タイで人気のアロマ・ブランド「THANN(タン)」と協力を話し合っている。社員の利用頻度や生産性向上への効果などを実証した上で、対外向けのビジネスとして立ち上げたい。

■オフィスの空きスペースを有効活用

——昼寝が本当にビジネスになるのか。

社員の生産性の向上はどの企業にとっても課題だ。また、新型コロナウイルスの感染予防のため、在宅勤務が増えており、各社のオフィスには、使われていないスペースが増えている。その有効活用という意味でも、ニーズはあると考えている。

——「昼寝」に関する事業は、豊田通商タイランドが新たに立ち上げた新会社TOYOTSU L&C(タイランド)の事業の柱の一つということだが、新会社を設立した経緯・目的は。

豊田通商タイランドは、中核的戦略拠点として、豊田通商グループの自動車関連事業の中心的役割を担ってきた。事業の9割を自動車関連が占める。一方で、デジタル化やグローバル化の進展で、自動車産業を取り巻く環境が大きく変化している。自動車関連だけの「一本足経営」は時代にそぐわなくなっている。非自動車関連部門の強化を、「スピード感を持って必ずやり切る」との決意の下、新会社TOYOTSU L&C(タイランド)を立ち上げた。

「NAPステーション」および「西川AiR」のショールームの開所式には梨田和也駐タイ日本大使(中央)らが出席した=8月24日、タイ・バンコク(NNA撮影)

■DXや日本への医療観光も

——新会社の事業の柱は。

当面は、◇ブランディング◇ビジネスマッチング◇デジタルトランスフォーメーション(DX)◇ウェルビーイング——の4つを中心に事業を進める。

「ブランディング」は、西川AiR代理店事業が柱だ。NAPステーション事業もここに位置付けられる。われわれは、2018年にバンコクの高級商業施設「サイアム高島屋」に、西川AiRのタイ1号店が開業した当初から、代理店を務めてきた。8月下旬にNAPステーションの実証ルームに隣接して、西川AiRのショールームを開設した。身体にかかる圧力を分散させる特殊立体構造のマットレス「AiR」などを展示している。同商品の価格は、2万~15万バーツ(約6万8,000~51万円)ほどと、寝具としては高額。サイアム高島屋の店舗以外でも実際に商品に触れてもらう機会を増やすのが狙いだ。

「ビジネスマッチング」は、16年から開いている日本製品の販売会「豊通ジャパンフェスティバル」が柱だ。昨年はトヨタ・グループを含めた120社余りが出展し、来場者も12万人に達するなど、規模は年々大きくなっている。今年は新型コロナの影響から開催を見送ったが、来年11月の開催に向けて準備を進めていく。

「DX」では、投資先のFlare(フレア)社が開発したスマートフォンのアプリを使ったドライバーの勤怠・運転動態管理サービスを生かし、各企業のドライバー管理の業務改善に取り組む。従来の紙の勤怠管理からのデジタル化に加えて、稼働率の見える化などにより、最適な車両数の配置などデータを生かした改善を一括して実施する。また、そのアプリをオフィスワーカーの勤怠管理に応用することで、個々の業務の問題点の見える化につなげる。

「ウェルビーイング」では、タイから日本へのメディカル・ツーリズムなどを検討している。豊田通商は宮城県の仙台空港の運営に携わっており、東北地方の温泉などの観光資源と組み合わせることで、タイ人の富裕層を日本に呼び込めるのではないかと考えている。(聞き手=須賀毅)

<会社概要>

TOYOTSU L&C(タイランド):2020年4月2日設立。代表は三浦伸文社長。タイのジャオビシダ一族が51%、豊田通商タイランドが49%を出資している。ジャオビシダ一族は、豊田通商の初めてのタイ進出から付き合いのある有力一族。