1.5Lエンジン+6MTで走りが楽しく、ファミリーユースもできちゃう!「トヨタ ヤリス」【I Love コンパクトカー】

(左)トヨタ ヤリス Z/(右)トヨタ ヤリス HYBRID G

大幅に進化を遂げたトヨタのグローバルコンパクトカー

コンパクトカーは以前から人気の高いカテゴリーだが、特に好調に売れているのがトヨタ ヤリスだ。2020年2月に発売され、同年4・5・7・8月には、小型/普通車の登録台数1位になった。

ヤリスはヴィッツの後継車種だが(海外では以前からヤリスの名称で売られていた)、エンジンとプラットフォームを刷新させている。そして今後は、ヤリスと基本部分を共通化した各種のヤリスシリーズも開発されていく。2020年8月30日には、早くもSUVのヤリスクロスが登場しており、これからは天井を高めて室内空間を広げたハイトワゴンなども加わるだろう。

つまりヤリスのメカニズムは、今後のトヨタのコンパクトカーを大きく左右するから、各部を入念に造り込んだ。

気になるヤリスのパッケージングは?

コンパクトで小回りの利くボディ

ヤリスのボディサイズは、全長が3940mm、全幅は1695mm、全高は1500mmに収まる。全長は4m以下で最小回転半径も4.8~5.1mだから、小回り性能も良好だ。全高は1550mm以下だから、立体駐車場を利用しやすい。

外観はサイドウインドウの下端を後ろに向けて大きく持ち上げたから、斜め後方の視界はあまり良くない。購入時には縦列駐車や車庫入れを試したいが、視界に不満がなければ、ボディが小さくて小回りも利くから狭い裏道や駐車場でも運転しやすい。

後席は大人の場合居住性を要確認も、チャイルドシート装着なら不都合なし

車内に入ると、インパネの周辺に囲まれ感があり、ドライバーが車両との一体感を得やすい。前席はサイズに余裕を持たせ、腰の近辺をしっかりと支える。コンパクトカーのシートとしては上質だ。

後席には注意したい。ヤリスのプラットフォームは前席優先に開発され、ペダル配置などを最適化したが、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)の割に後席の足元空間は狭い。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ1つ少々だ。ライバルとなるホンダ フィットは、握りコブシ2つ半が収まるのでヤリスは狭く感じる。大人4名の乗車は可能だが、後席の使用頻度が高いユーザーは居住性を確認したい。

後席にチャイルドシートを装着する使い方なら不都合はないだろう。ルーフが後方に向けて下降して、リア側のドアは開口部が狭めだから子供を抱えて車内に入る時は注意したいが、ファミリーカーとしても機能する。

荷室面積も広いとはいえず、リアゲートの角度を寝かせたから、背の高い荷物は積みにくい。その代わりリアゲートのヒンジが前寄りに装着され、開閉時に後方への張り出しが少ない。狭い場所でも荷物を出し入れしやすい。

トヨタ ヤリス HYBRID G[1.5L+モーター/2WD(FF)]

一番の特徴は上質になった運転感覚

ヤリスの一番のセールスポイントは、プラットフォームの刷新に基づく優れた操舵感と走行安定性だ。コンパクトカーとしては、操舵に対する反応を正確に仕上げた。ステアリングシステムの支持剛性が高く、小さな操舵角から、車両が正確に向きを変える。従来型のヴィッツを含めて、コンパクトカーはコストを重視して開発されるから操舵感が曖昧になりやすいが、ヤリスはそこを改めた。

ヤリスでは運転感覚が上質になり、高速域における進路の微調節もしやすいので、運転の楽しさと安全性をバランス良く向上させている。峠道を走る時の安心感が高い。カーブに進入した時に旋回軌跡を拡大させにくく、適度にスポーティな走りを味わえる。下り坂のカーブでは、後輪がしっかりと接地しているから不安定な挙動に陥りにくい。

