「サッカーコラム」今季Jリーグで最も戦術的なチーム、それは

C大阪の選手は意思が統一されている

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横浜M―C大阪 後半、ゴールを決めガッツポーズのC大阪・清武(手前左)=日産スタジアム

 技術に優れる選手が高度なパスワークを駆使して相手を圧倒する。こんなサッカーが目にして楽しめない観客はまずいない。その意味で素晴らしい戦いを見せている川崎はJリーグ史に残るチームと言える。世界と日本の差こそあれ、一時のバルセロナ(スペイン)がもたらした衝撃に似たものがある。

 そんな川崎と遜色ないサッカーを披露しているチームがある。2位のC大阪だ。J1第16節を終えた時点で11勝3分け2敗の成績を収めている。例年ならトップに立っていてもおかしくない数字だ。スペイン人のロティーナ監督に率いられて2シーズン目を迎えるチームは、すっかり安定したチームに変貌した。試合ごとに出来不出来がはっきりしていたかつての姿がうそのようだ。

 チームを支えるのが、リーグ最少の失点14を誇る守備力。ある意味、最も戦術的なチームといえる。

 9月13日に行われた横浜Mとの一戦は興味深い組み合わせとなった。攻めることに勝利と同等の価値を見いだす横浜Mのポステコグルー監督の哲学は、ロティーナ監督とは対照的だからだ。

 「矛」と「盾」の対決は、お互いが特徴を出した内容となった。

 キックオフ直後、最初にチャンスをつかんだのはC大阪だった。開始3分、右サイドのFK。清武弘嗣のクロスをファーサイドで待ち受けた木本恭生が相手に競り勝ちドンピシャリのヘッド。しかし、10試合ぶりに先発復帰したマリノスGK梶川裕嗣が素晴らしい反応でこれを弾き出した。

 守備の強さが特徴のC大阪だ。しかし、「強い=失点しない」というわけではない。運を味方にすることも時には必要だ。C大阪の決定機からすぐの開始4分、横浜Mは素早い切り替えからサイド攻撃を仕掛ける。マルコスジュニオールのスルーパスで抜け出した小池龍太がゴール前にクロス。エリキのシュートはGK金鎮鉉(キム・ジンヒョン)の足に当たってクロスバーを直撃した。

 はね返りをジュニオールサントスがヘディングで狙う。だが、カバーに入ったC大阪DF片山瑛一にライン上でクリアされた。クロスバーの幅はわずか12センチ。C大阪の基本に忠実なプレーはクロスバーをも味方につけたといったところだろう。

 さらに、前半25分にエリキが放った25メートルの弾丸シュートもクロスバーに阻まれた。横浜Mの選手からすれば、この日のゴール枠は憎らしく映ったに違いない。

 「前半は苦しい展開が続いたがよく我慢できた」

 清武が話したように、前半のシュートは2本。最初のチャンスを除けば、一方的に押し込まれたといってもいい展開だった。それでも失点さえしなければ問題ない。ハーフタイムを挟んでまた対等な条件で試合を再開できるからだ。

 後半7分、この試合で初めての得点が生まれる。ゴール前にできた空白地帯を突いた横浜Mのエリキにフリーでヘディングシュートを許してしまった。

 それでもC大阪は前に出る力を取り戻していた。2列目の清武が少し下がることでボールが収まったことで、選手たちが攻撃に出る時間を稼ぐことができるようになったのだ。

 その選手を見続けているだけで楽しめる。清武はJリーグでは決して多くはない、そんな選手だろう。自らのアイデアを高度な技術で、正確にピッチ上に表現できる。後半13分の同点ゴールは、まさにそれだった。

 横浜Mは守備陣が高く位置するいわゆる「ハイライン」の戦術をとる。DFラインの後方にできる広大なスペースをカバーするのはGKだ。このギャップを虎視眈々(こしたんたん)と狙っていたのが、「GKが(前に)出ているのは前半から見ていた」清武。坂元達裕からパスをもらった瞬間、ためらいなく右足を振った。

 文字通り、「美しい」軌跡。インフロントに乗せられたボールは、ゴールエリアのライン上まで戻りかけたGK梶川の頭上を抜いてゴールに吸い込まれた。戦術上、梶川は責められない。清武のひらめきとキックの質を褒めるしかないゴールだった。

 後半20分、両チームのバランスは崩れた。横浜MのDF伊藤槙人が、抜け出した片山を倒したことで一発退場になったのだ。C大阪は数的優位に立つことになった。前線からプレスを掛け続けた横浜Mは、当然のことだがエネルギーが尽きてくる。

 後半41分。C大阪がアドバンテージをゴールに結びつける。この試合の同点ゴールを演出した右アウトサイドの坂元が起点となった。相手陣内右サイドでティーラトンとの1対1を仕掛けた坂元は2度の鋭い切り返しからゴール前に高速ラストパス。交代出場の高木俊幸が右足で冷静に合わせた。見事だったのは坂元のパスだ。巧みなポジショニングから決勝点を奪った高木も「ほとんど坂元選手のゴール」と称賛した。

 C大阪は、これで今シーズン初の5連勝。戦い方は、決して派手とはいえない。ただ、守備時に自陣ゴール前に作るブロックも含め、戦術的な忠実度はかなり高い。

 ベースを守備にするのか、それとも攻撃なのかという違いはある。だが、チームというのはこのように作っていくのだという見本といえる。方針が定まらずに低迷するチームと比べると、いまのC大阪は選手たちの意思が統一されている。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はロシア大会で7大会目。