安倍政権の取組み継承を閣議決定も「重い宿題」

 菅義偉総理は菅内閣としての基本方針を16日、閣議決定した。冒頭に「安倍政権の取組みを継承し、更に前に進めていく」と安倍路線を前進させると強く打ち出した。

 また「めざす社会像」について「自助・共助・公助、そして絆」だとし「その認識の下、地方の活性化、人口減少、少子高齢化をはじめ山積する課題を克服していくことが日本の活力につながると確信している」とした。

 まず菅政権では「自らできることは自ら行い、できなければ家族、親戚、地域、それでもできない場合にはじめて政府のセーフティネットがある」との新自由主義的社会の姿が浮かび上がる。資本主義が生む歪を最後の最後に政府が最低限カバーするとの立ち位置が見える。

 菅総理は「行政の縦割り、前例主義を打破し、既得権益にとらわれずに規制改革を全力で進める」とし「国民のために働く内閣」を強調した。16日夜の記者会見でも規制改革・行政改革への意欲をにじませた。

 菅内閣として取組む大きな柱として5本を挙げ、筆頭に(1)新型コロナウイル対策。「爆発的感染を絶対に防ぎ、国民の命と健康を守る。検査体制を拡充し、必要な医療体制を確保。来年前半までに全国民分のワクチン確保を目指す」。

 また(2)に雇用を確保し暮らしを守るとし「観光、飲食など新型コロナウイルス感染症によってダメージを受けた方々を支援。デジタル化など新たな目標について集中的な改革、必要な投資を行い、力強い経済成長を実現する」。

 (3)活力ある地方をつくる、とし「外国人観光客の誘致、農産品の輸出促進等の取組みを更に進める。最低賃金の全国的な引上げを行い、観光や農業改革をはじめ、頑張る地方を全力で応援する」。

 このほか(4)社会保障に関しては「不妊治療への保険適用を実現し、保育サービスの拡充により待機児童問題を終わらせ、安心して子どもを生み育てられる環境をつくる。さらに、制度の不公平・非効率を是正する」とした。視点が少子化対応重点とも受け取れる。

 (5)外交・安全保障では「日米同盟を基軸に展開。国益を守り抜くため、自由で開かれたインド太平洋を戦略的に推進するとともに、中国をはじめとする近隣国との安定的な関係を構築する」とした。

 また「戦後外交の総決算を目指し、特に拉致問題の解決に向けた取組みに引き続き全力を傾ける」と拉致問題担当でもあったこれまでを踏まえた表現をし、記者会見では「不退転の決意で、自ら陣頭指揮にあたる」と語った。また「安全保障上の脅威、自然災害など、あらゆる緊急事態・危機に迅速かつ的確に対処する」とした。

 安倍内閣時代に自民党から提言された「敵地領域内での弾道ミサイルなどを阻止する能力(敵基地攻撃能力)」の保有や陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の代替への対応、地元の理解が進まない辺野古新基地建設問題など山積する難問にどう対応するのか、菅内閣が安倍内閣から引き継いだ宿題は重い。(編集担当:森高龍二)

菅義偉総理は菅内閣としての基本方針を16日、閣議決定した

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