香川照之はなぜ仏語がペラペラなのか?中学から第二外国語を学ぶ利点

中学受験に関する数字を森上教育研究所の高橋真実さん(タカさん)と森上展安さん(モリさん)に解説いただく本連載。

グローバル教育として、英語だけでなく他の言語を学ぶ中学校もあります。そうした学校では中国語、フランス語、ドイツ語など様々なカリキュラムがあり、人生の早い段階から世界へ視野を広げるきっかけになります。

新型コロナウイルスの流行により、海外研修などが中止になる学校も多い中、グローバル教育としての外国語教育はどのように変わっていくのでしょうか。

今回の中学受験に関する数字…第二外国語


大妻多摩中高はオンラインで国際交流

<タカの目>(高橋真実)

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、私立中学・高校の海外への研修・修学旅行、留学が次々と中止となる中、オンラインで国際交流を行っている学校もあります。

大妻多摩中学高校では、毎年相互訪問を行っているオーストラリアの姉妹校Brigidine Colledgeの生徒たちとZoomを使って交流しました。多くの私立中学・高校にとってグローバル教育は柱の1つとなっていますので、今回のような状況の中で、どのように進めていくべきか、それぞれの学校が頭を悩ましているところです。

グローバル教育の柱となるのはなんといっても英語教育ですが、学校によっては第二外国語を学ぶ学校もあります。今回は中学での「第二外国語」の学習について取り上げます。

香川照之を輩出した暁星学園は仏語

ドラマや歌舞伎で活躍中の俳優・香川照之さんは、小中高を過ごした暁星学園でフランス語を学び、テレビのバラエティ番組でその語学力を披露する場面が時々見られます。暁星学園はフランスのマリア会によって創立されたミッションスクールで、伝統的にフランス語学習に取り組んでいます。

中学では第一外国語で英語、第二外国語でフランス語を学ぶコースと、第一外国語としてフランス語を学ぶコースがあり、フランス語検定4級(日常的なフランス語を理解)程度の力をつけることができます。高校でも第二外国語としてフランス語が選択可能で、カンヌへの研修旅行も行われています。

横浜女学院中は独、中、西語すべて学ぶ

グローバル教育を促進するとして、新たに第二外国語の学習をスタートさせる学校もあります。横浜女学院中学の国際教養クラスでは、1,2年では第二外国語としてスペイン語、中国語、ドイツ語をすべて学び、3年生でそのうちの1つを選択、さらに学ぶことができます。ここでは、言語のみならず、ワークショップなどを通してその国の文化を学ぶ取り組みもあり、グローバル人材としてマインドの醸成を目指しています。

多様化する私立中学・高校のグローバル教育。今年のオンラインでの交流などを通して、さらに変化していく可能性がありそうです。

グローバル教育を掲げる学校は厳しい状況

<モリの目>(森上展安)

「第一外国語」ではなく「第二外国語」に着目されたタカさん。モリの目では、テーマ周辺のトピックをを思いのまま書いてみます。

さて、コロナ禍で、さしものグローバル気運も気息奄々であるのはタカさんが指摘している通りです。海外に行けませんから、グローバルの5文字を冠して海外体験を中核に据えたプログラムはいずれも動けないので大弱り。率直に言って、今年からグローバルカリキュラムを立ち上げた学校もいくつかあって、入学時にはそもそもコロナ禍もここまでは、と考えられていなかったので立ち往生している、というのが実感です。

例えば、ある学校はまるまる2年の留学を組み込んだコースを募集しましたが、果たして実行年の中3、高1の年(今から数年後)にコロナ禍が終息しているのか、仮に終息していたとしても、ワクチンの開発の目途が立っていなければ留学そのものが成立するのかと心配になります。

