【社会人野球】今秋ドラ1候補のトヨタ自動車・栗林 最速153キロ直球のこだわりを捨て得たものとは?

7回2安打無失点の好投をみせたトヨタ自動車の栗林良吏投手【写真:福岡吉央】

地元中日スカウトも絶賛「2位で残る選手ではない」

第91回都市対抗野球大会の東海地区2次予選が16日、岡崎市民球場で行われ、今秋のドラフト1位候補として注目されるトヨタ自動車(豊田市)の栗林良吏投手(愛知黎明-名城大)が初戦となる東邦ガス(名古屋市)戦に先発。7回2安打無失点10奪三振の好投をみせ、集まったプロのスカウト陣に存在をアピールした。試合はトヨタ自動車が9-2で勝利した。

「初回から飛ばしていこうと思っていた。勝つことをメーンに考えていたので、勝てて良かった。追い込んだら三振がベスト。1点も取られたくないと思っていた」

三塁を踏ませぬ安定したピッチング。昨年、本大会で準優勝し、今年は4年ぶり2度目の優勝への期待も大きい中、負けられない初戦で7回89球と先発投手としての役目を十分に果たした。7点のリードをもらった5回には先頭打者にストレートの四球を与えたが、2三振を奪うなど、後続をピシャリ。7回にも先頭の2番打者に左翼線への二塁打を許したが、クリーンアップから2三振を奪うなど、最後まで崩れることはなかった。気合い十分の投球で、三振を奪う度に「シャー」と雄叫びをあげ続けた。

藤原航平監督も「しっかりといい準備をし、立ち上がりからいいピッチングができた。もともとコントロールはいいが、一番大事なところでコースにしっかり投げ切ることができた。栗林と守備陣がよく守った」と、エースとしてしっかりと試合を作った栗林を称えた。

コロナ禍でチームとして練習ができない時期もあったが、体幹を鍛え、過去の自身の投球映像を見直すことで「全ての球種のレベルが1つ上がった」と、栗林は言う。大会前には調子が上がらない時期もあったが、最終的にはしっかりとコンディションを調整。直球、カットボール、カーブ、フォークの4球種を「全て勝負球にしたい」と、向上心も高い。

7回2安打無失点の好投をみせたトヨタ自動車の栗林良吏投手【写真:福岡吉央】

トヨタ自動車OBの中日吉見、日本ハム金子が目標「超えられるように」

名城大時代は最速153キロの直球に自信を持っていたが、プロの世界に目を向け、セールスポイントにはならないと悟った。「今はケガをしないことがセールスポイント。練習から100%の力を出すことを意識している」。今季はコロナ禍で公式戦が少ない中でのシーズンとなったが「試合は残りわずかなので、チームが勝って、自分もプロに行けたら嬉しい」と、気持ちは揺るがない。

目標とする選手はトヨタ自動車のOB、中日の吉見一起投手、日本ハムの金子弌大投手。「プロは夢なので、行きたい気持ちは変わらない。トヨタに入社して恩返しするために、チームのために腕を振って頑張った。トヨタ自動車には吉見さん、金子さんという偉大な先輩たちがいらっしゃるので、その人たちを超えられるように頑張りたい」と、声を弾ませる。

この日、ネット裏には12球団約30人のスカウトが訪れ、注目右腕に熱視線を送った。地元中日の米村明アマスカウトチーフは「2位で残る選手ではない。ミスショットはほとんどなく、きっちりコースに投げ分けていて、低めにしっかり投げている。1位候補にふさわしいピッチングだった。会社を背負うエースとして本大会に出るんだという、胸を張った投球だった」と絶賛した。

米村アマスカウトチーフは「大学の時は直球にこだわっていたけど、社会人になって変化球で三振が取れるようになり、制球力が良くなった」と、栗林のトヨタ自動車での2年間の成長を評価する。そして「社会人なので即戦力としていけるかどうか。(指名するかどうかは)大野、柳らがいる中で、開幕から確実に先発ローテに入って投げ続けられるかどうかの判断になる」と話した。

スタンドにはほかにも、阪神の畑山俊二アマスカウト統括、中日の松永幸男編成部部長、オリックスの福良淳一GM兼編成部長、西武の潮崎哲也編成グループディレクターら、編成部門やアマスカウト部門のトップ、幹部を含め、複数で視察に訪れた球団が目立った。

なお、トヨタ自動車は次戦は18日に三菱重工名古屋(名古屋市)と対戦する。(福岡吉央 / Yoshiteru Fukuoka)

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