肺がん細胞、生き延びる仕組み解明 金大・矢野教授ら

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 金大がん進展制御研究所/ナノ生命科学研究所の矢野聖二教授らの研究グループは17日、がん細胞の増殖に関わる分子を狙い撃つ「分子標的薬」にさらされた肺がん細胞が、特定のタンパク質を増やして生き延びるメカニズムを解明したと発表した。がん細胞をほぼ死滅させるのに有効な薬の使用法も突き止めており、今後、肺がんの根治につながると期待される。

 研究グループは、日本人に多い「EGFR遺伝子」に変異が生じる肺がんを調べた。分子標的薬「オシメルチニブ」を使うと腫瘍は小さくなるが、一部のがん細胞が生き残り、薬への耐性を持って再発することが問題となっている。

 グループは昨年、がん細胞が「AXL(アクセル)」というタンパク質を活性化させて生き残るケースを突き止めている。今回は、AXLの発現が少ないがん細胞を分析。AXLが少ないと分子標的薬が効きやすいが、「IGF—1R」と呼ばれる別のタンパク質を増やすことで生き延びることが分かった。

 昨年までの研究で、オシメルチニブとAXLを阻害する薬を併用すると、がん細胞はほぼ死滅することが分かっており、今回もオシメルチニブとIGF—1R阻害薬との併用により同様の結果を得ることができた。マウスを使った実験では、40日間の治療のうち初めの10日間で併用すると腫瘍が消失し、治療をやめてもほぼ再発しないことが判明したという。

 金大角間キャンパスで同研究所/新学術創成研究機構の鈴木健之教授と会見した矢野教授は、IGF—1Rの阻害薬は体内のインスリンの働きを抑制することから、長期の使用は困難と指摘。その上で「10日間という短期併用の治療法を提唱できたことは大きな成果だ」と述べた。

 今後、治療法の確立や副作用の少ない阻害薬の開発を目指す。研究成果は英国の科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」のオンライン版に掲載された。