「継承」だけではない

 「できるだけ長く政権を続けたい。それが国益につながる」。2012年、首相の座にカムバックが決まった安倍晋三氏は周りにこう語ったと、以前の本紙にある。「できるだけ長く」が歴代最長に及ぶとは、このとき想像できたかどうか▲安倍氏が初めて首相になった時から数えて、日本の首相は実に6人連続で、毎年代わっていた。一つの政権が長く続けば、それだけで国のためになる-そう言われるくらい、国政が不安定な頃があった▲その後、安倍氏の再登板で政治はすっかり安定し、政権が長期になればなるほど国益を生んだ…わけではない。賛否と是非、評価は割れながら長い長い政権が幕を下ろし、7年8カ月ぶりに首相が交代した▲では、菅義偉首相の率いる新内閣の顔触れが新味あふれるかといえば、どうだろう。安倍政権を「継承」するという内閣は、閣僚の再任、ポスト替え、再入閣が大多数で、手堅さの方がむしろ際立つ▲とはいえ、社会のさらなるデジタル化、規制緩和に行政改革と、新首相は「変革」にも意欲を燃やす。やることにこそ新しさ、力強さが欲しい▲安倍政権下では人が東京へと集中し、地方はますますやせ細った。もう長引かせられない、待ったなしの課題は第一にこれだろう。「継承」よりも前進を。そういう注文もある。(徹)

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