タカさんが紹介している暁星のケースで「カンヌ研修旅行」に触れられていますように、語学を学べば使いたくなるのが人情ですし、使えば上達します。その好循環には現地体験が欠かせません。これにかわってコロナ禍でも活躍しているのが大妻多摩の例に出ているZoom活用ですね。あるいはスカイプ利用によるフィリピン・セブ島などとのネイティブとのオンライン対話です。

手前味噌になりますが、私が主催しているNPO学校支援協議会で、8月末、留学生と留学生OBを指導者とし、高校生の英語漬け研修を実施しました。協力した頂いた和敬塾は男子寮で、現役の東大、早大、上智大などの留学生がいます。彼らに加えて30代の海外から留学中の博士号をもった同塾OB関係者がプレゼンターやコーチとなり、「パンデミックの中で移民を受け入れは可能か」というホットはテーマの議論を試みました。

ハイレベルですが、現実の問題を、コーチのリードによって対話を重ねながら議論する試みです。1泊2日のプログラム終了後は、二十数人の参加者の顔に晴れやかな笑顔が浮かび、それなりの達成感があったものと思われます。参加した高校生は様々な中高一貫校の生徒たちで、5人1組のグループにファシリテーターがつき、何とかテーマを消化していたようでした。

彼らは、「海外研修が中止になったので参加した」という生徒ばかりでした。今、“海外体験”にかわる”感動体験”が求められているという切実なニーズがあります。

どんな学校で第二外国が学べるのか

実は、第二外国語も第一外国語と同じで、やはり”海外体験”が何といってもモノを言います。学校で第二外国語を用意しているところはカトリック校に多いのですが、武蔵のように「海外雄飛」を校是の一つとしているところも、昔から講座が設けられています。少し以下に拾ってみましょう。

青山学院(高)、穎明館(高1)、桜美林、大妻中野(高)、学習院(高)、学習院女子(高)、吉祥女子(高)、共立女子(高)、実践女子、芝工大、渋々(希望者)、城西大城西(高)、昭和女子大昭和(高2)、白百合、成蹊成城学園(高)、星美学園(高)、玉川学園(高)、中大附属(高3)、東京女学館(国際学級)、桐朋女子(高)。獨協(高)、雙葉(高)、文化学園杉並(高)、文教大付(高3)、武蔵、明中八王子(高3)、立教池袋(高)、和光(高)、早稲田、国本女子(総合)、藤村女子(高3)、カリタス、関東学院(高)、慶応普通部(中3)、慶応湘南藤沢(高3)、湘南白百合(高)、清泉(高2)、中大横浜、日本女子(高3)、青山学院横浜英和(高)、横浜雙葉(高)、函嶺白百合(高2)、暁星国際、渋幕、千葉国際(高2)、東京学館浦安(国際)、二松学舎柏(高)、麗澤(高3)、獨協埼玉(高)、立教新座(高)、自由の森学園(高)、学大国際中等、都立桜修館(高)、都立小石川(高)、都立立川国際(高)

第二外国語を学べるのは、カトリックや大学付属高校に多くみられることがわかると思います。掲載したのはカリキュラムに入れている学校で、成績もつきます。必ずしもフランス語、ドイツ語などに限らず、中国語などのこともあります。学校によってはいくつもの言語講座があるところもあります。

欧米の大学生は、卒業時に複数の外国語を習得していることも珍しくありません。我々は、中国人という語学に極めて堪能な隣人をもち、加えてアジアでも英語習得率さえ上位にない国に住んでいますから、子どもたちのモチベーションの点でハンディがあるのかもしれません。

一方で、日本語と同じ語順のコトバをもつフィンランドの英語教育(『フィンランド人はなぜ英語教育だけで英語が話せるか』米崎里著 亜紀書房刊)の成功は希望を抱かされますし、「ヒッポファミリークラブ」のように多言語を楽しく学ぶ民間の息の長い活動などにも励まされます。

外の世界への窓をあけるツールはインターネットが出現して激変しました。自動翻訳も進化しました。これらをいかに言語活動に結び付けるか、今は難しいステージだと思います。

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