ロッシ創設のVR46ライダーズアカデミーから世界で活躍するライダーたち/MotoGP第7戦レビュー(2)

 バレンティーノ・ロッシが主宰するVR46ライダーズアカデミー。このアカデミーはロッシが2014年に発足させたものだ。

 MotoGP第7戦サンマリノGPでは、MotoGPクラスでフランコ・モルビデリ(ペトロナス・ヤマハSRT)が初優勝を達成、フランセスコ・バニャイア(プラマック・レーシング)がMotoGPクラス初表彰台となる2位に入賞。Moto2クラスではルカ・マリーニ(SKY Racing Team VR46)が優勝、チームメイトのマルコ・ベゼッチも2位に入り、MotoGPクラス、Moto2クラス共にVR46アカデミー出身ライダーがワンツーフィニッシュを飾る活躍を見せた。

2020年MotoGP第7戦サンマリノGP Moto2クラス:SKY Racing Team VR46のルカ・マリーニ、マルコ・ベゼッチがワンツーフィニッシュ

 かつてイタリア人ライダーが小排気量クラス、中排気量クラスを席巻していた時代があったが、2000年過ぎから若手ライダー育成に力を入れていたスペイン人ライダーが勢力を増してきた。これに対して危機感を抱いたロッシは、イタリア人若手ライダーの育成を目指して、アカデミーを創設すると同時に、父親である元グランプリライダーのグラチアーノ・ロッシが故郷のタヴィッリアに購入した土地に、フラットトラックをメインとしたトレーニング施設のVR46モーターランチを作った。

 もちろん、モーターランチはロッシ自身がトレーニングを行なうためのコースでもあるが、若いライダーたちと一緒にトレーニングすることで、ロッシ自身のモチベーションアップにもつながっており、若手ライダーたちはロッシと一緒に走ることで世界チャンピオンのレースに対する取り組み方を間近に見ることができる。

「ボクらはライダーであると同時にアスリート。人間として成長できるようにアカデミーの生徒たちをサポートしたい。彼らと自分の経験を共有できるし、ボクたちが抱えている人生全般の問題、そしてボクらの情熱について話し合うこともできる。でも、ボクも助けられているんだ。彼らと一緒にトレーニングすることで、いつまでも若いままでいられるからね」とロッシはVR46ライダーズアカデミーについて語っていた。

 アカデミーは2014年に世界グランプリのMoto2とMoto3、Moto3ジュニア世界選手権、イタリア選手権に参戦する11名のライダーでスタート。モーターランチでのフラットトラックのトレーニングや、ミサノでのサーキットトレーニング、世界選手権では必須となる英会話の勉強など、幅広いカリキュラムでライダー育成を図っている。

■教え子たちの活躍に満足気なロッシ

 そして、2015年にはアカデミー出身のライダーを起用し、Moto3クラスにSKYレーシングチームVR46を結成して世界グランプリへの参戦を開始。2017年にはMoto2クラスにもチームの規模を拡大した。Moto2クラスでは2017年にモルビデリが、2018年にバニャーヤがチャンピオンを獲得。現在ではモルビデリ、バニャーヤも若手ライダーを指導する立場でアカデミーに関わっている。

 また、2015年からはヤマハとのコラボで、ヤマハVR46マスターキャンプを開催。アジアやヨーロッパでヤマハのサポートを受けてレースを戦う若手ライダーが短期間ながらVR46レーシングアカデミーと同じカリキュラムを受けることができ、受講したライダーの中から、CEVのMoto3ジュニア世界選手権、Moto2クラス、スーパースポーツ世界選手権、スーパースポーツ300世界選手権で活躍を収めるライダーが登場している。

 サンマリノGPではロッシも好スタートで、序盤からモルビデリに次いで2番手を走っていた。しかし、終盤に追い上げ来たバニャーヤにパスされ3番手に後退。最終ラップに3番手で入ったものの、10コーナーでジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)に交わされてしまい、僅差の4位でゴールとなった。残念ながら、ホームレースでのVR46ライダーによるMotoGPクラス表彰台独占は次の機会へと持ち越しとなった。

「とても残念。表彰台はいつも特別。ミサノだからなおさらだ。フランコ(モルビデリ)とペッコ(バニャーヤ)と共に表彰台に立つことができたら、まるでモーターランチのレースのようだっただろう」とレース後に語ったロッシ。

「フランコがトップに立ち、ペッコがボクを交わして2番手に上がったとき、アカデミーを立ち上げたのはだれだ、ボクにとってはいいアイディアじゃなかったんじゃないかって思ったよ」とジョークを飛ばしたロッシだったが、「アカデミーのライダーが活躍を収めたことは本当に誇らしい」と教え子たちの活躍にとても満足した様子だった。

2020年MotoGP第7戦サンマリノGP バレンティーノ・ロッシ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)
2020年MotoGP第7戦サンマリノGP決勝2位 フランセスコ・バニャイア(プラマック・レーシング)
フランコ・モルビデリ(ペトロナス・ヤマハSRT)

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