ヤリスは全高を1500mmに設定したから重心の高さを意識させず、2WDの車両重量は直列3気筒1.5リッターのノーマルエンジンが1000kg前後、ハイブリッドでも1060kg前後と軽い。これも運転の楽しさと安定性を高める要素になった。

1.5リッターエンジンでは6MTも用意

このようなヤリスの性格も踏まえて、1.5リッターのノーマルエンジン車には、CVT(無段変速AT)と併せて6速MT(マニュアルトランスミッション)も用意した。6速MTはマツダ 2やスズキ スイフトスポーツも採用するが、コンパクトカーで選べる車種は数少ない。しかもヤリスは、1.5リッターのX/G/Zの3グレードすべてにCVTと6速MTを設定した。

1.5リッターエンジンの動力性能は、最高出力が120馬力(6600回転)、最大トルクは14.8kg-m(4800~5200回転)。実用回転域の駆動力を相応に確保しながら、4500回転を超えた領域の吹き上がりも活発だ。6速MTは、シフトストローク(シフトレバーが前後左右に動く範囲)が適度に詰められて操作性も良い。吹き上がりの優れた1.5リッターエンジンと相まって、機敏な走りを楽しめる。パワーが適度だから、6速MTを駆使して、エンジン性能をフルに引き出して走れることも大切な楽しさだ。

加速が滑らかで、ノイズも小さいハイブリッド

一方、ハイブリッドはモーターの駆動力に余裕があり、アクセルペダルを軽く踏み増した時など、エンジンの駆動力を上手に補う。加速が滑らかで、アクセル開度は抑えられるため、ノーマルエンジンに比べると3気筒特有のノイズも小さい。

乗り心地は、時速40km以下では全般的に硬く、速度が高まると快適になる。装着されるタイヤによっても変わるので注意したい。最も硬いのは14インチ(175/70R14)だ。燃費を重視して転がり抵抗を抑え、指定空気圧も前輪が250kPa、後輪は240kPaに達する。乗り心地が少々粗く、路上のデコボコを直接的に伝えやすい。

15インチ(185/60R15)は、ヤリスの中では柔軟だ。指定空気圧も前輪が230kPa、後輪は220kPaで、14インチに比べて最適化されている。

16インチ(185/55R16)は、少し硬めに感じるが、引き締まり感が伴って粗さは抑えた。指定空気圧を220kPa・210kPaに下げたことも良い影響を与えている。

ファミリーユースができて走りも楽しめる、ヤリスのおすすめグレードは!?

クルマ好きのユーザーにとって最も楽しめる組み合わせは、1.5リッターエンジンを搭載するZの6速MT(187万1000円)を選び、オプションの16インチアルミホイール&タイヤ(オプション価格は8万2500円)、安全装備のブラインドスポットモニター+リヤクロストラフィックオートブレーキ(10万100円)、パノラミックビューモニター(3万3000円)を加えるものだ。

予算に応じてGの6速MT(170万1000円)も検討する。17万円の差額で省かれる装備は、3灯式フルLEDヘッドランプ(Gにも8万2500円でオプション設定)、運転席と助手席のシートヒーター、本革巻きステアリングホイール、エアコンのナノイー機能などだ。シート生地や内装の装飾も異なる。またGのメーカーオプションに、16インチアルミホイール&タイヤは用意されずZ専用になる。

Gに3灯式フルLEDヘッドランプを装着するなら、約9万円を上乗せして、Zを選んだ方が満足度は高い。ZとGの価格差は前述の17万円でも、プラスされる装備を価格に換算すると19万円に相当する。

このほかヤリスは衝突被害軽減ブレーキも進歩的で、右左折時に直進車や横断歩道上の歩行者を検知できる。全車速追従型ではないが、車間距離を自動制御可能なレーダークルーズコントロールを6速MTにも採用した。

大切な家族を同乗させ、なおかつ運転の楽しさも満喫したい。そのようなユーザーにとって、ヤリスの6速MTは、価格の割安感まで含めて推奨度の高い車種になっている。

[筆者:渡辺 陽一郎/撮影:和田 清志]

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