パンデミック明けのヘルスチェック

個々の努力が実り、パンデミックも鎮静化して来たニューヨーク。「まだまだ予断は許さない!」と警戒する人も多いが、そろそろコロナ以外の健康にも目を向けよう。ニューヨーク近辺にオフィスを構える医師5人に、「今、どんな健康被害が心配か」を聞いた(取材・文/南あや)


自覚症状がないうちに、健診を!

服部宗雄先生〈安心メディカル〉

「運動不足で太っちゃって…」「最近、酒量が増えて…」と、うっすらながら心当たりがあるならば、病院に健康診断に行くべきだ。

体重増加にご用心!

「血圧、コレステロール数値、血糖値は、悪化しても自覚症状があまりないもの。高血圧や糖尿病といった成人病(生活習慣病)が、知らず知らずのうちに忍び寄っているかもしれません」と、服部宗雄先生は警鐘を鳴らす。

服部先生の医院では、食べ過ぎ・飲み過ぎによる胸焼けを訴えて来院する人が急増。体重がこの自宅待機期間で3〜5キロ増加した、という話も珍しくない。また、アルコールの過剰摂取では、肝臓へのダメージも心配だ。

「いつパンデミックが再来するか分からないといわれていますし、比較的感染状況が落ち着いたニューヨークは、今こそ、年1回の健康診断のチャンスではないでしょうか」

ストレスは万病の元

今は普通に暮らしているだけでもストレスに苦しむ難儀な時。感染への恐怖や、帰省できないジレンマ、仕事環境の変化など、その要因は枚挙にいとまがない。

服部先生は「ストレスは、ため込むのではなく、時折ハメを外して発散することが重要です」と、適度な飲食は否定しない。

「特に夫婦・家族は、四六時中顔を合わせるような生活となり、些細なことでストレスを感じたりもするでしょう。時々、相手への不満を出し、相手の話も聞くようにして、我慢しないことが重要です」

ただし、子供のいる家庭では、目の前でストレスを吐露するような行為は控えたい。子供も子供で、ストレスを抱えているものだ。

特に日本では「ストレスなんか病気じゃない」といわれがちだが、服部先生は「精神の均衡が免疫力アップにつながるんです」と力説。他にも規則正しい生活で毎日のルーティンを作り、脳が正しく体を動かすことを促すと、免疫力アップにつながるそう。

子供の外出には注意

現在、意外に相談が増えているのが、5〜7歳前後の子供のけがだという。

「室内にこもって運動不足だった子供は、筋力やバランス感覚が乏しくなりがちです。しかし、久々に外に出ると、力加減を知らない子供ははしゃいでしまい、全力で体を動かして、転ぶことが多いんです」

子供の外遊びでは、保護者が積極的に注意を傾ける必要がありそうだ。そして運動不足を避けるために、外を散歩するなどして「完全引きこもり」にならないようにしよう。

先行きはまだ不透明

また今秋は、インフルエンザの予防接種を受けるかどうかで明暗が分かれそう。

「新型コロナウイルスとインフルエンザは、症状が似通っている部分もあります。現在、当医院を含め、コロナウイルスの症状が疑われる場合は、来院に制限をかける医療機関が多いが、ビデオ問診でコロナかインフルエンザかを判断するのは難しい」

気軽に病院に行くことも難しく、何よりインフルエンザで免疫力が低下するのは避けたい。今年は例年より早く、子供用のワクチンが医療機関に入荷されているそうなので、忘れずに予防接種を受けよう。

全世界で開発が急がれている、新型コロナのワクチンは、通常なら臨床実験を含め3〜4年は掛かるといわれているそう。

「手探りで正しい答えが得られづらい現在ですが、自分でできることから取り組んでいきましょう」と服部先生。

Muneo Hattori M.D.

精神科医としてキャリアをスタートし、現在は総合診療医(Primari Care Doctor)。 在米歴は40年以上。 現在、人数制限を設けた院内診療と、ビデオ診療の2種類で対応中。

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